尼崎事故の居直り決め込み外注化強行するJR西日本 北陸本線三セク化が突破口に

週刊『前進』06頁(2677号02面02)(2015/04/13)


尼崎事故の居直り決め込み外注化強行するJR西日本
 北陸本線三セク化が突破口に


 JR西日本の3・14ダイヤ改定の最大の攻撃は、北陸本線の第三セクター化だ。これはJR西日本による地方破壊の本格的な始まりだ。同時にJR西日本は、ダイ改を突破口に今後3年がかりで全面的な外注化・非正規職化を強行しようとしている。動労西日本を先頭に、この攻撃と真っ向から激突し打ち破る大決戦が始まった。
 北陸新幹線に並行する金沢―直江津間の164㌔は切り捨てられ、北陸本線は米原―金沢間189㌔に半減された。金沢以北は県ごとに三つの第三セクター(IRいしかわ鉄道、あいの風とやま鉄道、えちごトキめき鉄道)に分割された。運賃は引き上げられ、接続・乗り換えの不便も発生し、事故や遅延情報などの連絡網も寸断された。沿線自治体は三セク維持の負担増にあえぎ、自治体消滅に拍車がかかった。
 北陸本線の三セク化でJR西日本の他の路線との接続が断たれた七尾・城端・氷見・高山・大糸各線を、JR西日本が放棄しようとしていることも明らかだ。

赤字ローカル線放棄をあからさまに表明

 何よりも重要なことは、労働者の労働条件の劣悪化だ。北陸本線は全国一の特急銀座で黒字路線だったが、金沢以北の特急84本はすべて廃止された。ドル箱を失った三セク会社の経営破綻は必至だ。そのツケは現場労働者にのしかかり、極限的な要員不足と安全崩壊に行き着く。
 三セク会社にはJR西日本から363人の労働者が出向に出された。これに自治体からの出向者と直採用者151人、契約社員29人を加えた計543人が三セクに配属された(表参照)。しかし事前に労働条件は一切明らかにされず、国鉄分割・民営化の時と同じように一方的に決められた。
 JR西日本は、ローカル線放棄を「確信犯」として強行した。
 週刊ダイヤモンド2011年2月号のインタビューで、JR西日本の佐々木隆之前社長は次のようにその本音をあけすけに語っている。「地域に根ざして営業しているわけだから、赤字路線問題だけでなく、共同で観光キャンペーンを行ったり、駅周辺の利便性を向上するなど、さまざまな場面で自治体と協力していく必要がある。日頃からこうした活動で成果を出し、信頼関係を築いてからでないと、赤字路線問題を一緒に考えてはもらえない。ある日いきなり撤退するわけにはいかない業態だが、中期経営計画が終わる2年後までにはなんらかの進捗(しんちょく)を見たい」
 JR西日本が尼崎事故以降進めてきた観光促進キャンペーンは、赤字路線からの撤退が狙いだったのだ。
 そのJR西日本が尼崎事故を起こしたのは必然だった。

他社に先がけ外注子会社の設立を強行

 本州3社の中でJR西日本は最も経営基盤が脆弱(ぜいじゃく)だ。近畿圏以外は大きくはローカル線であり、肝心の近畿圏は「私鉄王国」だ。だからJR西日本は山陽新幹線の黒字でローカル線の赤字を補うとともに、近畿圏で黒字を「稼ぐ」としたのだ。JR西日本は発足当初から徹底的に安全を無視した経営を強行した。
 その第一は、分割・民営化直後から外注化・非正規職化に突っ込んだことだ。87〜93年までに、JR西日本電気システム、JR西日本メンテック(清掃・改札・構内運転など)、レールテック(保線)、JR西日本テクノス(車両検修)が子会社として設立された。いずれも現在、JR西日本の中心的外注会社になっている。2003年には契約社員制度をJR他社に先んじて導入した。
 第二に、「日勤教育」に体現される専制的労務支配だ。
 第三に、「稼ぐ」という標語に代表される「安全よりも金もうけ」の経営方針だ。国鉄時代の「安全綱領」は投げ捨てられ、私鉄や航空会社に対抗しての利潤追求がすべてに優先された。
 第四に、これらすべては、初代社長であり「国鉄改革三羽カラス」の一人である井手正敬のトップダウンで強行された。
 井手は尼崎事故裁判で「現場に責任を取らせるために現場を追い詰めた」「経営は安全に責任をとる必要はない」と言い放った。こうしたJR西日本の姿勢は、今も変わってはいない。JR西日本は尼崎事故の責任を一切取っていないし、取るつもりもない。

近畿統括本部が狙う現業の外注化許すな

 3・14ダイ改を突破口に、JR西日本は2017年度に至る3年がかりで全面外注化・非正規職化に突き進もうとしている。歴代3社長を「無罪」とした尼崎事故裁判の3・27大阪高裁判決をもってJR西日本は尼崎事故を居直り、JR西日本の「原点」である外注化・非正規職化と専制的労務支配に舵(かじ)を切ろうとしている。
 JR西日本は尼崎事故直後の05年5月31日に「安全性向上計画」を出し、「2008年中期計画〜見直し」「安全基本計画(2008〜2012年度)」などの計画を策定した。それは今、「JR西日本グループ中期経営計画2017」に引き継がれている。
 それらに貫かれているのは、「グループ会社一体で」と称する「リスクアセスメント」運動で安全を確保できるとしていることだ。こんなQCサークル運動で事故がなくなるはずがない。そもそも、グループ会社一体となってのこの運動自体が、偽装請負にほかならない。
 事故の核心的原因は外注化・非正規職化にある。にもかかわらず外注化・非正規職化を徹底的に進め、指揮命令系統をズタズタにすれば、事故がさらに多発することは明らかだ。結局この運動は、事故の責任を現場労働者に転嫁することが目的だ。
 JR西日本は2010年12月に機構改革を行い「近畿統括本部」を立ち上げた。車両・施設・電気は統括本部直轄に一元化された。これは、現業外注化に打って出るための司令塔だ。そのもとでJR西日本は尼崎事故のくびきから抜け出すための「安全基本計画」の総仕上げを図り、近畿圏で「稼ぐ」に再び突き進もうとしているのだ。
 近畿以外の各支社でも要員削減・外注化・非正規職化はすさまじい勢いで強行された。実際、要員と遮断機を付けなかったことで、多くの乗客の命が奪われている。
 近畿統括本部との攻防の焦点は検修全面外注化だ。2011年6月、JR西日本は組織再編として電車区の配置換えを行った。運転士と研修係を分離し、研修係を総合車両センターの下に置いた。そして吹田工場や網干車両センターでの業務の外注化と一体で、検修全面外注化が狙われている。いよいよJR西日本の外注化・非正規職化との決戦が始まったのだ。
 動労西日本を先頭とした動労総連合は、これと真っ向から立ち向かい、青年労働者と団結してJR労働運動の主流派になる決戦に突入した。全国に動労総連合をつくり、JR体制を打倒する闘いとして勝利する。
(関西・吹田啓之)
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