JR体制 破産と崩壊⑩ 「自治体消滅」を促進するJR ローカル線切り捨て特急廃止 社会崩壊させる攻撃の先兵に 「人口減」の元凶は分割・民営化

週刊『前進』06頁(2662号03面04)(2014/12/22)


JR体制 破産と崩壊⑩
 「自治体消滅」を促進するJR
 ローカル線切り捨て特急廃止 社会崩壊させる攻撃の先兵に
 「人口減」の元凶は分割・民営化


 「2040年、地方消滅。『極点社会』が到来する」(増田寛也元岩手県知事ら人口減少問題研究会)と題した提言が2013年12月、『中央公論』に発表された。14年5月8日には「ストップ少子化・地方元気戦略」(日本創成会議・人口減少問題検討分科会、増田寛也座長)が出された。
 将来、896の自治体が消滅するとしたこれらのレポートは、社会に衝撃を与えた。この「自治体消滅」情勢を促進しているのがJRだ。JR体制が危機と崩壊に陥る中で、JR資本は地方を切り捨てることによって生き延びようとしている。

アベノミクスと一体の攻撃

 「増田レポート」は人口減少問題の実態を表す資料として「消滅可能性自治体」のリストを掲げた。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口(2013年3月推計)」をもとに、2040年時点の「20〜39歳女性」人口を市町村別に推計した一覧表だ。30年後に「20〜39歳女性」が半減すると推計される896市町村が「消滅可能性がある」とされ、そのうち2040年の推計人口が1万人未満の523市区町村を「消滅する可能性が高い」と断定している。
 14年5月13日には経済財政諮問会議専門調査会の「選択する未来」委員会が中間整理「未来への選択―人口急減・超高齢社会を超えて、日本発成長・発展モデルを構築」を発表した。増田も委員として加わっており、内容は「増田レポート」と近似している。その中身は、6月24日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2014」(骨太方針)にも盛り込まれた。
 「増田レポート」の内容は、次の2点に要約できる。
 ①日本では激しい少子化が進んでいる。特に人口集中が進む大都市に著しい。その現象を変えるためには「結婚し、子どもを生み、育てることができる社会」をつくることが必要である。
 ②出生率の低い東京圏など大都市圏に若者が集中する傾向がある。それは人口減に拍車をかける。だから、地方の「地域拠点都市」に投資と施策を集中し、東京圏への人口流入に歯止めをかける。ただし、それでも地方の人口減少は避けられないから、「選択と集中」の考え方のもと、公共施設や医療施設、商業施設を地域の中心部に集中する「コンパクトシティ」を形成する。
 その核心は、「地方再生」「選択と集中」と称する全面的な地方の切り捨て、自治体・教育・医療などを中心とした社会丸ごとの民営化にある。
 「増田レポート」自身、「人口減少を克服する道は、今まさに安倍政権が官民あげて取り組んでいる政策と同一線上にある」と言っている。安倍政権はこれをバックボーンに、労働者への全面攻撃をかけている。その司令塔が「まち・ひと・しごと創成本部」だ。

経営構想Ⅴで地方は崩壊へ

 「増田レポート」には、なぜ「人口減社会」になったのかは、まったく書かれていない。
 1987年の国鉄分割・民営化を出発点に、民営化・外注化と非正規職化は極限まで進行した。労働組合が破壊され、労働者は超低賃金を強いられて、格差と貧困が広がった。大恐慌による大失業と新自由主義攻撃による社会の丸ごと民営化の中で、社会・地域・家庭は崩壊した。これが「人口減」の根本原因であることは明白だ。
 しかし安倍は、破綻したアベノミクスをなおも強行し、格差と貧困をさらに拡大して、社会を崩壊させようとしている。
 この攻撃は国鉄分割・民営化と一体だ。地方の全面的切り捨てとそれによる地方の崩壊は、JR体制の危機と崩壊に直結している。その象徴がJR北海道の現実だ。JR北海道は事故の多発によって完全に崩壊した。国鉄分割・民営化そのものの破綻である。
 そこからの生き残りをかけて、JR北海道は赤字線区の全面廃線化をもくろんでいる。これは北海道だけのことではない。JRは、新幹線と都市圏輸送、都市間輸送だけを残して、赤字ローカル線の全面的な切り捨てに乗り出している。JR東日本千葉支社は、来年3月のダイヤ改定で、外房線、内房線、総武本線の特急電車をほぼ全廃しようとしている。
 JR東日本は12年10月に打ち出した「グループ経営構想Ⅴ」で「地域に生きる」を掲げたが、その内実は地方を壊滅させることだったのだ。
 これらは国土交通省の政策として推進されている。同省は今年7月、「国土のグランドデザイン2050」を公表した。それは、地方ではコンパクトシティ化で人口を中心的地方都市に集中させる大再編を行うとともに、リニア新幹線で東京、名古屋、大阪の大都市圏を結びつけて、国際競争に勝ち抜ける巨大都市圏を形成するというものだ。これも徹底した地方切り捨ての計画だ。
 その最先頭に立っているのがJR東海名誉会長の葛西敬之だ。

全施設民営化を狙う杉並区

 こうしたJRの攻撃は、社会丸ごと民営化に拍車をかけている。例えば東京・杉並区では児童館42カ所の全廃攻撃が始まっている。杉並区当局は、そこで働く正規職250人、非正規職250人の労働者の首を切ろうとしている。さらに、これを突破口に「杉並区立施設再編整備計画」=「道路・橋梁(きょうりょう)を除く596の区立施設のすべてを対象にした民営化計画」に踏み込んで、児童館、保育園、ゆうゆう館、公営住宅、集会施設、科学館、清掃事務所、水道局、図書館、消防署、小中学校、保健所、区役所、老人ホームなどすべてを民営化・外注化しようとしているのだ。
 こうした攻撃を打ち砕く闘いの軸として、JRによるローカル線切り捨て反対の闘いを巻き起こそう。国鉄解雇撤回の10万筆署名を達成し、1047名解雇撤回の最高裁勝利判決をかちとろう。JRの全面的外注化を阻止し、動労総連合を全国につくりだそう。
(佐原義亮)

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