矛盾が集中したJR四国は分割・民営化の最大の破綻点 四国に動労西日本の闘う旗を

週刊『前進』06頁(2677号02面03)(2015/04/13)


矛盾が集中したJR四国は分割・民営化の最大の破綻点
 四国に動労西日本の闘う旗を


 JR北海道、JR九州、JR四国の三島JRとJR貨物に、国鉄分割・民営化=JR体制の大破綻がさらけ出されている。中でも最も激しい矛盾が集中しているのがJR四国だ。この四国に動労総連合の旗が立つならば、動労千葉が銚子や館山で実現しているように、四国全体を新自由主義に対する地方の怒りの反乱の拠点に転化することができる。

輸送量も収入も減少の一途

 四国は香川・愛媛・徳島・高知の4県の合計人口が387万人で、横浜市をわずかに上回る程度だ。新自由主義による地方切り捨てで過疎化と人口減少は進み、輸送人キロで表したJR四国の乗客輸送量も減少する一方だ(グラフ参照)。
 その上、予讃線(松山―高松間)、土讃線(高知―高松間)、高徳線(高松―徳島間)の鉄道幹線と並行して高速道路が建設され、鉄道は自動車、バスとの競合にさらされている。ピーク時の1996年度に370億円だったJR四国の運輸収入は2015年度に226億円台へと落ち込む見込みだ。社長の泉雅文自身が「四国のような地方は上下分離しないと生き残れない。国に上下分離を求めていく」と言い出している(週刊東洋経済2月19日号)。
 そもそも国鉄は、全国一律の運賃で公共交通機関としての鉄道を成り立たせてきた。それは首都圏や大都市間の大量輸送による収益を地方に再配分することで可能になっていた。だが、国鉄分割・民営化で鉄道は切り分けられ、国家権力中枢と結びついた葛西敬之(現JR東海名誉会長)らは、収益の上がる東海などを私物化したのだ。
 2013年度のJR東海の営業収益1兆6525億円に対し、JR四国は488億円、経常利益(利潤)は東海の4042億円に対し四国は46億円だ。この46億円も「経営安定基金の運用益」と称する国の補助金によるもので、実際の経常利益は毎年90億〜100億円規模の大赤字だ。
 もうかるところでは徹底的にもうけ、もうからないところは徹底的に切り捨てるものとして国鉄分割・民営化は強行された。その矛盾は、すべて労働者人民に押しつけられている。

車掌・検修など全業務外注化

 JR四国は完全に破綻している。だが、どんなに破産的でも「完全民営化」に向けて極限的な合理化・外注化へ突き進むのが第2の分割・民営化攻撃だ。北海道の2割強ほどの面積しかない四国には切り捨てるローカル線もなく、JR四国はどこよりも激しく合理化と外注化を進めている。
 JR四国の「中期経営計画2012―2016」は「自立経営の確立」を掲げ、「新たな輸送体系の実現」「グループ一体となった業務の効率化」「鉄道の抜本的な高速化」を打ち出した。特急を増発する一方で生活路線は縮小し、徹底した人件費削減―外注化・非正規職化を強行するとともに、何の展望もない四国新幹線構想にすがりつくということだ。
 施策の筆頭には「少数精鋭化(総額人件費削減)」が挙げられた。発足時4455人だった社員数は現在2600人台に減少(グラフ参照)、その分、外注化・非正規職化も拡大している。
 JR四国の大量退職問題は、JR各社の中でもきわめて深刻だ。2013年時点で50歳代以上の労働者が過半数を超えており、退職者が抜けた穴を外注会社の非正規労働者で埋めている。JR四国は2010年、JR各社で初めて、車掌業務を契約社員の客室乗務員に行わせる施策に踏み切った。当時の社長・松田清宏(現会長)は「接客に興味がある人に来てほしい」と言った。列車安全運行の要をなす車掌を「接客業」にするというのだ。2009年度末時点でJR四国に在籍していた300人の車掌のうち170人が2023年度までに退職するが、それに相当する人員が次々と期間5年以内の契約社員にされていくのだ。
 「中期経営計画」は恐るべき安全崩壊をもたらしている。保線・検修などの鉄道事業の根幹部分が丸投げ外注化され、その結果「鉄道運転事故」は毎年20件を超えている。この数値はJR四国の車両保有台数から見て異常に高い。
 またJR四国の全259駅のうちすでに80%が無人化されている。JR四国唯一の工場である多度津工場では、発足時に600人いた労働者が今は200人に削減され、うち100人は外注会社の社員だ。
 このままではJR四国での「尼崎事故」「伯備線事故」は不可避だ。一昨年秋には「56本の橋を補修せず、点検記録に不備があった橋は1100本超」という事態が暴かれた。さらに昨年秋には、2013年度に実施された線路点検のうち328カ所で検査が適切に行われていなかったことが、会計検査院の検査で明らかになった。
 JR体制打倒は、鉄道労働者、全労働者人民の命がかかった課題だ。

JR四国労組闘いに危機感

 JR四国の矛盾の根源はJR体制そのものにある。社会の公共物である鉄道を私的利潤獲得の道具として資本家が私物化していることに根本問題がある。だから鉄道と鉄道労働者の労働の社会性・共同性の奪還に向けて階級的団結を形成し、動労総連合を建設することが求められている。
 2013年2月8日のJR四国労組第26回本部委員会では、次のようなやりとりが行われた。「(愛媛支部)動労西日本は、今年1月に開催した第6回定期大会において組合規約改正により、組合員の範囲を拡大し、JR四国も対象となったとの情報がある。詳細な情報があれば教えていただきたい」「(浅岡書記長)動労西日本の組織拡大行動は今に始まったことではなく、2年ほど前から運転所前でビラ配布するなど活動している。......JR四国労組の組合員は動労西日本のビラ配布等に関わりを持たないようにしてほしい」(JR四国労組新聞13年3・10付)
 「動労総連合を全国に」の方針はJR四国の最大労組=御用組合を恐怖にたたき込んでいる。
 動労水戸の被曝労働拒否の闘いは、伊方原発再稼働と対決する四国の労働者の課題だ。伊方原発で事故が起きれば四国全体が被曝する。愛媛県職労とともに伊方原発再稼働阻止・被曝労働拒否を闘おう。動労水戸支援共闘を四国に広げよう。動労神奈川に続き、動労総連合を四国に建設しよう。
(中四国・魚住徹)

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輸送人キロ 乗客数とその移動距離を積算したもので、乗客輸送の規模を表す。
上下分離 線路や駅などの施設を保有する事業者と、列車を運行する事業者を分離する経営方式。施設を自治体が保有する形をとって列車を運行する民間会社に補助金を出す場合が多い。

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