JR体制 破産と崩壊 ⑤ リニア建設強行するJR東海 安全を無視し採算もとれない無謀きわまる事業は必ず失敗 墓穴掘る葛西と安倍の打倒を

週刊『前進』06頁(2657号03面04)(2014/11/17)


JR体制 破産と崩壊 ⑤
 リニア建設強行するJR東海
 安全を無視し採算もとれない無謀きわまる事業は必ず失敗
 墓穴掘る葛西と安倍の打倒を


 国土交通省は10月17日、リニア中央新幹線工事実施計画を認可した。JR東海は名誉会長・葛西敬之の号令一下、来春にもリニア新幹線を本格着工しようとしている。

事故が起きても止まれない

 JR東海が建設をもくろむ超電導リニアは、垂直方向に働く磁力で車体を地上から約10㌢メートル浮上させ、水平方向に働く磁力の吸引力と反発力を利用して超高速で車体を動かすというものだ。鉄道が歴史に登場して以来、それは鉄のレールの上で鉄の車輪を回転させて車体を動かすシステムだった。鉄道を安全に運行する技術は、それを前提につくられてきた。だが、百数十年にわたり蓄積されてきた技術は、リニアではまったく生かされない。リニアの安全性はなんら確証されてはいない。
 その点でリニアは原発とまったく同じだ。品川―名古屋間のリニア新幹線の営業運転に必要な電力は原発1基分と言われるが、その建設を強行する葛西は原発再稼働の最強硬論者だ。
 そもそもリニアには運転士がいない。動くことも止まることも地上からの遠隔操作による。超高速走行中に事故が起きても、車内でブレーキをかけることはできない。しかも、リニア新幹線のほとんどは地下深いトンネルを通る。列車が停止できたとしても、乗員・乗客がトンネルから脱出するのはきわめて困難だ。
 また、リニアの車内に設置される超電導磁石が発する強力な磁場(じば)の、人体に対する悪影響は計り知れない。

大断層横切りトンネル掘削

 リニア新幹線のルートは南アルプスをトンネルで横断する。だが、南アルプスの両側には中央構造線と糸魚川―静岡構造線という日本最大の断層が走っている。南アルプスは100年で40㌢メートルも隆起していると言われる。リニアの走行中に断層がずれて地震が起きれば大惨事は避けられない。そもそも、もろくて複雑な地盤を25㌔メートルにわたってぶち抜くトンネル工事自体が、重大な労働災害を引き起こしかねない。
 トンネル工事を強行すれば地下水が流出して、大井川の流量は毎秒2㌧も減少する。大井川流域で暮らす人びとは飲料水さえ奪われる。現にリニアの実験線敷設工事により、山梨県笛吹市では水源地の水が枯渇する事態が起きている。
 トンネル掘削により発生する残土は東京ドーム46杯分にもなるが、その処理方法も決まっていない。JR東海は残土を地すべりの起きやすい山間部の谷間に投棄することさえ企てている。
 これほど大規模なトンネル工事は、騒音・振動・工事車両の通行などで住民の生活を脅かす。人家や学校の立ち退きを迫られる地域もある。また、南アルプスは野生生物の宝庫だ。リニアは貴重な自然に取り返しのつかない破壊をもたらす。
 しかし葛西は、そんなことにはお構いなしに、2027年品川―名古屋間開業という予定だけを優先させて、しゃにむに着工に突き進んでいる。
 リニアの建設はJR東海を文字どおりの破産にたたき込む。それは東海だけでなくJR体制そのものの崩壊に直結する。
 JR東海は品川―名古屋間の建設費用を5・5兆円、品川―大阪間の建設費用を9兆円と見積もるが、それに収まる保証はない。しかもJR東海は、その費用を社債の発行でまかなうという。
 国鉄分割・民営化以来、本州JR3社は、新幹線買い取り料という形で国鉄から引き継いだ債務の大きさを口実に、合理化・外注化・非正規職化を強行してきた。リニア新幹線の建設で、JR東海は国鉄から受け継いだ債務をさらに上回る借金を自ら背負い込むことになる。
 リニア開業後の収益見積もりもでたらめだ。リニアの乗客は東海道新幹線から移行するだけだ。JR東海のドル箱である東海道新幹線の収益はその分、悪化する。ところがJR東海は、品川―大阪間が開業すればリニア新幹線と東海道新幹線をあわせた乗客の輸送量は13年度の東海道新幹線の輸送量の約38%増にもなると見込んでいる。
 葛西が強行した国鉄分割・民営化以来の新自由主義攻撃は、社会が成立しないほどの人口減少を招いた。その現実をおよそ無視したJR東海の収益予測は、現時点ですでに破綻している。
 そのツケは労働者と地域住民に押し付けられる。今でもJR東海のローカル線の扱いはきわめてぞんざいだ。09年に台風の被害を受けて不通となった三重県の名松線の一部について、JR東海はその復旧をいまだ意図的に怠っている。リニアは地方を一層の衰退に追い込むのだ。

超電導リニアは軍事技術だ

 アベノミクスが破綻する中で、日本帝国主義はリニアにすがり官民一体でその海外売り込みに躍起になっている。4月12日には安倍と葛西が付き添ってアメリカのケネディ駐日大使を山梨県のリニア実験線に試乗させた。鉄道海外輸出の行き詰まりを打開する切り札にリニアを使おうとしているのだ。だが、営業実績のないリニアなど、海外に売れるわけがない。
 アメリカがリニアに一定の関心を寄せるのは、交通手段としてではなく軍事技術としてだ。超電導リニアの技術は、空母から航空機を発進させる「カタパルト」と言われる装置に転用できる。
 JR東海が高速鉄道をアメリカに売り込むために提携関係を結んでいるUSジャパン・ハイスピードレール社の社長は元米国防次官補のリチャード・ローレス、USジャパン・マグレブ社の社長は元米国家安全保障会議日韓部長のトーケル・パターソンだ。これら軍事ロビイストとJR東海とのつながりは、リニア新幹線建設の認可が集団的自衛権行使の7・1閣議決定の産物としてあったことを示して余りある。
 リニア建設に手を染めたJR東海を震源地にJR体制は倒壊する。動労総連合を全国に組織し、労働者階級が自らの力でリニアとともに葛西と安倍を打倒する時が来た。
(長沢典久)

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