青函トンネルで特急列車が火噴く 大惨事の一歩手前 分割・民営化と業務外注化が元凶

週刊『前進』06頁(2677号02面01)(2015/04/13)


青函トンネルで特急列車が火噴く
 大惨事の一歩手前
 分割・民営化と業務外注化が元凶



(写真 トンネル内を避難する乗客)


 安全に列車を運行できなくなったJR北海道の破産的現実が、またも衝撃的に突き出された。4月3日、青函トンネル内で起きた特急列車の発煙事故は、一歩間違えれば大惨事になってもおかしくない事態だった。事故の元凶は国鉄分割・民営化であり、そのもとで強行されてきた極限的なまでの業務の外注化だ。外注化粉砕・JR体制打倒の決戦に立とう。

避難し終わるまで6時間

 4月3日午後5時15分頃、津軽海峡線の青函トンネル内を通過中だった函館発新青森行き特急「スーパー白鳥34号」が緊急停止した。前から2両目の5号車の床下モーター付近から発煙し、火花を確認した車掌が停止手配をしたためだ。
 約15分後に運転士が煙を消し止めたが、乗客は乗務員の誘導で列車を降り、青函トンネルと並行する誘導路を約2・4㌔歩いて旧竜飛海底駅(竜飛定点)、避難所、ケーブルカー乗り場へと移動し、斜坑に設置されたケーブルカーで地上に脱出した。この事故で体調を崩した乗客2人が病院に運ばれた。
 トンネル内の列車事故で乗客が避難したのは、1988年の青函トンネル開通後、初めてのことだ。列車が停止した午後5時15分から全員が地上に脱出し終わる午後10時59分まで、約6時間がたっている。列車に乗っていたのは乗客124人と乗務員5人だが、ケーブルカーは一度に20人しか乗れず、往復に約30分かかるため、これだけの時間が経過した。
 この事故では煙は消し止められたが、避難にこれだけの時間がかかるという事実は、地下深いトンネルでの列車火災の恐ろしさを示している。
 全長約54㌔の青函トンネルは、本体出入り口以外に地上に脱出できる場所は青森側の旧竜飛海底駅と函館側の旧吉岡海底駅の2カ所しかない。両者は23㌔も離れている。トンネルの中央部付近で列車が止まれば、脱出はきわめて困難だ。消火設備が設けられているのもこの2カ所だけだ。
 しかも、来年3月予定の北海道新幹線の開業に向けた工事のため、竜飛海底駅と吉岡海底駅は14年3月に駅としては廃止され、無人となっていた。そのため、ケーブルカーを運転する社員の到着に時間がかかったことも、避難に長時間を要した原因だ。
 列車が発煙したのは、モーターの回転速度を制御する「主変換装置」に異常が起き、配線に過大な電流が流れたためと見られている。他方でJR北海道は、事故の3日前に行われた点検では車両に異常はなく、事故後に行われた同型車両34両の緊急点検でも異常は見つからなかったと言う。どうして主変換装置に異常が生じたのかは、今も突き止められていない。

JR北海道の安全は崩壊

 JR北海道は、いつ、どのような検査・修繕作業が行われたのかを、まったく把握できなくなっている。経営基盤の弱いJR北海道がJR他社より激しく強行した外注化が、この事故の原因だ。
 JR北海道の発表によれば、列車が函館駅を出発した後、運転台にはモーターの制御装置の異常を示す警告が五稜郭、札苅、木古内の各駅に停車した際など4回にわたり表示され、警報音も鳴ったという。だが、いずれも数秒で消えたため運転士は運転を継続した。また、列車が青函トンネルに入ったころには車掌が異臭に気づいていたが、車内を巡回し配電盤などを確認しても異常は見つからず、列車停止の措置はとらなかった。「安全よりも運行」が労働者に強いられる状況は、何も変わっていないのだ。
 JR北海道の安全崩壊は、2011年5月27日、石勝線トンネル内での特急列車の脱線・炎上事故で衝撃的に突き出された。この時も乗客・乗員は命からがらトンネルから徒歩で脱出した。
 さらに2013年9月19日の函館本線・大沼駅構内での貨物列車脱線事故をきっかけに、線路検査データを組織ぐるみで改ざんしていた事実が発覚し、鉄道会社として成り立っていない実態がさらけ出された。
 石勝線事故後も、車両のエンジンから出火・発煙する事故は数限りなく起きている。そのほとんどはディーゼルカーだ。だが、今回事故を起こしたのは、2002年から使用され始めた789系といわれる比較的新しい電車だ。JR北海道の安全崩壊はさらに深刻な段階に入ったのだ。
 この中でJR北海道は北海道新幹線の開業へと突き進んでいる。

新幹線とリニアも破産へ

 それは安全をさらに崩壊させずにはおかない。北海道新幹線の車両の定員は731人で、今回、避難した乗客数より格段に多い。ケーブルカーで全員が脱出するとすれば、その所要時間は約18時間にもなる。ひとたび事故が起きれば、大惨事は避けられない。
 こうした事態を突きつけられたJR北海道とJR東日本、国土交通省はこぞって「避難誘導方法の見直し」「安全対策の徹底」を叫び始めた。だが、事故をもたらしたのは国鉄分割・民営化と外注化だ。にもかかわらず、さらなる外注化を強行することで北海道新幹線開業にこぎつけようとしているのがJRだ。このJR体制を打倒しなければ、鉄道労働者と乗客の命は守れない。
 今回の事故は、JR東海が着工を始めたリニア新幹線の破産をも突き出した。リニア新幹線のほとんどは地下深いトンネルを通る。リニアで事故が起きればトンネルからの脱出はほぼ不可能だ。国際争闘戦に勝ち抜くために労働者の命を無視してリニア建設を強行するJR東海名誉会長の葛西敬之らを絶対に許すな!
 北海道を始め全国に動労総連合をつくり出し、全面外注化と労組破壊を軸とする第2の分割・民営化攻撃を粉砕しよう。

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