北海道・九州に今こそ動労総連合を 九州 分割・民営化失敗の隠ぺいが狙い 株上場強行する安倍の犯罪性

週刊『前進』08頁(2674号03面02)(2015/03/23)


北海道・九州に今こそ動労総連合を
 九州
 分割・民営化失敗の隠ぺいが狙い
 株上場強行する安倍の犯罪性


 安倍内閣は3・14ダイ改を前に、2月27日、2016年度中にJR九州に株上場をさせるためのJR会社法改定案を閣議決定した。これは「アベノミクスが効果をあげている」という演出であり、国鉄分割・民営化の大破産を隠蔽(いんぺい)する犯罪的政策だ。

鉄道は大赤字のJR九州

 国鉄分割・民営化から28年、JR体制はもはやボロボロだ。JR北海道、JR四国、JR貨物はいまだ株上場どころか政府支援なしに1日も成り立たない破綻企業である。「国鉄改革でサービス向上」という言い分がデマであることは、相次ぐ事故やローカル線切り捨てを見れば明白だ。
 最大の破綻点は、JR北海道の相次ぐ大事故に示される「JRの安全崩壊」である。重大事故は国鉄時代の何倍にも増大し、外注化・非正規職化拡大で労働条件は劣悪化の一途をたどっている。新自由主義崩壊の典型こそJR体制だ。「JR九州の株上場」を騒げば騒ぐほど「国鉄分割・民営化の失敗」を浮き彫りにするものでしかない。
 「分割・民営化成功」の演出をしなければJR体制はもたず、JR体制破綻の突破をかけたJR大再編攻撃や、「成長戦略」の要である鉄道輸出も貫徹できない。何よりも「戦後以来の大改革」を掲げた「農業・医療・雇用」の大幅な規制改革と、国鉄分割・民営化を数十倍する規模で強行されようとしている教育や自治体の民営化の大攻撃も挫折しかねない。だから安倍は、JR九州の尻をたたき、株上場を急がせたのだ。
 JR九州は毎年、鉄道事業で150億円の赤字を出している(表)。3877億円の「経営安定基金」がなければ成り立たない。経営安定基金は国民の血税で捻出されたものだ。だが安倍は、株上場に際して経営安定基金を「国に返さなくてもいい」とし、また「三島特例」を引き継いで固定資産税や都市計画税(年60億円)のうち50億円を「5年間減額する」ことも取り決めようとしている。そこまでしても「16年度中の株上場」という事実が必要なのだ。
 JR九州の株上場は、全国的なJR大再編の一環である。また、鉄道は大恐慌下の帝国主義間・大国間争闘戦の一大焦点になっている。

巨大サービス企業に大転換

 日帝は争闘戦に勝ち抜くために「世界最高水準のJR」の仮象を必要としている。そのために整備新幹線計画による新幹線網の整備やリニアモーターカーなどの超高速鉄道化を強める一方、JR各社は生き残りのために不動産・駅ビルテナント業など、サービス産業に活路を求めている。
 JR九州はその最先端を走っている。JR九州は九州一の不動産会社と化し、博多シティなどの駅ビル事業や「ドラッグイレブン」などの医療品販売、さらに農業、教育、果ては民営化される福岡空港経営にまで乗り出し、鉄道事業を二義的なものにした巨大サービス企業に大転換しようとしている。「16年度中の株上場」は、それをさらに促進する。
 株上場に向けてJR九州は不採算部門の全面切り捨てを図っている。JR九州の外注化・非正規職化はこれまでも極限的に進められてきたが、さらなる外注化・合理化を強行し、切れるものは何でも切る大攻撃に出てきたのだ。3月ダイ改はその突破口だ。

