星野ビデオ国賠判決を弾劾する 無実の証拠を隠滅する大暴挙 星野再審弁護団 藤田城治弁護士の訴え

週刊『前進』06頁(2699号06面03)(2015/09/28)


星野ビデオ国賠判決を弾劾する
 無実の証拠を隠滅する大暴挙
 星野再審弁護団 藤田城治弁護士の訴え


 星野再審弁護団の藤田城治弁護士から、星野ビデオ国賠裁判の東京高裁判決を弾劾し、最高裁で闘う決意が寄せられました。(編集局)
 星野文昭さんと弁護団はビデオ国賠において、東京高裁第9民事部(奥田正昭裁判長)が5月13日に下した不当判決を打ち破るために上告した。

証拠へのアクセス権めぐる争い

 (1)証拠であるビデオテープの「紛失」が、警視庁・裁判所によるずさんな管理が原因であることはほぼ争いのない事実である。警視庁は内部規則で定められた証拠の保管簿への記録をせず、また保管委託した裁判所も定期的に確認するなどの措置もとっていなかった。したがって争点はただ一点、再審請求人である星野さんに、再審事件のために証拠を閲覧し利用する権利=「証拠に対するアクセス権」が法的権利として認められるかどうかである。
 (2)星野第2次再審請求で弁護団が特に追及したのは、映像証拠の入手と解析である。本件ビデオテープは比較的長時間デモ隊の様子を撮影していたもので、現在の解析技術によってデモ隊の動きを映像により確認し、無実の証拠として役立つ可能性があった。
 (3)本件ビデオテープは、星野同志と共同被告であり、現在は公判が停止中の奥深山幸男さんに関する証拠でもある。したがって東京高裁で引き続き保管され、星野さん、弁護団も見たい時に「当然に閲覧し解析できるはずの証拠」のはずであった。
 (4)本件は、すでに証拠として提出され取り調べが済んだ(いわゆる「旧証拠」の)ビデオテープが紛失した事案である。一方、みなさんと取り組んでいる「全証拠開示運動」はまだ提出されていない、検察庁の倉庫にある「新証拠」(になる可能性を秘めた証拠)全部の開示を求めるものである。したがって当然に見ることができる旧証拠へのアクセス権が否定されると、新たに開示を求める証拠についてはなおさらアクセス権が否定される関係になる。この意味では本件のビデオ国賠は全証拠開示を求める前提になる権利が争点になっている。したがって「すべての再審事件に関係する」広がりを持つ裁判である。

〝証拠の重要性は警察が判断〟

 第一審の東京地裁は、再審開始決定をするかどうかは新証拠と旧証拠を総合的に評価して決するという白鳥・財田川事件の最高裁決定をもとに、再審請求人には「新証拠と関連する旧証拠を検討評価する前提としてこれを利用する利益ないし期待権」があるとして、不十分ながら証拠に対するアクセス権を認めた。
 これに対し奥田裁判長は、以下の驚くべき理屈によって星野さんの訴えを退けた。
 「本件ビデオテープについて、裁判所職員又は保管委託先の警視庁公安総務課長において、本件ビデオテープが再審請求の審理において、重要な証拠として利用される蓋然性(がいぜんせい、可能性が高いこと)があることを知り、あるいは容易にこれを予見することができた場合には、再審請求人である被控訴人(星野さん)は、その限りにおいて本件ビデオテープを再審請求の審理において利用しうる利益を有するものというべきである」
 そして本件ビデオテープのような映像証拠が重要な証拠となるかどうかについて、裁判所職員・警視庁公安総務課長とも知り得なかったゆえに、「星野さんのアクセス権」は保障されないというものである。

再審無罪の実現へ最高裁で闘う

 (1)再審事件では、新証拠を探すだけではなく、旧証拠も付き合わせながら有罪判決の誤りを指摘していくものである。刑事裁判の主人公は当事者である被告人や再審請求人である。有罪の証拠とされた「旧証拠」を閲覧し利用する権利=アクセス権は、再審請求人の防御権(憲法31条)の中核であるから、当然に保障されなければならない。
 (2)高裁判決が特に不当なのは、保管の責任を負う裁判所や警視庁が「これは将来重要な証拠になる」と予想できなければ、再審請求人にアクセス権は保障されないという理屈である。証拠が将来どのような価値・意味合いをもってくるかは誰にもわからない。当初重要と思わなかった証拠が後々に決定的な証拠となることはけっして珍しいことではない。
 証拠の保管を担当する者は、それが重要と自分が思うかどうかによって保管の程度を変えてよいはずはない。証拠は「すべてが」適切に管理され利用できなければならない。再審請求人の権利が保障されるかどうかが「当該証拠が重要な証拠となる可能性が高いと予測できるか否か」にかかっているという理屈は明らかに破綻している。この理屈は、証拠開示の対象となる証拠の廃棄を推し進める根拠になりかねないものである。
 奥田裁判長の判決は証拠に対するアクセス権という広がりを持つ権利、星野さんの再審無罪を恐れるがあまりの「結論ありき」の判決である。
 私たち弁護団は、再審請求をしていく上で極めて重要な権利である「アクセス権」を獲得するために、最高裁において奥田裁判長の不当判決を覆す決意である。

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▼ビデオ国賠 星野文昭同志がデモ隊のリーダーとして闘った1971年11・14沖縄返還協定批准阻止闘争を報道するテレビニュースを録画した証拠のビデオテープを、東京地裁が違法に警視庁公安部に保管委託し、警視庁公安部がこれを「紛失」したことを弾劾する裁判。2011年4月の提訴以来17回の審理を経て、昨年9月の一審判決は星野同志の証拠へのアクセス権を認めた。

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