解雇撤回裁判始まる 埼玉の新採教員 条件付採用を弾劾

週刊『前進』06頁(2654号03面02)(2014/10/27)


解雇撤回裁判始まる
 埼玉の新採教員
 条件付採用を弾劾

(写真 埼玉を始め首都圏の教育労働者も結集し「解雇撤回をめざす会」を結成【9月20日 さいたま市】)


 10月17日、さいたま地裁民事第5部(針塚遵裁判長)で、新規採用教員に対する分限免職処分の撤回を求める裁判が始まった。埼玉の中学校の13年度の新採女性教員Sさんは、退職強要を拒否して今年3月末に免職処分を受け(本紙2631号参照)、その撤回を求めて8月1日に提訴した。原告Sさんと弁護団、ともに闘う仲間は心を一つにして裁判に臨んだ。
 意見陳述に立ったSさんは終始裁判官を見すえ、教員になった動機、勤務し始めてからの職場の様子、2学期以降の研修の実態と過酷な体験などを明快に語った。
 そして、条件付採用制度を怒りを込めて弾劾した。「管理職や指導教員の個人的な判断で新任教員を選別し、排除する『条件付採用の厳格な運用』をうたう初任者研修制度は、『教員を育てる』という本来の目的から逸脱しています。この制度そのものの違法性が問われるべきです」
 続けて次のように思いを語った。「この裁判に向けて準備を進める過程で、私と同じようなパワハラ的指導と退職強要で自主退職に追い込まれた新採教員が大勢いる実態を知りました。私の裁判は私一人の問題ではなく、多くの仲間たちの思いを代表する場でもあります。これから採用される教員たちにも私と同じような思いは絶対にしてほしくありません」
 最後に「免職処分撤回の判決を求めます」とまとめると、傍聴席からは大きな拍手が送られた。
 被告の埼玉県教育委員会の代理人弁護士は裁判前日に答弁書を送りつけ、裁判は欠席。県教委は傍聴席に職員を送り込んでメモを取らせるという不誠実な対応に出た。

「解雇撤回をめざす会」結成

 裁判開始に先立つ9月20日には「新採教員不当解雇撤回をめざす会」がさいたま市内で結成された。埼玉を始め首都圏の教育労働者、ともに闘う仲間50人が結集した。
 結成集会では、Sさんと同じ13年度に埼玉で新規採用された教員の仲間から、県内のほかの学校でもまったく同じ経過で自主退職に追い込まれた事例がいくつも報告された。集会後の懇親会でも同じように許しがたい事態に直面した首都圏の複数の教員が発言した。自主退職の強要を最後まで突っぱねて、不当な免職処分と闘うSさんに熱い声援が送られた。
 「条件付採用制度の厳格な運用」と称して意図的・計画的に新採教員を退職に追い込むことが、解雇の原因であることがはっきりした。また業績評価で分限免職にすると規定した4月の地方公務員法改悪の先取りであることも明らかになった。

戦争と民営化打ち破る闘い

 「条件付採用」を理由に「首切り自由」が横行する学校現場はブラック企業と同じだ。Sさんの解雇撤回の闘いは、労働組合を屈服、衰退させて全労働者を失業、不安定雇用に追い込む安倍政権の労働法制改悪との闘いでもある。仲間の解雇への怒りを一つにして闘う団結をつくり出したとき、労働組合がよみがえる! これが安倍政権の戦争攻撃を打ち破り、戦争教育を許さない現場労働者の根源的な力を解き放つ。「解雇撤回・条件付採用制度絶対反対」の闘いはそういう闘いだ。
 安倍政権は、教職員をすべて非正規職にし、いつでも解雇できる「公設民営学校の解禁」の関連法案を臨時国会に出そうとしている。動労千葉のように民営化・外注化に絶対反対で闘おう。命を奪う戦争と民営化に反対する全世界の労働者と連帯し、11・2労働者集会で「戦争と民営化の安倍政権を倒せ!」の1万人の声をとどろかせよう。
 次回裁判は12月12日(金)午前10時10分、さいたま地裁105号法廷で行われる。
(教育労働者・米山良江)

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分限免職処分 公務員に対する解雇処分。
条件付採用制度 公務員を採用後、「適格性を見極め」免職できるとする制度。期間は地方公務員が6カ月、教育公務員は88年に1年に延長。
初任者研修制度 国公立学校の全教員が採用後1年間、指導教員や教育委員会などの指導を受ける制度。1986年に中曽根政権の臨時教育審議会第2次答申として出され、 88年に制度化。

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