崩壊するJR体制⑨ 東労組は結託体制維持を懇願 「スト戦術」空叫びで大破産し「基地再編実現」誓って総屈服 安全破壊の外注化の最先兵に

週刊『前進』06頁(2641号02面01)(2014/07/21)


崩壊するJR体制⑨
 東労組は結託体制維持を懇願
 「スト戦術」空叫びで大破産し「基地再編実現」誓って総屈服
 安全破壊の外注化の最先兵に

スト議論など一切ない大会

 JR東労組は、労資結託体制の破棄を突きつけるJR東日本に対し断末魔の抵抗を試みている。
 5月27日、東労組東京地本は臨時地本委員会を開催し、「京浜東北・根岸線、横浜線の乗務員基地再編成」に関する異動問題に対して、「ストライキ戦術の行使」を承認し、同時に東労組第30回定期大会に「ストライキ方針の決定」を要請することを決議した。また同日、東労組本部は申21号「正常な施策実施と異動準備のための面談中止を求める」緊急申し入れを会社に提出した。東労組は、労働者の権利や階級利害とは一切無縁な泥仕合にのめり込んだ。
 こうした中で6月8日、東労組第30回定期大会は開かれた。大会にはJR東日本の富田哲郎社長以下、常務取締役、人事部長、次長、課長など人事部門の責任者が来賓として列席しており、ストライキ論議など成立するはずもなかった。
 大会では、「京浜東北・根岸線乗務員基地再編成」問題に関する追加方針が本部から提起された。討議では東京地本臨時委員会で叫ばれたような「(カクマル排除を狙う)運転職場の血の入れ替え」「組織弱体化攻撃だ」などの文言は鳴りをひそめた。代わりに「施策の進め方、労使協議のあり方の変更が目指されている」「集団的労使関係から個別的労使関係に変更しようとするもの」などの意見が出され、労務政策転換に打ちひしがれる東労組の姿があらわになった。
 本部答弁では、「東京地本の『ストライキ方針の戦術行使について大会での討議を』という要請を受け、本部の向かい方の反省をふまえ、職場のたたかいを真正面から受け止めた議論を行った」「本部が会社と議論するべき事柄であるにもかかわらず、このような事態を招いたことを全組合員に謝罪する」と、これまでの対応を「自己批判」してみせた。
 これは組合員を欺くものだ。本部は乗務員基地再編成などの施策を承認していたから動かなかったまでだ。施策の完結までの全体スケジュールも承認していたのだ。

幹部の特権を奪われ大騒ぎ

 今回、東京地本を中心に「ストライキ戦術の行使」などと騒ぎ出したのは、異動に関する裏取引などが会社から完全に拒否されたからだ。すなわち、JR東日本と東労組カクマルとの結託体制が破棄され、基地再編成でカクマル活動家がバラバラに異動させられ、運転職場のカクマル支配が解体されようとする現実に驚愕(きょうがく)したのだ。これまで資本の先兵となって基地再編を率先推進してきた東労組が、今回に限って大騒ぎしたのは、カクマルの特権維持が目的だった。
 東京地本委員長の鳴海恭二は、「特定の経営幹部は、この施策の完結する2年間を通じて、JR東労組との労使関係を抜本的に見直し、組合員の分断と組織の弱体化をめざしている」と危機感をあらわにしていた。しかし一方では、「(経営側は)東労組は『どのような組合になってほしいのか』ということを明確に示して欲しい」と本音を漏らしている。
 定期大会では、「ストライキ方針の決定」などは一切論議されなかった。「ストライキ方針の戦術行使」などは初めからハッタリにもならない代物だったのだ。
 6月26日、JR東日本本社と東労組本部は経営協議会委員で申21号「正常な施策実施と異動準備のための面談中止を求める」に関する協議を行い、5項目からなる「施策実施に関する確認メモ」を締結した。
 「確認メモ」は「施策実施のあり方」に関して労資の主張をまとめた形になっているが、その内容は東労組の底なしの屈服を表明したものでしかない。

「確認メモ」でスト騒動謝罪

 「確認メモ」第1項の「会社は……解明交渉等の団体交渉を蔑(ないがし)ろにする意思はない」と、第2項の「安全を大前提とする考え方は変わるものではない」などは、これまでも団交の場で会社が表明してきたものと変わらない。新たな確認などではない。
 第4項では、乗務員基地再編について「労使が責任を持ってその実現に取り組んでいく」と確認した。それに続く「個別のスケジュールは、関係支社・地本間で議論を通じて見直していく」という文言は、東労組が頼み込んで入れたものと見られる。しかし、問題は個別スケジュールがどうこうではなく、乗務員基地再編自体にある。
 この基地再編成では、浦和電車区の廃止に伴い車両検修部門が分離され、「さいたま車両センター」に再編されることになっている。その狙いは検修部門の全面外注化だ。安全の全面崩壊に行き着く基地再編成を、東労組は「責任を持って実現する」と誓ったのだ。
 「確認メモ」の第3項で東労組は、「会社の発展を基礎とし、『労使共同宣言』を遵守(じゅんしゅ)する」とあらためて表明した。第一次から第四次までの労使共同宣言はすべて、ストライキ権の完全放棄と効率化(=外注化・合理化)推進を確認したものだ。東労組は今回の「ストライキ騒ぎ」を謝罪し、資本に恭順の意を示した。
 第5項は「(施策の)具体的な提起があれば『労使間の取扱いに関する協約』に則り取り扱う」と確認した。東労組は会社施策を従順に受け入れるという意味だ。
 「確認メモ」には資本を縛るものは何一つない。カクマルとの結託体制破棄に動く資本に対し、東労組は結託維持を懇願し、全面屈服をあらためて表明する以外に対応できないのだ。安倍政権が集団的自衛権行使に突き進む中で、こうした資本への屈服は戦争への全面協力に行き着く。
 JR東日本は、資本による全一的な支配を確立して、さらに徹底した外注化・非正規職化を強行しようとしている。これと真っ向から対決しているのが動労千葉・動労水戸―動労総連合だ。東労組と決別し、人生の選択をかけて動労総連合に結集し、ともに闘おう。
(矢剣 智)
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