国定教科書復活許さない 杉並から反撃を巻き起こそう

週刊『前進』06頁(2678号03面03)(2015/04/20)


国定教科書復活許さない
 杉並から反撃を巻き起こそう


 戦争に突き進む安倍政権は、国家による教育現場の制圧と戦争教育の強制を狙い、教科書の記述を全面改悪する攻撃を開始しました。杉並で戦争賛美の教科書採択に絶対反対で闘ってきた北島氏とともに、教育労働者・保護者・区民は団結して立ち上がり、安倍政権を今こそ倒しましょう。

領土など政府見解押しつけ

 文部科学省が4月6日に公表した中学校教科書(2016年度より使用)の検定結果は許せないものです。この間、文科省は教科書の記述について「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解又は最高裁判所の判例が存在する場合には、それらに基づいた記述がされていること」とする告示を出し(14年1月)、政府見解を教科書にそのまま反映させる教科書検定基準改悪や、教科書作成の土台となる学習指導要領解説書の改悪を進めてきました。そして今回の検定では、地理、歴史、公民の全教科書に「竹島」(独島)と「尖閣諸島」(釣魚島)が記載され、そのうちの大半を「固有の領土」と明記させました。「尖閣諸島」について「領土問題は存在しない」とまで記述した教科書もあります。いずれも中国・韓国への敵愾心(てきがいしん)をあおりたて、教育現場に戦争翼賛教育を強制しようと狙うものです。
 安倍政権は昨年の7・1集団的自衛権行使の閣議決定を踏まえ、4月末に日米安保ガイドライン改定を狙っています。これはまさに、領土をめぐる日本と中国との衝突に「アメリカを巻き込むための仕掛けづくり」(拓殖大教授・川上高司)にほかなりません。さらに今国会に提出されようとしている安保法制は、「わが国の存立が脅かされる事態」と政府が閣議決定するだけで武力行使を可能にするというものです。この安保法制と一体で安倍は「国のために血を流すこと」を教え込む戦争教育への転換を狙っているのです。
 しかし、追い詰められているのは安倍の方です。国鉄闘争を先頭とする階級的労働運動、そしてそれと一体で「教え子を再び戦場に送らない」と不屈に闘ってきた教育労働者の団結が解体されない限り、戦争はできません。

安倍の狙いは戦争への動員

 国家が一律に著作・発行する教科書が「国定教科書」です。戦前の日本では、日露戦争と同時に1904年から国定教科書化が始まり、以後、多くの子どもたちを戦場に送る教育を行いました。
 国定制度は戦後廃止され、検定制度に変わりました。「基準」を示すことで「自主性」「公正性」は確保されているとし、憲法の禁じる検閲にはあたらないと強弁してきました。しかし、政府見解を明記すべきとした今回の制度改悪は、国定教科書への回帰です。
 さらに、教科書の「編集・検定・採択」の全面にわたる抜本改悪も狙われています。
 一つに、編集段階から出版社に「愛国心」などの記述を強制することです。出版社が教科書を申請する際に提出する書類に、「道徳心」「愛国心」を定めた改悪教育基本法の「教育の目標」を、いかに反映させたかを全教科にわたり明記させることにしました。
 二つに、検定基準の抜本改悪です。自民党は「文部科学大臣が、各教科書共通で記載すべき事柄を具体的に定める方式に改める」と主張し、新教科書法(仮称)で国定化も狙っています。
 三つに、「教科書採択の改善」と称した、戦争賛美の育鵬社や自由社の教科書採択推進です。改悪教育委員会制度で新設された総合教育会議で、首長主導で「教科書採択方針」を決定しようというのです。
 これまで、極右勢力は幾度も杉並区を戦争賛美の教科書採択の突破口と位置づけてきました。これらの教科書は、日本のアジア太平洋戦争を「自存自衛」の戦争と正当化し、改憲・戦争を先取りする中身です。この教科書について安倍は「新しい教育基本法の趣旨を最も踏まえた教科書」などと賛美しています。
 しかし、重要なことは、こうした極右勢力による教科書採択運動は、すでに杉並を始めとした全国の闘いによって根本的に粉砕されているということです。それゆえ安倍は一層凶暴化し、国家暴力で戦争教育を強制しようと今回の教科書改悪攻撃に手をつけました。これに対し、教育労働者を始め広範な労働者人民の怒りの爆発は不可避であり、そこにゼネスト情勢がはらまれています。
 こうした中で、日本共産党は「尖閣諸島・竹島は歴史上も国際法上も日本(の領土)」と主張し、安倍を尻押ししています。共産党の路線では教科書攻撃とも、戦争とも闘えません。
 北島候補の圧勝をかちとり、韓国・民主労総ゼネストに呼応する日本でのゼネストで労働者に国境はないことを示しましょう!
(神田三郎)

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