リニア新幹線の危険性示す青函トンネルでの特急発火 反対の声集め建設阻止しよう

週刊『前進』06頁(2678号02面02)(2015/04/20)


リニア新幹線の危険性示す青函トンネルでの特急発火
 反対の声集め建設阻止しよう


 4月3日午後5時過ぎ、北海道と本州を結ぶJR津軽海峡線の青函トンネルで、函館発新青森行き特急「スーパー白鳥34号」の床下から火花が出る事故が起きました。乗客124人がトンネル内を2・4㌔歩いてケーブルカーに乗車、約6時間かかって地上に逃れる事態になりました。この事故自身が、国鉄分割・民営化と2015年3月ダイヤ改定の大破綻を示しています。同時にそれは、リニア中央新幹線(品川―名古屋)の危険性を浮き彫りにしました。

大事故が起きても地上に出られない

 リニアは全線286㌔のうち86%の246㌔がトンネルで、標高3000㍍を超える南アルプス(赤石山脈)のど真ん中を、長さ25㌔、最大土(ど)かぶり(トンネル上の山体の土の厚さ)1400㍍の長大トンネルで貫きます。甲府盆地から一気に標高差2900㍍に達するのが南アルプスで、今でも世界トップレベルの速度で隆起を続けています。そこはフォッサマグナの縁に当たる断層地帯でもあり、地震も多発しています。
 リニア走行中に地震が起き、仮に無事停車できたとしても、乗員・乗客は地中1400㍍をはい上がって地上に脱出できるでしょうか。
 青函トンネル事故では乗務していた労働者の誘導で乗客が避難できましたが、リニアには運転士がいません。外注化・非正規職化がすさまじく進んでいる中で、乗務員が乗客を安全に誘導できるとは限りません。

地域と自然を破壊する暴挙

 品川―名古屋間ルートの発表以前から、各地でリニア反対の運動が起きています。婦人民主クラブ全国協議会のある神奈川県相模原市には、東京都町田市とともにリニアの駅・変電施設・巨大車両基地・トンネル非常口・橋梁(きょうりょう)などが造られる予定です。これへの闘いが開始されています。南アルプスを貫くトンネル工事の拠点・長野県大鹿村では、リニアを推進する県と村長に対する村民の闘いが進んでいます。静岡や岐阜でも闘いの火の手が上がっています。これらの先進的な地域の運動が訴えているように、リニアは自然と人間社会を破壊する大暴挙です。
 今年に入り大鹿村釜沢地域でリニア坑道設計のための調査ボーリング工事が始まりました。当初は「朝8時から午後5時まで」という約束だったのに、2月に入ってから「昼間だけの作業だと機器が凍結するため24時間作業にしたい」と、だましうち的に約束をひっくり返そうとしています。さらに、村内にトンネル斜坑口4カ所を造る計画に加え、変電所や変電所への高圧送電用鉄塔群を建設することも「後出し」で示されました。
 工事で出る膨大な残土の運搬・処理のためには、「狭い村道に毎日1736台の工事車両を12年間通す」ことになります。それだけでも空前の地域破壊なのに、これで済むとは思えません。また、トンネル工事は、掘ってみないと何が出るか分かりません。仮に完成したとしても、大電力送電と電磁被曝の危険はずっと付きまといます。
 さらに、速度だけが「売り物」のリニアで、交通の便が悪い中間駅が利用されることは、ほとんどありえません。相模原市などの中間駅周辺は必ず衰退します。
 住民の生活を破壊し、南アルプスを破壊するリニアの建設は、新自由主義攻撃そのものであり、これとの闘いは三里塚闘争とも一体です。

