労基法改悪絶対阻止を 残業代ゼロ・過労死許さない

週刊『前進』06頁(2666号03面02)(2015/01/26)


労基法改悪絶対阻止を
 残業代ゼロ・過労死許さない


 安倍政権は労働基準法改悪案、いわゆる「残業代ゼロ法案」を1月26日からの通常国会に提出し労働時間規制の撤廃に踏み込もうとしている。
 1月16日、厚生労働省は労働政策審議会の労働条件分科会に労基法改悪案の骨子を示した。その内容は、残業代ゼロ制度の導入を始めとして、裁量労働制やフレックスタイム制についての規制緩和に及んでいる。
 安倍はこの改悪案を突破口に、労働時間規制の全面的な撤廃に突き進もうとしている。

対象は無限に拡大していく

 労基法改悪案のポイントは、36協定も結ばず割増賃金も払うこともなしに、労働者に時間外労働を強制できる制度を導入することにある。改悪案の骨子は、これを「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル労働制)」と称している。
 対象となる労働者は、①金融商品の開発、金融商品のディーリング、アナリスト、コンサルタント、研究開発の業務などに携わり、かつ②年収1075万円以上の者、とされている。しかし、重大なのは、③対象となる労働者の具体的な条件は省令で定める、とされていることだ。
 金融業界などごく一部のエリート社員だけが対象となるかのように見えるが、いったん制度が導入されれば、省令の改悪で対象となる労働者はいくらでも拡大できる。
 改悪案骨子には、裁量労働制の対象となる労働者の範囲の拡大も盛り込まれた。裁量労働制とは、何時間働いても一定の時間しか働かなかったとみなす制度だ。現在その対象となるのは「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」や研究職、企業内弁護士らの専門業務に限られているが、それを営業職の一部にも拡大する。
 改悪案骨子はまた、有給休暇の取得日数が少ないことを口実に、使用者が有給休暇日を指定する制度を導入するという。資本が勝手に有給休暇日を決めることが許されれば、労働者は自分の都合や生活設計に合わせて有給休暇をとることができなくなる。
 これら全面的な改悪に対する労働者の怒りを恐れて、改悪案骨子は「働きすぎ防止」「長時間労働防止」をペテン的に掲げている。だがその内容は、「『1カ月に100時間』または『2カ月間ないし6カ月にわたって、1カ月当たり80時間』を超える時間外・休日労働が発生するおそれのある場合、適切な健康確保措置を講じる」というだけだ。
 これは、厚労省が過労死を認定するときの基準だ。しかも、「健康確保措置」の具体的中身は何ひとつ規定されていない。つまり「過労死ライン」を超えて労働者を働かせても、資本は何の対策も責任もとらなくていいということだ。
 まさに〝死ぬまで働け〟というのが、この労基法改悪案の本質だ。

連合の裏切りで規制が解体

 そもそも安倍は、第1次安倍内閣の時の07年に、残業代ゼロ法案を押し通そうとして労働者の怒りに阻まれた経緯がある。それは第1次安倍内閣が崩壊するひとつの要因になった。
 それをまた押し出してきた安倍は、労働者階級に対して絶滅戦争を仕掛けてきたのだ。実際、こんな改悪案のもとで無制限に働かされたら、労働者は生きていくこともできなくなる。
 アベノミクスの「第3の矢」に「成長戦略」を掲げた安倍は、「世界でもっとも企業が活動しやすい国をつくる」と叫ぶ。安倍のいう「岩盤規制」とは、労働者が命と生活、権利と尊厳を守るために闘いとってきた資本に対する規制の一切をさす。労働時間規制はその中軸にあるものだ。労基法改悪で、安倍はその総体をぶち壊そうとしているのだ。
 許しがたいことに8時間労働制は、もはや建前だけのものにされてしまっているといっても過言ではない。こんな現実をつくり出したのは体制内労組幹部の裏切りだ。「過労死ライン」をも超える残業を許す36協定が当たり前のように結ばれている現実はいったい何なのか! 連合は口先では今回の労基法改悪案に反対を唱えるが、36協定を破棄して職場で資本と闘う気などさらさらない。

革命はらんだ攻防のテーマ

 労働時間をめぐる攻防は革命に直結する問題だ。資本主義の成立以来、労働者は自分と仲間の命を守るため、無制限な労働時間の延長に歯止めをかける闘いを挑み続けてきた。労働組合も、そうした闘いの中から労働者階級が自らの力で歴史的に生み出してきた団結体だ。資本が8時間労働制を標準労働時間として認めざるを得なかったのも、ロシア革命の衝撃を受けてのことだ。
 だから、労働時間規制を撤廃しようとする安倍の攻撃は、労働組合絶滅の攻撃と一体だ。それは世界が現に戦争に突入する中で、さらに激しいものになっている。
 だが、この攻防に勝ちぬいてこそ、最末期帝国主義の絶望的延命策としての新自由主義を打ち砕くことができる。
 安倍は労基法改悪案とともに労働者派遣法改悪案を今通常国会で押し通そうとしている。1~3月国鉄決戦と15春闘過程は、これらの改悪案を打ち砕く決戦と重なった。戦後労働法制の解体は国鉄分割・民営化とともに始まった。国鉄分割・民営化との闘いは、労基法改悪、派遣法改悪を阻止する闘いでもある。
 2・15国鉄集会を打ちぬき、3月JRダイヤ改定・全面外注化との闘いに立とう。その力で、戦争に突き進む安倍を打倒しよう。

------------------------------------------------------------
労働時間規制撤廃を狙う労基法の改悪案(骨子)
①対象業務は、金融商品の開発・ディーリング、アナリスト、コンサルタント、研究開発
②年収1075万円以上
③対象者の具体的条件は省令で定める

このエントリーをはてなブックマークに追加