帰還と被曝の強制に怒り 福島県民の闘い広がる 分断図る安倍と東電を許すな

週刊『前進』06頁(2658号04面01)(2014/11/24)


帰還と被曝の強制に怒り
 福島県民の闘い広がる
 分断図る安倍と東電を許すな


 3・11から3年半余り、安倍政権による大々的な「復興」キャンペーンのもと、福島県民にさらなる被曝を強いる高濃度放射能汚染地域への「帰還」が推進されている。その狙いは、フクシマの怒りが一つになって燃え上がることを恐れるがゆえの徹底した分断だ。分断を打ち破り、団結して、安倍政権・東京電力の責任を追及し、川内(せんだい)原発再稼働を絶対に阻もう。

帰還困難区域14㌔を含め国道6号全線を規制解除

 9月15日、福島県沿岸部を通る国道6号で一般車両の通行規制が解除され、帰還困難区域の14・1㌔メートルを含めた全線が開通した。以後2カ月、福島第一原発から西側2・5㌔メートルを通る道路を一般車両がフリーパスで行き交っている。交通量は1日約1万200台におよぶ。
 環境省の発表でさえ解除区間の空間放射線量は平均で毎時3・8㍃シーベルト、高いところは17・3㍃シーベルト。国が「除染の長期目標」とする毎時0・23㍃シーベルトと比べても実に75倍を超える。車内の放射線量でも毎時9㍃シーベルトを超える恐るべき数値が計測されている。
 開通にあたって「自動二輪、原動機付自転車、軽車両および歩行者は通行禁止」「規制解除区間での駐停車の禁止」「脇道への進入禁止」「窓を閉めての走行」「エアコンは内気循環にする」などが条件とされ、原子力災害現地対策本部は「不要不急の通行は避け、通行時は車を閉め切ってほしい」と呼びかけた。この地域の放射能汚染が人体に有害なことは安倍政権も十分認識しているのだ。
 開通後に6号を使っている車両のナンバーは全国各地におよび、北関東と福島県、宮城県の車両移動は東北自動車道から6号へシフトし始めている。第一原発が吐き出す放射能汚染物質を県内はもとより宮城県や茨城県を始め日本全域へ直接拡散させているのだ。

原発20㌔圏内の川内村東側で「避難指示」が解除

 またJR東日本は6号の開通を受けて、南相馬―いわき間のバス代行運転の検討に入った。常磐線は今も竜田駅(楢葉町)―原ノ町駅(南相馬市)間、46㌔が不通になっているが、両駅間には広大な帰還困難区域がある。バス代行運転は、働く労働者にも乗客にも多大な被曝を強いる。JRは竜田駅延伸に続いて帰還と被曝強制のお先棒を担ごうとしているのだ。
 10月1日午前0時、福島第一原発から20㌔圏内、避難指示解除準備区域だった川内(かわうち)村の東側で避難指示が解除された。対象は139世帯275人。避難区域があった県内11市町村のうち、避難指示が解除されたのは4月1日の田村市都路(みやこじ)地区に続き2カ所目だ。
 解除決定を後押ししたのは村が設けた有識者会議「川内村への帰還に向けた検証委員会」だ。同会議は8月に「除染の効果はあり、日常生活に必須のインフラなどが整った。避難指示解除準備区域の解除は妥当」という中間答申を出した。検証委の委員長は山下俊一に師事する長崎大学教授・高村昇、副委員長は電力会社出資の財団法人「電力中央研究所」の井上正・名誉研究アドバイザー。検証委は7月にスタートし、中間答申まで2回しか会合を開いていない。初めから結論ありきのやらせ会議だ。
 解除後、139世帯のうち帰還したのはわずか20%。区域内には20歳以下の25人が住民登録しているが、未成年を連れて戻った家はない。5人の小学生は家族で村外に避難したままだ。
 村民はかつては沿岸地域で買い物したり、医療サービスを受けたり、学校に通ったりしていたが、これらの地域は放射線量が高く居住が制限されている。また85%が森林の川内村では、除染で不安がなくなると考えている住民はほぼいない。
 避難指示が解除されると、1年後に東電からの精神的賠償(1人月10万円)が打ち切られる。「帰りたくても帰れない」現実の中で誰もが悩み苦しんでいるのに、自宅がどの地区にあるかで賠償が受けられるか否か決まるのだ。住民にさらに分断を持ち込む政府と東電は本当に許せない。

フクシマの怒りと結んで川内原発再稼働とめよう

 3・11から3年半が過ぎ、被災者の怒りはさらに大きく広がっている。
 11月14日、飯舘村の村民が東電を相手に慰謝料などの支払いを求めて裁判外紛争解決手続き(ADR)を申し立てた。参加したのは全村民の約半数の2837人。住民主導の集団申し立てとしては過去最大規模だ。
 申立団の長谷川健一団長(酪農家、飯舘村前田地区区長)は、「原発の恩恵と無縁だった村に放射能が来た。事故から3年たっても進展しない。このままでは、国や東電につぶされる。今こそ村民自身が声を上げないといけない」と訴えた。
 ほかにも福島市大波地区と伊達市霊山町の計409世帯、1241人が損害賠償を求めてADRを申し立てたり、大熊町の双葉病院に入院していた男性患者の家族が「避難で死亡した」として損害賠償を求めて東電を提訴するなど、原発事故と被曝や避難をめぐり国と東電の責任を徹底追及する闘いが起きている。
 南相馬市では特定避難勧奨地点の解除を住民の反対運動で押し返した。特定避難勧奨地点は、国の避難指示区域外で年間積算放射線量が20㍉シーベルトを超える恐れのある世帯を指定したもので、月額1人10万円の精神的賠償も支払われてきた。伊達市や川内村の計129世帯は12年末に指定を解除されたが、南相馬市の152世帯だけは解除されていない。
 国は10月末で解除する方針を決めたが、住民は「農地や森林の除染は手つかず。指定基準より高いホットスポットが多く残る」「事故前の線量に下がるまでは子どもを連れて戻れない」と反対。1210筆の署名を提出するなどして、国に先送りを決めさせた。
 帰還と被曝の強制、福島県民の分断策のすべては、3・11をなかったことにして再稼働へ突き進むためのものだ。福島県民、とりわけ避難者を分断するあらゆる動きと対決して闘いぬこう。ふくしま共同診療所を支え、避難・保養・医療の運動をさらに発展させよう。川内原発再稼働を絶対に阻もう。
(里中亜樹)
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