改悪「国家戦略特区法」批判 戦争法案と一体で生存奪う労働法制全面解体の突破口 階級的労働組合を建設しゼネストへ

週刊『前進』10頁(2692号02面04)(2015/08/03)


改悪「国家戦略特区法」批判
 戦争法案と一体で生存奪う労働法制全面解体の突破口
 階級的労働組合を建設しゼネストへ

憲法の枠超え法規制を撤廃

 7月8日に国家戦略特区法改悪案が参院本会議で可決・成立した。同時に労働者派遣法改悪案と残業代ゼロ法案、裁量労働制拡大が国会で審議され、「不当解雇の金銭解決」制導入まで検討されている。安倍の「戦後レジームからの脱却」は戦争法・改憲とともに全面的である。労働法制の全面改悪と労組破壊の階級戦争が狙われている。
 特区法は「構造改革」と「産業の国際競争力の強化」「地域の活性化を図る」などとして「新たな規制の特例を設ける」とうたう。要は「特区」という名目で、憲法の枠を超えて法規制撤廃を行う実質改憲攻撃だ。経済財政諮問会議や産業競争力会議などは、全面的な規制緩和の突破口と明言している。特区は東京圏、関西圏、沖縄県、福岡市、新潟市、兵庫県養父市に仙台市、愛知県、秋田県仙北市が加わり、9地域に拡大した。
 改悪特区法は「外国人を含む開業促進」「規制改革による地方創生」「民間ノウハウの活用」などを挙げて、13項目が追加された。ブルジョアマスコミはその本質を隠すが、保育士資格を解体する地域限定保育士の創設や公立学校運営の民間開放、医師以外の者を医療法人理事長とする要件の緩和、さらにシルバー人材センターが派遣する高齢者の就業時間制限をこれまでの週20時間から40時間に拡大、「官民の垣根を越えた人材移動の柔軟化」と称する出向・転籍攻撃など、民営化・外注化・総非正規職化を徹底的に進める労働者への許しがたい攻撃だ。

最低賃金以下の労働力導入

 「新たな規制緩和の目玉の一つ」(7月9日付日経新聞)として打ち出されたのが、「外国人材の活用」だ。
 今回導入されたのは、①創業人材などの多様な外国人の受け入れ促進、②外国人家事支援人材の活用(大阪市、神奈川県)、③大規模病院に限定されている外国人医師受け入れを、研修目的の外国人医師受け入れ制度である「臨床修練制度」を拡充する形で診療所に広げる(秋田県仙北市)というものだ。
 このうち①は、「高度人材外国人の受入れ促進」によるものだが、②は、これまで日帝が建前としてきた「単純労働力受け入れ拒否」を公然と振り捨て、単純労働に外国人労働者を受け入れ、低賃金を強いようというのだ。③も地方での医師不足解消と称して医師資格全体の解体を狙ったものとなっている。
 今回の改悪で、国の認定を受けた事業者が炊事や掃除、洗濯などを代行する従業員として外国人を雇えるようになる。特区法の16条の3「外国人家事支援人材の活用」を見ると、ポイントは以下の3点である。
 ⑴炊事、洗濯その他の家事を代行し、または補助する業務を政令で定め、その要件を満たす外国人を日本の公私の特定機関が雇用契約に基づいて受け入れる。
 ⑵⑴の認定を受けた外国人が日本に上陸しようとする場合は入管法に基づく証明書を発行する。
 ⑶⑴の「特定機関」が行う研修などの指針は内閣総理大臣が作成する。
 衆院地方創生特別委員会の審議で明白になったことは「どういう家事支援を行うのか」についてはすべてを今後の政令にゆだねるということであり、守るべき基準も中身も何も決まっていない。
 安倍は14年1月のスイス・ダボス会議で「多くの女性が市場の主人公となるためには、家事の補助、あるいはお年寄りの介護などの分野に外国人のサポートが必要」と述べた。しかし「女性が輝く日本へ」などと言う安倍の狙いは、戦時体制を支える女性労働力の確保であり、女性や外国人を始め全労働者の非正規職化だ。とことん搾り取ることしか考えていない。
 全国家事代行サービス協会副会長で業界大手「ベアーズ」の高橋ゆき専務は、今後の市場拡大をにらんで家事代行サービスへの外国人労働者の受け入れに積極的だ。しかし問題はコストだとして、「女性の活躍推進をめざすなら、広く普及しなければ意味がない。現状より高い利用料はあり得ない」と断言する。現在の1時間3千円超の利用料を3分の2以下に抑えたいとし、外国人労働者の賃金について「国には最低賃金を下回る賃金も認めてほしい」と公言している。(1月30日付朝日新聞大阪版)
 家事労働への外国人労働者の受け入れの狙いは、最低賃金以下で使える超安価な労働力導入であり、限定的であろうと導入してしまえば、後は政令でいくらでも拡大できるということだ。
 これまで家事労働の外国人労働者を雇用できるのは一部の外国人に限られていた。外交官と投資・経営などの在留資格を持つ外国人である。この家事労働者は最低賃金法、労働基準法の適用外(労基法116条2項)だ。これまでも雇用主からの精神的肉体的虐待に耐えかねて逃げ出す例が多々あった。虐待が発生するのは、家事労働が家庭という密室内での労働だからだ。
 「外国人家事人材の活用」は、住み込みではなく住居を確保する「特定機関」であることが前提であり、労働法制がすべて適用されるという。しかし今後、住み込みを可能とする形に拡大する危険がないとは言えない。
 しかも受け入れが特定の家事支援サービス提供企業によって行われるために、外国人家事労働者には雇用主や働く場所を変更するという自由が事実上認められない。
 外国人技能実習制度の場合は、送り出し国における人材紹介企業などによって保険金の徴収と違約金契約がされ、保証人が付けられ、多額の費用が徴収される。そのことで日本での労働者の権利行使が妨げられてきた。

労働者全体に拡大する攻撃

 国家戦略特区を突破口に、全労働者を半失業状態の非正規職にたたき込み、生きていけない低賃金、劣悪な労働条件で使い捨てにしていく。JR資本がその先端を担う。貧困にあえぐ青年労働者が「経済的徴兵」で戦争に動員される。UAゼンセンを先兵に産業報国会化をめざし、戦争・改憲と民営化、労組破壊に突進しているのが安倍の新自由主義だ。それは社会全体の破滅に行き着く。
 労働者の怒りは地に満ち満ちている。職場生産点から反撃し、階級的労組拠点を建設しよう。国鉄決戦を基軸に安倍打倒のゼネストへ闘おう!
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