環境省中間報告 「1㍉基準」さえ撤廃狙う 「個人線量計」で数値減少 汚染地帯への帰還促進を画策

週刊『前進』08頁(2646号04面01)(2014/09/01)


環境省中間報告 「1㍉基準」さえ撤廃狙う
 「個人線量計」で数値減少
 汚染地帯への帰還促進を画策


 福島第一原発事故と放射能汚染への怒りを圧殺するために、安倍政権は許すことのできない攻撃に踏み出している。「福島の復興を加速させる」と称して放射能汚染地帯への帰還の一層の推進を狙い、年間外部被曝線量の「1㍉シーベルト基準」さえなくそうとたくらんでいるのだ。加えて、それを実現する手段として、放射線計測をこれまでの空間線量から個人線量への変更を策している。絶対に容認できない。避難住民、福島の人びととともに断固粉砕しよう。

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「中間報告」のポイント
■復興を更に加速化するためには、自治体の施策(を)......これまで以上に促していく。
■0・23㍃シーベルト/hという数値が......除染の目標であるとの考え方が住民の間で広まっており、不安を生んでいる。
■地域住民や避難をしている住民等の不安及び風評被害の解消に努める。

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除染が破綻し「20㍉でも帰還できる」と強調

 「福島復興」と帰還強要を推し進めるために安倍政権―環境省・復興庁は8月1日、「除染・復興の加速化に向けた国と4市の取組 中間報告」を発表した。「4市」とは福島、郡山、相馬、伊達の各市だ。
 この「中間報告」はこれまでの次元を超える重大な攻撃である。3・11以降の経緯を振り返ってみると明らかになる。
 2011年3・11福島第一原発事故で福島県の全域が高濃度の放射能によって汚染された。少なくとも福島県の東半分以上の地域は人が住めないほど汚染され、避難・移住が必要になった。
 にもかかわらず、当時の民主党政権は、避難住民の帰還を目的として除染を進め、11年11月の閣議で、除染の目標を「追加被曝線量(自然放射線から受ける以外の被曝線量)が年間1㍉シーベルト以下」となることと決定した。この過程で同時に、「年間1㍉シーベルトは毎時0・23㍃シーベルトに当たる」とした。それは、〝住民が1日のうち屋外で8時間、屋内で16時間生活する〟〝屋内の被曝線量は屋外の0・4倍〟という想定の計算式から導き出した数値だ。
 しかし除染は不可能であり、財政的にも巨額の負担がのしかかる中で、民主党政権とそれを受け継いだ自民党安倍政権の除染政策は破綻した。
 この現実に追い詰められ、安倍政権は13年末以降「年間1㍉シーベルトは長期目標。20㍉シーベルトでも帰還できる」と強調し、4月には田村市都路地区への帰還方針を強行した。だが、帰還した人は7月時点で2割にとどまり、攻撃ははね返され続けている。この現状の打開のために打ち出したのが今回の「中間報告」である。
 中間報告発表の前段として今年6月に環境省と4市の意見交換会が行われた。その場で、伊達市が住民に個人線量計を着けてもらい調べた結果なるものを報告し、「年間1㍉シーベルトになるのは空間線量が毎時0・36〜0・51㍃シーベルトの地域だった」と強調した。相馬市も同様の結果だったとしている。これらは空間線量に代えて個人線量計での計測を提唱し、それをもって、個人線量計で「毎時0・23㍃シーベルト」を超えても年間1㍉シーベルトにはならないと強弁するのが狙いだ。
 この意見交換会は政府と4市が仕組んだ許しがたい芝居である。伊達市の仁志田昇司市長が現原子力規制委員会委員長の田中俊一を市の除染アドバイザーに招いた人物であり、また立谷秀清相馬市長が福島県立医大卒の経歴であることがそれを示している。

御用学者動員しデマゴギーまでも策動

 「放射線には〝これ以下なら安全〟という『しきい値』はなく、1発でも人体を傷つける」(『現代革命への挑戦 上』239㌻)。だから、どんなに少ない被曝であろうと避けなければならない。政府が基準としてきた「追加被曝線量1㍉シーベルト」はICRP(国際放射線防護委員会)の勧告を受け入れたものであり、危険なものだ。だが安倍政権はこれさえも踏み破り、さらに高い放射線量の地域に住民を帰還させようとしているのだ。
 政府がたくらんでいる個人線量計による計測では人が浴びる放射線を正確には測れない。個人線量計は首からさげるため背後からの放射線は感受しない。したがって空間線量の3分の1から7分の1の数値になってしまうのだ。しかも伊達市などの実験は、農作業の邪魔となるため個人線量計は家に置いたままなどというのが現実であり、生活実態とはかけ離れている。したがって、これらの条件が重ね合わされれば、年間10㍉シーベルトを超える線量を浴びても「1㍉シーベルト以下」の数値になるという恐るべき事態が生じるのだ。
 最後に、この中間報告の特徴は福島の人びとの不信と怒りの噴出におびえていることだ。そこで提唱しているのが「行政や専門家の知見を住民に伝える役割を果たす人材の確保・育成を強化」「地域住民や避難をしている住民等の不安及び風評被害の解消に努める」などである。御用学者らを動員してデマゴギーを展開し、怒りをそらす魂胆だ。

川内再稼働と福島での帰還強要は一体だ

 しかし安倍政権の思惑どおりには進まない。地元の新聞社である福島民報のアンケートによれば、除染計画に基づき作業を進めている汚染状況重点調査地域指定の36市町村のうち7割の24市町村が「0・23㍃シーベルト」を計画の達成目標としており、全市町村が方針を維持すると回答した。「1㍉シーベルト基準」さえなくそうと狙う安倍への、福島の労働者人民の底知れぬ不信と怒りがこの結果として表現されているのだ。
 帰還強要―福島圧殺は、川内(せんだい)原発を突破口に原発再稼働を進めるための攻撃だ。川内原発再稼働のために行っている「避難計画」作成やヨウ素剤配布はけっして住民を守るものではない。再稼働のためには住民を放射能汚染地帯に置き去りにしてもよいというのが安倍と原子力規制委員会の本心だ。福島での汚染地帯への帰還強要とまったく同じだ。
 帰還強要も川内原発再稼働も断じて許すことができない。絶対に阻止しよう。9月23日に代々木公園で行われる「さようなら原発全国集会&大行進」に集まろう。

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川内原発再稼働するな! フクシマを忘れない!
9・23さようなら原発全国集会&大行進
 9月23日(火) 代々木公園
 (JR山手線原宿駅、東京メトロ明治神宮前駅)
 午後0時30分 オープニングライブ
 午後1時 トークライブ(集会後デモ)
 主催さようなら原発1000万人アクションなど

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