社会保障解体許すな 〈介護〉 「地域包括ケア構築」で施設から放り出す

週刊『前進』06頁(2675号03面03)(2015/03/30)


社会保障解体許すな 〈介護〉
 「地域包括ケア構築」で施設から放り出す


 安倍政権は「医療・介護・予防・住まい・生活支援が確保される地域包括ケアシステムの構築」を打ち出し、4月から実行しようとしています。
■医療と統合し予算削減
 「人口減少・超高齢化」と社会保障費拡大に対処するとして昨年6月に成立した医療介護総合確保推進法に基づく地域包括ケアシステムとは、人の命にかかわる医療や介護を、入院から在宅、医療から介護、公的介護から「自助努力」とボランティア、市場任せへ大転換させるものです。医療・介護施設を統合・廃止して患者や利用者を放り出し、民営化・首切りと非正規職化を一気に進めようとしています。
 4月から施行の改悪介護保険法は、地域包括ケアを掲げて、重度の要介護者などを在宅に移す一方、「要支援」などの軽度者については新設の介護予防・日常生活総合支援事業にシフトさせ、市町村のボランティアなどを見込んで予算の削減を図るとしています。
■「介護難民」あふれる
 厚生労働省は4月から事業者への介護報酬を2・27%削減。特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)、デイサービス分を減らし、訪問看護・介護分を増やすことで、「施設から在宅へ」を強制しようとしています。ショートステイ(短期入所)や認知症グループホームは5~6%減額され、閉鎖となる施設も出ています。
 入所期限がなく料金も安い特養に入れない高齢者は13年度で52万2千人に達し、期限のある老健を転々とする高齢者が増えています。厚労省やマスコミは特養を攻撃する一方、退所率が高い老健に報酬を増やすとしており、高齢者が放り出されて「介護難民」化、老老介護や介護疲れによる痛ましい事件が一層増えることは必至です。
■医療・介護の営利化
 地域包括ケアの音頭をとるのは、政府と一体化した三菱UFJグループなどの金融資本です。
 安倍政権は、3月11日の経済財政諮問会議で「経済再生と財政健全化の二兎(にと)を得る」として「公的分野の産業化」「公共サービス成長戦略」を掲げ、「民間の多様な主体との連携、医療介護分野の生産性向上、コスト抑制、歳出の効率化」を打ち出しました。席上、サントリーの新浪剛史社長は「公費を減らしても医療をはじめとするヘルスケア市場はたくさんの潜在事業がある」「規制改革、制度改革を断行し、インクルード(官民連携)して大規模な産業化」を主張しました。大恐慌と国家財政破綻の危機の中での社会保障解体と全面的な民営化・営利化の攻撃です。
 65歳以上の介護保険料は制度が始まった15年前は平均で2911円でした。それが4月からは5千円台半ばになります。25年度の介護市場は13年度の2・2倍の21兆円になる皮算用で、生命保険会社など大手資本の参入が相次いでいます。ニチイ学館は自宅療養する高齢者の増加を見込み、3月に介護と看護の複合型サービスを開設。食事の世話や、注射などの医療行為を始めました。
■短時間非正規が急増
 低賃金と過重労働を強いられる職場は「3年たつと入った職員の2割しか残らない」現状です。介護報酬改定による介護職員の賃上げのほとんどは定期昇給分に回され、介護関係250万人中7割の介護職員、それも正規職のみ。リハビリ専門職や調理師などは外され労働者を分断するものです。一律賃上げを求める闘いが始まりました。
 短時間勤務の非正規職員が急増しています。週34時間以下が14年に全産業で1669万人に達して前年より84万人増え、うち14万人が医療・介護での増です。介護士や薬剤師など1日3時間勤務の求人が2年で倍増したと報じられています。
 介護・医療の現場で民営化・外注化・非正規化に絶対反対し団結して闘うことが新自由主義による社会保障と労組解体を打ち破る最大の力です。国鉄決戦と結合して闘いましょう。
(大迫達志)

このエントリーをはてなブックマークに追加