3・11反原発福島行動'15へ 呼びかけ人の訴え(下) 大結集の数が福島圧殺を打ち破る 小児がん激増の責任問い原発再稼働を絶対阻もう ふくしま共同診療所院長 布施幸彦さん

週刊『前進』06頁(2671号05面01)(2015/03/02)


3・11反原発福島行動'15へ 呼びかけ人の訴え(下)
 大結集の数が福島圧殺を打ち破る
 小児がん激増の責任問い原発再稼働を絶対阻もう
 ふくしま共同診療所院長 布施幸彦さん



ふくしま共同診療所
◎福島市太田町20-7佐周ビル1階
 (JR福島駅西口より徒歩5分)
◎診療科目 内科/放射線科/循環器科/リウマチ科
◎ウェブサイト「ふくしま共同診療所」で検索

甲状腺検査を2年継続

 12年12月にふくしま共同診療所を開院して2年余りたちました。私は昨年11月に院長に就任し、週5日、診療所で診察をしています。
 診療所で甲状腺エコー検査を定期的に受けているのは小さいお子さんが多いですね。年齢が低いほど放射能の影響を受けやすいので、親御さんは余計心配しています。
 とりわけ心配しているのは、県の県民健康調査の1巡目の甲状腺検査でA1かA2判定だったのに、昨年4月に始まった2巡目の検査でBと判定された人たち。県から「2次検査を受けるように」という郵便物が届くけれど、説明はない。そういう人が、ちゃんと説明を聞きたくて来ます。
 診療所で定期的に検査を受けている人は、被曝への危機意識が強い。県内産は食べない人、定期的に保養に行っている人もいます。「安全・安心キャンペーン」の中で4年間も続けているのはすごいことです。
 だけど友達やクラスのお母さんたちとは、そういう話ができない。タブーとされている。
 診療所は「避難、保養、医療」という原則を掲げ、保養活動のチラシを持って帰ってもらったりしています。保養先で子どもたちは放射能を気にせず遊び、免疫力も増強される。お母さんたちも保養先でようやく話すことができる。お母さんたちのリフレッシュのためにも大切です。

仮設健康相談に横やり

 診療所では2年間、浪江町民が住む福島市内の仮設住宅を訪問して健康相談を行ってきました。
 今でも仮設住宅は県内に1万数千軒あります。相談に来るのはお年寄りが多く、多いところは20人くらい来ます。自治会長さんも含めてみなさん、とても協力的です。
 昨年6月ころからは事前に1軒ずつ戸別訪問して、直接声をかけてチラシを渡すようにしました。動労水戸がJR常磐線の延伸に反対する取り組みで、いわき市にある楢葉町民の仮設住宅を戸別訪問して呼びかけたという話を聞いて、「私たちもやってみよう」と。人の顔が見えるし、健康相談の参加者も増えました。相談に来ない人でも、直接会って話をすることで、孤独死を防ぐ力にもなっていければと思っています。
 1月末にも仮設で健康相談を行い、2月に入って次の予定を決めるために連絡したところ、町の担当者に「とりやめにしたい」と言われました。きっかけは、1月17日の地元紙『福島民友』の「『中核派拠点』と報告書/公安調査庁 福島の医療機関」という記事です。公安調査庁が1月に発行した冊子『内外情勢の回顧と展望』で「『ふくしま共同診療所』が福島県内の仮設住宅に居住する被災者を対象に、健康相談会や福島原発事故による健康被害を訴える『報告会』を開催するなどして、被災者の取り込みを図った」と記したことを記事にしたんです。
 二本松市にある浪江町役場に行き、担当者に「なぜだめなんですか」と聞いたら、福島民友を取り出し、「2年間も無料健康相談をやってもらってきて感謝しています。だけどこういう記事が出た以上、そのまま受け入れることはできません」という対応でした。でも私たちはやめるつもりはありません。まず住民とちゃんとお話ししようと思っています。
 公安調査庁が診療所のことを取り上げたのは、この診療所が仮設住宅の住民と結びつくことを恐れたからでしょう。
 強制避難させられた仮設の住民は非常に不満が強い。特にお年寄りはこのまま仮設で人生を終わらざるを得ないことに深い憤りを持っています。東電や国に怒りを持っている人たちは、警察にとって「不満分子」「治安対象」ですから、その人たちと診療所を結びつかせたくないのでしょう。診療所を中心とした福島の活動をつぶすという強い意志です。ある意味で僕らの2年間の活動を、それだけ大きな意味があると認めてくれたってことだと思ってます。

117人の子どもががんに

 2月の県の発表で、小児甲状腺がんとその疑いが計117人になった。そのうち88人が手術を受けています。2巡目で新たに発見された8人は1巡目の時は5人がA1、3人がA2でした。この2年余りの間に甲状腺がんを発症したのです。
 県民健康調査検討委員会の星北斗座長はコメントを「原発事故との因果関係はないとは言えないが、『考えにくい』 というこれまでの評価を変えるものではない」と若干変えた。これ以上増えたら、原発事故の結果だと認めざるを得ないところに追い込まれる。
 しかし簡単に認めるわけはない。〝原発事故で甲状腺がんが多発した〟となると、チェルノブイリと同じく空間線量が年間1㍉シーベルト以上のところは避難しなければならなくなる。つまり福島県は全県避難です。
 さらに大きいのは原発再稼働ができなくなるということ。再稼働すれば必ず福島と同じことが起きる。原発事故ゆえと認めることは、日本から原発が消えることを意味します。こんなことを認めたら政府はもちません。甲状腺がんの問題は、政府にそれほど破綻を強いている大きい問題です。

地元で声を上げ続ける

 この地で生きる人が周りの圧迫をはねのけて声を上げるのは大変なことです。だけどみんなおかしいと思っているし、それが堰(せき)を切ったようにあふれ出す時が必ず来ます。彼らの根底的な怒りを表現できる場を一緒につくりたい。だからこの診療所が声を上げ続けていくことが大切だと考えています。
 全原発廃炉の闘いの原点は福島です。原爆禁止の闘いは広島・長崎を二度と起こさせないこと。同じように再稼働阻止とは、原発事故を二度と起こさせない闘いです。
 例えば福井県の高浜原発で事故が起これば、偏西風が滋賀、京都、岐阜などを襲い、その地域は全滅する。大変なことです。再稼働が狙われる原発の近隣の人も3・11に参加して、福島の現実を持ち帰って再稼働に反対してほしいと思います。
 3・11には全国の人にいっぱい集まってほしい。福島で生きる人たちに、みんなで「絶対にあなたがたと一緒に歩いていきます」と発信する。そういう人が何万人、何十万人と集まれば、福島の人たちが「自分も声を上げよう」という力になる。数こそ力です。頑張りましょう。

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▼県民健康調査甲状腺検査の判定基準 【A1】結節やのう胞を認めなかった場合。【A2】5㍉以下の結節や20㍉以下ののう胞を認めた場合。【B】5・1㍉以上の結節や20・1㍉以上ののう胞を認めた場合/甲状腺の状態等から2次検査を要すると判断した場合。【C】甲状腺の状態等から判断して、直ちに2次検査を要する場合。

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