JR体制 破産と崩壊⑪ 地方を切り捨てるダイヤ改定 「東京圏鉄道再編」に本格着手 外注化と労働運動破壊が狙い 大合理化との激突が始まった

週刊『前進』06頁(2664号02面05)(2015/01/12)


JR体制 破産と崩壊⑪
 地方を切り捨てるダイヤ改定
 「東京圏鉄道再編」に本格着手 外注化と労働運動破壊が狙い
 大合理化との激突が始まった


 JR各社は昨年12月19日、3月14日実施のダイヤ改定を公表した。ダイヤ改定は常に合理化攻撃の一環だが、とりわけ今回のダイ改は大量退職時代を迎えてJRがたくらむ大合理化・全面外注化の突破口をなすものだ。大量退職をてこに国鉄労働運動の全面解体をもくろむJRとの大決戦は、3月ダイ改との対決として開始される。

第三セクターに赤字線移管

 今回のダイ改に貫かれているのは、全面外注化と徹底した地方の切り捨てだ。国鉄分割・民営化以来の新自由主義は地方をとことん衰退させた。JRは、これをさらに加速させようとしている。
 3月の北陸新幹線開業自体が、地方切り捨てそのものだ。新幹線開業に伴い、並行する北陸本線・信越本線の一部は第三セクター化されてJRから切り離される。
 さらに、JR東日本千葉支社管内では、特急が廃止・大幅削減される。
 ダイ改の発表後の12月26日、JR東日本は東日本大震災の津波で被災し、不通となっているJR山田線の宮古―釜石間を第三セクターの三陸鉄道に移管することで岩手県など沿線自治体と合意した。もともと三陸鉄道は、国鉄分割・民営化を前に赤字ローカル線として廃止が決定された国鉄の久慈線と宮古線、盛線を引き継いで発足したものだ。東日本大震災後、JR東日本は山田線の復旧を拒否し、バスでの仮復旧しかしないという方針を打ち出して、地元自治体と対立していた。そして今回、地元自治体に30億円の協力金を払うことと引き換えに、赤字線を第三セクターに押し付けたのだ。
 昨年4月にもJR東日本は、土砂災害で不通になっていた岩泉線の廃止を正式決定している。
 JR東日本が12年10月に打ち出した「グループ経営構想Ⅴ」は、「2011年3月11日を『第二の出発点』と位置づけ」るとし、「地域に生きる、世界に伸びる」をキーワードに掲げた。その意味するものは、大震災に便乗して被災地の赤字線をとことん切り捨てることだったのだ。

東北縦貫線が再編の突破口

 他方でJR東日本は、昨年6月に強行した常磐線の竜田への延伸に続き、竜田―原ノ町間で代行バス運転を始めることをたくらんでいる。福島第一原発の直近にバスを通して乗員・乗客に被曝を強い、原発事故による被害などなかったことにして、住民に帰還を強制する攻撃だ。
 地方の徹底的な切り捨ての一方で、JR東日本は東京圏での鉄道大再編に手を着けようとしている。それは、安倍が福島原発事故を開き直って招致した2020年東京オリンピックと一体だ。
 東京圏の鉄道再編の突破口に位置するのが、3月の東北縦貫線(上野東京ライン)の開業だ。これにより宇都宮線、高崎線と東海道本線の列車の一部が相互に乗り入れることになり、常磐線の列車の一部も東京または品川発着になる。
 相互直通運転で乗務員の乗務距離は増やされ、労働は強化される。また並行する京浜東北線は減便となる。
 これに伴う乗務員基地再編を、JRは労働運動破壊に徹底的に使いきろうとしている。その対象には国鉄分割・民営化に率先協力したJR総連カクマルも含まれる。この間の東労組カクマルの「スト権行使」の空騒ぎと、会社に恫喝されてのその収束は、東北縦貫線の開業を背景に起きていた。JRは東北縦貫線開業を機に、国鉄時代の残滓(ざんし)を一掃しようとしているのだ。
 また常磐線の特急は、指定席と自由席の区別をなくして全席を座席指定可能とするとともに、座れる乗客からも座れない乗客からも同一の料金を徴収するシステムになる。これは、車掌の業務を簡略化することで、やがては車掌も外注化することが狙いだ。

経営構想Ⅴの破産を居直り

 これらの計画のベースになっているのが、JR東日本が昨年10月28日に打ち出した「グループ経営構想Ⅴ『今後の重点取組み事項』の進捗(しんちょく)及び更新について」と題する文書だ。
 12年10月に「グループ経営構想Ⅴ」を策定したJR東日本は、13年10月に「グループ経営構想Ⅴ『今後の重点取組み事項』について」で施策の重点を具体化したが、昨年10月の文書では、経営構想Ⅴの破産を居直って、一層の外注化強行を押し出している。
 そこでJRは、「東京圏鉄道ネットワークの拡充」を掲げ、経営資源の東京集中を打ち出した。東北縦貫線の開業を手始めに、「品川駅などターミナル駅におけるブランド確立による魅力・利便性向上」や「羽田空港アクセス線構想の具体化」に着手するというのだ。
 これは、JR東海が強行するリニア新幹線の建設をにらんで品川・田町地区の再開発に乗り出そうという計画だ。田町地区は、東京オリンピックをめどに建設されようとしている羽田空港アクセス線の分岐点としても位置づけられている。東北縦貫線も、関東から羽田空港に向かうルートの一環として造られた。
 こうした構想は、東京都知事・舛添要一が推進し、昨年5月に安倍政権が認可した東京圏国家戦略特区と一体だ。
 これらの計画の根幹にあるのは、業務の全面的な外注化だ。昨年10月の文書でJRは、「業務執行体制や仕事の進め方の見直しによる、グループ会社と一体となった受委託業務の効率性・生産性の向上」を露骨に叫んでいる。
 具体策としても、「駅遠隔操作システム導入」による駅の無人化・外注化や、「無線式列車制御システムの導入」による設備保守費用の削減などが並んでいる。「無線式列車制御システム」とは、線路をいくつかの閉塞(へいそく)区間に区切り、ひとつの閉塞区間にはひとつの列車しか入れないようにして事故を防いできた従来のシステムを根本的に変更するものだ。これはさらなる安全の破壊をもたらす。
 その手始めに強行される3月ダイ改と対決し阻止しよう。
(長沢典久)
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