福島第一原発事故吉田調書の核心 〝イメージは東日本壊滅〟 全原子炉爆発の危機を告白

週刊『前進』08頁(2651号06面03)(2014/10/06)


福島第一原発事故吉田調書の核心
 〝イメージは東日本壊滅〟
 全原子炉爆発の危機を告白


 日帝・安倍政権が9月11日に一部公開を余儀なくされた福島第一原子力発電所事故についての政府事故調査委員会のヒアリング記録、とりわけ吉田昌郎福島第一原発元所長の膨大な調書(吉田調書)をめぐりさまざまな論議がなされている。
 吉田調書からわれわれが読み取らなければならないことは何か?

完全に制御不能に陥った2号機

 ここで明らかになったことは、福島原発事故により東日本全域が壊滅寸前だったという衝撃的な事実である。
 福島第一原発は地震と津波で全電源喪失(SBO)に陥った。さらに冷却用の海水汲み上げ用のポンプもすべて水没し、短期の非常用を除いて原子炉を冷却する手段をすべて失った。その結果、稼働中だった三つの原発が同時にメルトダウン(炉心溶融)するという人類史上初めての大原子力災害を引き起こした。特に2号機をめぐっては3月14日夜から15日未明にかけて打つ手が一切なくなり、このままいけば格納容器が爆発して、放射性物質が東日本全域にばらまかれ、人が住めなくなる寸前にまでなっていた。そのことを吉田元所長自身、「死を覚悟した」として次のように語っている。
 「完全に燃料露出しているにもかかわらず、減圧もできない、水も入らないという状態が来ましたので、私は本当にここだけは一番思い出したくないところです。......ここで本当に死んだと思ったんです
 「これで2号機はこのまま水が入らないでメルトして、完全に格納容器の圧力をぶち破って燃料が全部出ていってしまう。そうすると、その分の放射能が全部外にまき散らされる最悪の事故ですから。チェルノブイリ級ではなくて、チャイナシンドロームではないですけれども、ああいう状況になってしまう。そうすると、1号、3号の注水も停止しないといけない。これも遅かれ早かれこんな状態になる。そうなると、結局、ここから退避しないといけない」
 「今のセシウムどころの話ではないわけですよ。放射性物質が全部出て、まきちらしてしまうわけですから、我々のイメージは東日本壊滅ですよ」
 まさに福島第一原発の六つの原子炉すべてが制御不能になり、次々と爆発する寸前だった。そうなると12㌔しか離れていない福島第二原発も放棄するしかなくなる。吉田元所長の言う「東日本壊滅」がリアルに突きつけられる局面だったのだ。
 この2号機爆発の危機は15日早朝、2号機の格納容器下部が一部破損して圧力が抜けたことによりかろうじて回避された。だが、その結果2号機から大量の放射性物質が大気中にまき散らされた。現在福島を苦しめている大量の放射性物質はまさにこの15日の放出によるものなのだ。
 地震大国・火山大国の日本で原子力発電所など問題にもならない。原発と人類は相いれない。全原発の廃炉しかない。このことを吉田調書はリアリティをもって語っている。原発再稼働など問題にもならないのだ。

調書を使った大反革命許すな

 このように吉田調書に真正面から向き合えば向き合うほど、福島第一原発事故のすさまじさが鮮明となり、全原発廃炉の結論しか出てこない。にもかかわらず、追い詰められた日帝・安倍政権とその先兵となった反動マスコミによる吉田調書を使った大キャンペーンがなされている。
 これは3・11を契機としてまき起こっている福島を先頭にした日本の労働者階級人民の全原発廃炉・日帝打倒の闘いに対する日帝・安倍政権の原発再稼働に向けたあせりに駆られた一大反革命攻撃である。
 だが、このようなデマキャンペーンで福島の現実を塗り隠そうとしても無駄だ。いまだ13万人以上が避難を余儀なくされ、小児甲状腺がんが疑いも含めて104人にものぼる、その事実を消し去ることなどできない。
 吉田調書で明らかになった福島原発事故の真実に肉薄し、3・11の怒りの原点に立ち返ろう。全原発廃炉・川内原発再稼働阻止を掲げ11・2全国労働者集会の大結集へ総決起しよう。
(城之崎進)

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