社会保障解体許すな〈年金〉 マクロスライドを初適用非正規職増大で年金破綻

週刊『前進』06頁(2669号03面05)(2015/02/16)


社会保障解体許すな〈年金〉
 マクロスライドを初適用非正規職増大で年金破綻

支給額切り下げ

 1月30日、厚生労働省は15年度から年金支給額を実質切り下げていくことを発表した。04年の小泉政権下で導入したものの今まで凍結してきたマクロ経済スライドをついに発動するというのだ。
 その仕組みは、物価が上がってもそれより低い率でしか支給額を上げない、物価が下がればそれ以上に引き下げるもの。物価変動に合わせて上下する物価スライドとはまったく別物だ。それを43年度まで続け、支給額は今より3割も目減りさせるという。
 15年度の国民年金支給額(基礎年金)は、最大40年間積み立てても月6万5008円。受給資格が得られるぎりぎりの25年間で月4万630円だ。支給額に反映されない支払い免除期間があればもっと少ない。消費税増税で物価が上がり生活を圧迫している。マクロ経済スライドの発動は〝飢えてよし〟とするものだ。
 攻撃の矛先は受給者に対してだけではない。国民年金保険料の強制徴収が拡大されようとしている。13年度は年間所得400万円以上で未払い期間13カ月以上の13万人に督促状が送られ、預貯金などの差し押さえが8カ月で4617件にもなった。厚労省は、15年度は未払い期間7カ月以上で督促するという。対象者は20万人にふくれる。さらに18年度には年間所得300万円以上に対象者を拡大しようとしている。取り立てと差し押さえに動員されるのは年金機構の労働者だ。この分断を許してはならない。

95年日経連報告

 15年度の国民年金保険料は月額1万5590円。免除制度はあるが、単身者だと全額免除は前年所得が57万円まで、半額免除でも118万円までだ。社会保険の適用から排除され、低賃金で雇用が不安定な非正規労働者に払えるわけがない。13年度は国民年金加入者1800万人の約4割が保険料を払えていない。
 90年代前半は未払いが15%前後だった。4割にもなったのは非正規職化が進められたからだ。
 95年に経団連(当時は日経連)は、労働者の9割を非正規職にすることを打ち出した。97年には製造業の賃金水準を欧米や韓国と比較して「日本全体の高コスト構造の是正」を叫び立てた。トヨタの人事部長は「10年間で年金・健康保険の負担は2・5倍に拡大した。総額人件費の13%を占める」と敵意をむき出しにした。総額人件費とは賃金や年金などの福利厚生費を含めた雇用にかかわる費用のことだ。
 資本家たちは原則労使折半の社会保険料から逃れるために、労働組合を屈服させて正規職を非正規職に置き換えてきた。年金を破綻させたのは資本家とその手先となった労組幹部だ。

国家との対決を

 厚労省は昨年5月からホームページに年金を解説するマンガを公開している。その結論は「年金というパイ(分け前のこと)を増やすために日本経済を成長させろ」、そのために「結婚して子どもを産め」というものだ。怒りと弾劾の声に対して、専門家が「年金が破綻することはあり得ない。それは国家が破綻した場合だ。そうなったら暴動や内乱になる」と予防線を張っている。
 「恐慌の中の恐慌」に突入し、全世界で労働者人民が生きるために政権―国家と対決し闘っている。誰よりもこれにおびえ国家存立の危機にあるのが安倍政権だ。だから、「年金を守る」というぺてんで「世代間格差」をあおり、労働者階級の団結を破壊し、戦争と改憲に向かって突き進んでいるのだ。日本共産党の「安定した年金制度の確立」は「国を守る」運動でしかない。
 経団連は1月20日に発表した経労委報告で、あらためて「総額人件費―福利厚生費を削れ」と叫んでいる。連合も同じ立場だ。動労千葉を先頭に労組のもとに団結し、ストライキを構えて、大幅賃上げ獲得へ15春闘を闘おう。
(今井一実)
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