「裁判員いやだ」85% 最高裁の世論調査 制度は即刻廃止すべき

週刊『前進』06頁(2635号06面02)(2014/06/09)


「裁判員いやだ」85%
 最高裁の世論調査
 制度は即刻廃止すべき


 「現代の赤紙」=裁判員制度の施行から5年を迎えた。裁判員制度は「市民の司法参加」「裁判に市民感覚を取り入れる」などという大宣伝で始められたが、5年間の状況は何を示したか? 「3・11」と福島原発事故、福島切り捨て、首切り・賃下げ・非正規化、戦争・改憲など、「国の言いなりになっていたら殺されてしまう」時代となり、裁判員制度など、圧倒的な人民から嫌悪されている。「人を裁きたくない」「裁かれるべきは国家のほうではないか!」という声が強まっている。国家支配を強め人民を組み敷こうとした政府の狙いは大破産している。
 5月21日には東京・日比谷で「裁判員制度はいらない!大運動」の主催で市民集会が開かれ、230人が結集した(前号既報)。運動の正しさと勝利の展望を確信し、制度廃止へあらためて決意を固める集会となった。裁判員制度の破綻状況を見てみよう。

女性は「やりたくない」が91%

 まず、最高裁が今年1月下旬から2月上旬に全国20歳以上の2014人に面接して行った意識調査の結果である。「裁判員として刑事裁判に参加したいと思いますか」という問いに、44・6%が「義務であっても参加したくない」、40・6%が「あまり参加したくない」と答えている(上のグラフ参照)。合わせて85・2%の人が「参加したくない」と答えているのだ。女性(1039人)では、「参加したくない」が91・0%に達する。圧倒的に拒否されている。
 実は、制度実施の初年度から「やりたくない」と答えた人が8割を超えていたのに、政府・最高裁は彼らにとって都合の悪い調査結果を黙殺し、制度を強行・継続しているのである。「やりたくない」の割合は年々増加している。いったい、なんのための調査か。無作為に抽出した調査対象者の9割が「やりたくない」といっている裁判員制度など、即刻中止・廃止すべきだ。

全員辞任で裁判やり直しも

 今年3月まで5年間の「裁判員候補者」の総数は約58万人、うち5万人が裁判員や補充裁判員を強制され、6396人に判決を言い渡した。
 一方的に候補者名簿の中から選ばれても、実際に出頭する人の割合は年々減少している。新潟地裁の例では、昨年候補者名簿から選び出された1120人のうち718人が事前に辞退を認められ、「理由がない」として呼び出された402人のうち90人が欠席(出頭を拒否)した。出頭者は312人であった。それは最初の1120人の27・8%でしかない。
 裁判の期間は、公判前整理手続きが09年には平均2・8カ月だったのが今年は7・2カ月になっている。権力が狙う「簡易・迅速裁判」に対する弁護人や被告人の抵抗があるからだ。表のとおり審理日数は3・7日から9・3日へ、公判回数は3・3回から4・9回へ、評議時間は6時間37分から12時間23分へ2倍化するなど、裁判員の精神的・肉体的・経済的その他さまざまな負担が増えている。福島地裁では、強盗殺人事件の裁判員裁判で心的外傷を受けた女性の元裁判員が国の責任を追及して損害賠償請求訴訟を闘っている。
 また、求刑を超える判決を受けた被告の割合は、裁判員裁判では、裁判官による裁判の10倍に達する。とんでもない重刑化だ。
 今年1月、水戸地裁では放火事件の裁判員裁判で、裁判員6人と補充裁判員2人の計8人全員が辞任して裁判が成り立たなくなり、新たに裁判員を選び直して審理を初めからやり直す事態となった。やり直しなど言語道断だ。勾留期間の長期化など、被告人の不利益も計り知れない。水戸地裁だけではない。こういう危機的状況が、全国の裁判所に広がっている。

危機を深める日帝と推進派

 最高裁や日弁連、マスコミなどの推進勢力は完全にぐらぐらになっている。最高裁長官・寺田逸郎は5月の談話で〝おおむね順調、定着してきていると思うが、様々な課題も指摘され〟と動揺をあらわにし、マスコミは最高裁の意識調査の結果を受けて「制度が定着とは逆行しているように見える」(5・23付朝日新聞社説)と言わざるを得ない。
 「ように見える」だと! なぜ真実を見据えないのか! 彼らは、裁判員制度を中止・廃止すれば、推進の旗を振ってきた自分たちの責任が追及され、労働者人民の怒りが爆発し、支配の崩壊に直結することを恐れて、必死に制度を死守しようとしているのだ。
 「裁判員制度はいらない!大運動」を全国の職場・地域に広めよう。裁判員制度の反人民性とその破綻状況をどんどん暴露し、廃止を訴えよう。それは安倍政権の戦争・改憲、原発再稼働への人民の怒りと結合し、国鉄闘争―階級的労働運動を前進させ、必ず日帝を追い詰める力となる。裁判員制度を、今こそ絶対廃止に追い込もう。
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