3分の2が無人駅になる

 ダイ改にあたってJR九州は、「(福岡市に乗り入れる)香椎線など100駅の無人化」や「みどりの窓口削減」などを発表した。これが実施されれば、九州566全駅中、3分の2にあたる381駅が無人駅になる。福岡市、北九州市など主要都市の駅以外はほとんど無人化されるのだ。
 JR九州は「これを福岡市近郊の駅にも拡大する」と言う。「これで駅の安全は守れるのか?」との声に、「2億円をかけてインターホンを設置する」と答えている。「事故か何かあったら連絡してくれ」という無責任な態度だ。これまで駅業務は大半が委託・外注化されてきたが、今回のダイ改でそれすらも放り出すのだ。
 JR九州のローカル線のワンマン化率は9割を超えている。これに九州全駅の3分の2が無人となれば、安全は極限的に崩壊する。2月13日、特急「ソニック」の8車両で、緊急停止用の防護無線が1年半にわたり故障したまま放置されていたことが判明した。1年半前に故障が見つかっていたのに修理せずに放置していたものもある。安全崩壊は野放し状態だ。

ローカル線の全面切り捨て

 さらに許せないのは、地方の重要な足であるローカル線の切り捨て計画が全面的に検討されていることだ。
 現在、JR九州の黒字線は「篠栗線」(福北ゆたか線、博多駅の隣の吉塚駅から桂川駅までの11駅25・1㌔区間)のみだ。他は鹿児島本線も含めてすべて赤字だ。そのため「鹿児島本線在来線を北九州市から久留米の先の荒木駅まで(285㌔中の108㌔)とし、その他は第三セクター化しては」というむちゃくちゃな意見まで出ている。
 11年の九州新幹線鹿児島ルートの全面開通で、鹿児島本線の八代―川内間は第三セクターの「肥薩おれんじ鉄道」になった。福岡市への一極集中が進む対極で、ローカル線の切り捨てにより他県の過疎化は急速に進んだ。これに九州新幹線・長崎ルートの開通が加われば、これはさらにひどいものになる。
 その九州新幹線も乗車率は40%台に低迷している。円安でアジアからの観光客が増えても、この有り様だ。「3泊4日で140万円」の豪華寝台列車「ななつ星」も、予約がとれないほどの人気だと言っているが、実はたいしたもうけは出ていない。完全民営化してもやっていけるかどうか分からない。だからJR九州は、安倍と政府に「経営安定基金を残せ」「税の優遇措置を」と言って泣きついているのだ。

御用組合の支配打ち破れ

 昨年6月にJR九州の社長に就任した青柳俊彦は、産経新聞14年7月16日付の「新社長・我かく闘えり」というコラムで、「人類にとって原発は必要だ」「JR九州の赤字の10%を電気代が占めている。赤字減らしのために原発再稼働は必要だ」と言い放った。これは福島を踏みにじり、「命よりカネ」という姿勢をあらわにした象徴的な発言だ。
 青柳はJR九州歴代社長で初めての技術・安全畑の出身であり、どこをリストラすればいいかを最も知りぬいた人物である。「16年度中株上場」方針は、その青柳が先頭に立って賃金・雇用破壊、さらなる外注化・非正規職化を徹底推進するという宣言である。
 今年こそ、JR九州における第2の分割・民営化攻撃と対決する決戦の年である。
 JR大再編は、JRで働く労働者に矛盾と犠牲を強いる。安全崩壊によって起こる事故の責任はすべてJR労働者に押し付けられ、真っ先に殺されるのもJR労働者だ。
 JR連合・JR九州労組は、口先では「安全優先」と言う。だが、「ダイヤ改定反対」とは絶対に言わない。資本ととことん結託しているからだ。資本の言いなりになる御用労組の支配を打ち破らなければ、必ず大事故が引き起こされる。
 動労千葉を始め動労総連合はダイ改阻止を掲げてストライキに立っている。動労総連合とともに「株上場」を口実にした安全無視・大合理化のダイ改に断固反対し、「100駅無人化・ローカル線切り捨て反対、大幅賃上げ、戦争と改憲・原発再稼働阻止」を掲げて15春闘を闘おう。JRの労働者は動労総連合に結集しよう。
(九州・遠山春彦)

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