JR体制 破産と崩壊③ 経営構想Ⅴは2年でボロボロ あらゆる鉄道業務を外注化し駅ナカビジネスに投資を集中 動労千葉スト突破口に反撃へ

週刊『前進』06頁(2652号02面03)(2014/10/13)


JR体制 破産と崩壊③
 経営構想Ⅴは2年でボロボロ
 あらゆる鉄道業務を外注化し駅ナカビジネスに投資を集中
 動労千葉スト突破口に反撃へ


 2012年10月30日、JR東日本は国鉄分割・民営化以来5度目となる中期経営構想「グループ経営構想Ⅴ〜限りなき前進」を発表した。「2011年3・11」を「国鉄改革に次ぐ『第二の出発点』」と位置づけるこの計画は、鉄道事業をこれまでのレベルを超えて外注化し、雇用を破壊するとともに、駅改修工事などに異常なまでの巨大な設備投資を行う一方、地方は切り捨て、鉄道の海外輸出に全面的に打って出るというものだ。安倍と葛西(JR東海名誉会長)が一体となって進める攻撃の先頭にJR東日本は立とうとしている。
 発表からわずか2年。「経営構想Ⅴ」は完全に破綻している。世界大恐慌の深化と動労千葉を先頭とした労働者の闘いがJR東日本全体を大きく揺さぶっているのだ。

行き詰まった新幹線の輸出

 「経営構想Ⅴ」の柱にある新幹線の海外輸出は完全に破産している。
 今年9月、日印首脳会談が行われ、安倍はトップセールスでインドでの「新幹線システムの導入」を働き掛けたが、成功の保証は何もない。
 日本が狙う新幹線輸出は、車両だけでなく信号方式から運転管理まで含めたシステム丸ごとの「パッケージ輸出」だ。だからこそ安全性よりもコストが重視される。日本の新幹線の建設事業費は「1㌔メートル当たり70億円」と言われるが、フランスや中国では1㌔メートル当たり20億円と日本の半分以下だ。
 激しい国際争闘戦に勝ちぬくためには、徹底した外注化によりコストを削減する以外にない。しかしそれは、JR北海道での相次ぐ事故や川崎駅構内での脱線転覆事故に見られるように、安全をとめどなく崩壊させる。

非正規職化と地方切り捨て

 「経営構想Ⅴ」の今一つの柱は、駅改修工事などへの巨額の設備投資や電子マネー事業の拡大などだ。
 JR東日本では、駅スペースの活用やショッピングオフィスなどの運輸以外の事業での売上高が他社を圧倒的にしのいでいる。「経営構想Ⅴ」は「駅をひとつの街ととらえる」として、東京駅、新宿駅、渋谷駅、横浜駅、千葉駅などの大都市部で巨額の設備投資を行い、駅の上や隣接するビルでの大規模商業施設の展開や保育所の開設などを行おうとしている。「人口減時代」の中で死活をかけて大都市部での駅ナカビジネスにのめり込もうとしているのだ。
 これは駅業務の全面外注化と表裏一体だ。東京では改札などの駅業務とショッピングセンターなどの「生活サービス」部門を一括して外注会社に委託することが狙われている。レストランで働く外注会社の社員をJRに出向させて駅業務を覚えさせ、覚えたら駅そのものを丸投げ外注化しようというのだ。
 さらに、駅の外注化は膨大な非正規職を生み出してきた。JR東日本は、首都圏4支社を統括する駅事業会社「JR東日本ステーションサービス」を2013年4月に立ち上げ、そこに改札などで5年間働かせた契約社員をより低賃金で雇っている。契約社員として5年間でクビにされ、外注会社に「再雇用」された青年労働者の手取りは当初は12〜13万円程度で、契約社員当時よりも4〜5万円も低い。まさに「経営構想Ⅴ」は安倍の雇用破壊のモデルとなっている。
 しかし、駅の外注化も青年労働者の怒りで破綻に追い込まれている。JRのあまりの扱いのひどさに、「JRでは二度と働きたくない」と、5年で雇い止めにあっても「再雇用」を拒否する青年が続出している。JRでも「すき家」のような青年の反乱が起こり、必要な要員が集まらず、駅の外注化が思うように進まなくなっているのだ。
 加えて、大都市部に設備投資を集中し、地方を切り捨て、地域経済を破壊するJRに対し、これまでにない地域丸ごとの怒りと決起が生み出されている。

安全の解体を許さず11・2へ

 「経営構想Ⅴ」の最大の破綻点は安全の全面崩壊にある。
 「経営構想Ⅴ」は「変わらぬ使命」として「究極の安全」をうたっている。しかし、車両や設備の故障、災害などにより列車の運休や30分以上の遅延を生じさせた、いわゆる「輸送障害」は年々増加している。JR東日本の場合、12年度は1498件、うち車両や設備など会社の原因による輸送障害は423件で過去5年間で最も多い。
 最大の問題は、今後5年で国鉄時代に採用されたベテラン労働者が大量退職することだ。JR東日本は「急速に行われる世代交代を前に、この5年間が技術継承の最後のチャンス」と危機感をあらわにする一方で、「増収に向けて今後の3年間で修繕費や業務委託費、動力費などのコストダウンを進める」と言う。この間の事故の多発が示す通り、大量退職をも逆手にとった外注化・非正規職化は、安全を最後的に崩壊させる以外にない。
 外注化が強行された職場は矛盾だらけで「いつ大事故が起きてもおかしくない」というのが現場の実感だ。「職場で殺されてたまるか」――これが平成採の怒りだ。「経営構想Ⅴ」との闘いは、JRのみならず全労働者に雇用破壊と安全崩壊を強いる安倍・葛西を打ち倒す闘いだ。労働組合に全人民の怒りを結集させて闘おう。JR体制を打倒する時は今だ。
 「経営構想Ⅴ」発表直前の2012年10月1日、JR東日本が検修業務外注化を強行したことに対し、動労千葉は職場での徹底した抗議闘争と波状的なストライキで立ち向かい、JR本体と下請け会社の組合員、労働者が一体となった外注化阻止・組織拡大の新たな闘いに打って出た。動労千葉を先頭とした動労総連合の闘いが「経営構想Ⅴ」を破綻に追い込んでいるのだ。動労総連合を全国につくりだすことこそ、「経営構想Ⅴ」を打ち砕く実践的方針だ。
 その緒戦を切り開くものとして11・2労働者集会に従来を画するJRの労働者、平成採の怒りを集め、1万人結集を実現しよう。
(鷹村大介)
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