JR体制 破産と崩壊② 北海道赤字線の全面廃止狙う 経営陣の刷新後も事故は増加 手のつけようがない安全崩壊 分割・民営化体制今こそ倒そう

週刊『前進』06頁(2650号02面03)(2014/09/29)


JR体制 破産と崩壊②
 北海道赤字線の全面廃止狙う
 経営陣の刷新後も事故は増加 手のつけようがない安全崩壊
 分割・民営化体制今こそ倒そう


 4月1日、JR北海道の経営陣が刷新され、JR東日本の人間が大量に送り込まれた。しかし、事態は改善するどころか次々と事故が起きている。JR北海道の安全崩壊と破綻的な経営状態は、もはや手のつけようがない。
 さらに5月11日、JR北海道は江差線の木古内―江差間を廃線にした。どうしようもない破綻の中、ローカル線の全面的な廃線にかじを切ったということだ。

全体の87%が採算割れ路線

 JR北海道の路線の87%は採算が取れない状態だ。採算ラインは輸送密度(1日1㌔当たりの平均利用者数)8千人だと言われている。しかし、北海道の実に72%の路線が、国鉄時代の「廃線対象」の基準である輸送密度4千人にも達していない。他方、輸送密度1万人以上の路線は5区間だけで、距離でいっても全体のわずか7%だ。
 JR北海道全体の昨年度の輸送密度は4725人。JR東海の約7万3千人、JR東日本の約4万6千人と比較しても圧倒的に少ない。
 しかし、この結果は当然のことだ。北海道は札幌など一部都市を除けば、広大な面積に比して人口が圧倒的に少ない。しかも、総務省が発表した2014年の人口動態調査によれば、北海道の人口減少数は2万9303人で、全国で最も多い。採算の取りようがないのだ。
 それだけではない。北海道は雪に覆われる期間が長く、線路の保守・点検などにより多くの費用がかかる。今年度の事業計画で、JR北海道は安全投資約279億円、修繕費260億円と、いずれも過去最大額を計上した。本来、広大な土地に広がる路線の一つひとつをきちんと保守・点検しようとすれば、コストがかかって当然なのだ。
 一方で今年度は過去最大の378億円の赤字が見込まれている。これを受けて政府は、安全投資の見直しを求めている。その中でJR北海道は、ローカル線の全面的な廃線に突き進もうとしている。JR北海道だけで鉄道事業の採算を取ろうとするなら、他に道はないのだ。
 しかし、利用者がいかに少なくても、利用している人びとにとって鉄道は生活上なくてはならないものだ。そもそも鉄道は「公共交通」だ。採算以前に、住んでいる人びとの暮らしを支え、安全に運行することこそ、その役割だ。だからこそ「国有鉄道」として膨大な資金を投入して線路が整備されてきたのだ。

地方と生活を根本から壊す

 国鉄を分割して民営化すれば、北海道、四国、九州などで経営が立ち行かなくなるのは、当初からわかりきっていたことだった。国鉄時代から、首都圏などの黒字でローカル線の赤字を埋める構造だったのだ。
 現在、JR東海はJR最大の「ドル箱」である東海道新幹線を保有している。そのJR東海が計画しているリニア鉄道は、東京―名古屋間の工事費だけで5兆5千億円が必要とされている。しかも、造っても採算が取れないことを、JR東海自身も認めている。
 これほどのカネが出せるなら、岩泉線の復旧(JR東日本は土砂崩れで不通となった岩泉線の復旧を、約130億円の費用がかかることと利用者が少ないことを理由に拒否した)もローカル線の維持も可能なはずだ。
 しかし、分割・民営化のもとで、北海道、四国、九州のJRは、分割されたエリアの中で「民間会社」として利益を上げて生き残らなければならなくなった。
 鉄道事業で利益を出せないJR北海道は、資金を「駅ナカ事業」などに集中して収益をひねり出そうとした。他方で鉄道の安全を守るための費用は徹底的に削られた。「現場には修理に必要な人も物も来ない」状態が長年にわたって続いた。そして、その矛盾は全業務に及ぶ外注化によって下請け・孫請け会社に押しつけられた。
 だが、下請け・孫請け会社にはJR北海道以上に人も物もない。安全は切り捨てられ、技術も失われた。その結果、底が抜けたような安全崩壊に行き着いたのだ。どんなに経営陣を刷新しようとこの破綻的な状態から抜け出すことはできない。
 そして、ついにJR北海道は、もうかる路線だけを懐に収めて、地方の全面的な切り捨てに乗り出そうとしているのだ。

分割・民営化の枠組み崩れる

 JR東日本、JR東海、JR西日本の3社を除けば、民営化さえまともにできていないのがJR体制の実態だ。JR北海道、JR四国、JR九州の3社の経営は、いまだに経営安定基金に頼っている。JR貨物の経営破綻も歴然としている。
 加えてJR3社は、経営安定基金を独自に運用することを迫られている。現在は政府が決めた利率に従って鉄道運輸機構がJR各社に「基金の運用益」という名目で実質的な補助金を出している。だが、経営安定基金を独自運用するようになれば、大恐慌下で収益どころか大欠損を生み出すことは避けられない。
 そうなれば民営化の枠組み自体が崩壊する。JR体制そのものが崩れ落ちようとしているのだ。

国鉄決戦勝利、11・2大結集を

 安全崩壊という形で突き出されたJR体制の崩壊は、北海道に限った話ではない。JR西日本では2005年に尼崎事故で107人の命が一瞬にして奪われた。JR東日本では今年2月、京浜東北線の川崎駅構内で脱線転覆事故が起きた。それ以前から、線路破断や脱線が次々発生していた。
 この事態は、全社会が崩壊しつつある現実の象徴でもある。すべての発端は国鉄分割・民営化だった。だから全社会の破綻が国鉄において象徴的に現れているのだ。
 今こそ国鉄決戦に勝利しよう。今秋、全国各地で開かれる国鉄集会を成功させ、11・2労働者集会へ全力で闘いぬこう。11・2集会までに「解雇撤回・JR復帰」の10万筆署名を集めきり、国鉄分割・民営化に決着をつけよう。
(伊勢清和)
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