「過電流」トラブルも不可避

 青函トンネル事故の直接の原因は「過電流」と発表されています。首都圏など都市近郊鉄道は直流1500㌾が使われることが多いのですが、青函トンネルを通る電車は交流2万㌾、来年3月開業予定の北海道新幹線は交流2万5000㌾を使います。リニアの電圧はそれ以上と想定され、「過電流」によるトラブルはより起こりやすくなります。
 リニアにはオイルを内蔵する支持脚装置や車内電力用発電機の燃料など多くの可燃物が積み込まれます。クエンチ(超電導状態の喪失)に陥った時には、40パーミル(1㌔当たり40㍍上る勾配)の坂を最大時速550㌔で疾走することになります。ゴムタイヤのついた支持脚装置は台車に収納されていて、出るまでに数秒かかるため、四百数十㌧の車両と1000人の乗客の荷重を、ボディーの下の金属(緊急着地装置)と走行路の摩擦だけで受け止めなければなりません。

原発再稼働前提に着工強行した葛西

 リニア新幹線で超電導なのは車体側だけで、地上側は通常の電磁石を使います。リニアを走行させる巨大な推進力を得るためには、そこに大電流を流さなければなりません。トンネルは空気抵抗を倍加させるので、リニアは現在の新幹線よりも3倍から数倍の電力を使うと言われます。だから葛西敬之JR東海名誉会長は、原発再稼働を強硬に主張しているのです。
 リニアは計画段階から原発を前提としており、新潟の柏崎刈羽原発から群馬・山梨への送電網はリニア用に100万㌾仕様になっています(現在は反対運動により50万㌾で使用されています)。
 人員を乗せた計500㌧の車体を10㌢浮上させる強力な超電導磁石は、付近のものを磁石に変えてしまうため、工事に一般的な鉄は使えず、コンクリートの鉄筋も高マンガン鋼です。
 こうした強力な磁性が、人の健康を害することは明らかです。

超電導は戦争のための技術

 リニアは、安倍の成長戦略の柱である鉄道輸出の要に位置しているだけでなく、戦争体制構築の武器にほかなりません。
 リニアに使われる超電導技術は、米軍なども以前から研究開発を進めていますが、実用段階には至っていません。超電導を使った電磁砲や電磁カタパルト(艦船から飛行機を発進させる装置)も、実験成功段階にとどまっています。
 安倍政権は、「イスラム国」による日本人人質殺害事件を絶好の口実に、中東侵略戦争への参戦を強行しました。フランス大統領オランドがその艦上で演説した原子力空母「シャルル・ドゴール」は、米軍から供給された蒸気カタパルトを装備しています。日本帝国主義も、「護衛艦」と称して実質的な巨大空母「いずも」を建造しています。その日帝と、実用レベルの超電導技術がほしい米帝の思惑が重なったところに、リニア新幹線の技術が存在しています。だから葛西敬之JR東海名誉会長は、「リニアを日米協力の象徴に」と繰り返し唱えているのです。
 JR東海は3兆円以上の負債を抱えており、巨額な工事費もまかなえないし、リニアの収益も期待できません。にもかかわらずJR東海がリニアにこだわる理由は、ここにあります。「高収益が望めるというのが企業のあり方。JR東海はそうした利潤の追求を超え、どこか崇高な目的すらうかがえる。一体何がそこまでJR東海を駆り立てているのだろうか?」(梅原淳『鉄道の未来学』)と言われながらも、リニア=戦争にすがって生き延びようとしているのが、安倍政権とJR資本です。
 新自由主義のきわみと言うべきこの攻撃を、なんとしても打ち砕かなければなりません。

闘う労組を拠点に地域一体で闘おう

 では、どうやったらリニアは止められるのでしょうか? 建設を推進するJR会社の中に闘う労働組合をつくり、その労組を拠点に地域が一体となって住民運動を進めることです。ここまでリニアの計画が進んだのは、国労やJR総連が職場でまったく闘わなかったからです。
 その一方で安倍やJR資本と対決し、その攻撃を打ち砕いているのが動労千葉・動労水戸―動労総連合の闘いです。厳しい自然とともに生きてきた大鹿村にはぐくまれた「コミューン」の理想を、現代社会によみがえらせているのが青年労働者・学生を先頭とした闘いです。動労神奈川の結成はそれを示しています。ここにはすべてを獲得する内実があります。職場と大学に拠点をつくり、リニア反対の声を結集して、リニア新幹線建設を阻止しよう。
(吾妻重藤)

このエントリーをはてなブックマークに追加