福島の小児甲状腺がん2巡目の検査でも25人 原発事故ゆえの多発は明らかだ

週刊『前進』08頁(2702号04面03)(2015/10/19)


福島の小児甲状腺がん2巡目の検査でも25人
 原発事故ゆえの多発は明らかだ


 福島県で小児甲状腺がんおよび疑いが138人と多発している(本紙2697号5面参照)。3・11原発事故から4年半、発症者がさらに激増することは避けがたいという、恐るべき現実が進んでいる。「原発事故の影響とは考えにくい」と言い続ける県当局を徹底弾劾し、子どもたちの命と健康を守りぬこう。

県立医大教授「2巡目で新しく発生」認める

 甲状腺がん・疑いと診断された138人の内訳は、13年3月までの1巡目の検査で113人、14〜15年の2巡目の検査で25人だ。この25人のうち10人は1巡目にはA1判定(結節やのう胞を認めなかった)、13人がA2判定(5㍉以下の結節や20㍉以下ののう胞を認めた)だった。県が「異常なし」と判定した子どもが、それから2〜3年で新たに発症している。
 8月31日の県民健康調査検討委員会で以下の質疑応答があった。日本医科大学の清水一雄名誉教授が「(前回A1判定だった子どもは)見逃しなのか、それとも新しく発生したのか。(前回A1、A2判定だった)23人はほとんど新しく出たと判断するのか」と質問し、福島県立医大の大津留晶教授が「そうですね、(B判定だった)2名を除けば。(A2判定だった13人の)のう胞についても、例えばB判定と迷うようなのう胞ではない。とても小さなのう胞なので」と回答した。
 これまで県立医大は甲状腺がんの多発を「原発事故の影響ではない」とする理由として「チェルノブイリでは事故後4〜5年で甲状腺がんが発生した。福島ではそれより短い期間で見つかっている」と言ってきた。しかし大津留教授はこの2〜3年で新たながんが発生したことを認めた。A1やA2の子どもを「2年後に再検査」として2年間も放置していることの犯罪性は明らかだ。

甲状腺全摘出と転移で壮絶な闘病続ける

 9月25日付の週刊誌FRIDAYが、甲状腺がんにかかった女性の肉声を報じた。福島県中部に住む20歳のAさんだ。
 3・11当時中学3年生だったAさんは「事故から1週間後には、制服を注文するため母と一緒にJR福島駅前にあるデパートに出かけたんです。高校入学をひかえた子どもたちが押しかけ、デパートは超満員。建物の外にまで行列がのび、私たちも30分ほど屋外で待たされました」と語る。当時、福島市内で毎時10㍃シーベルトを記録していた事実も知らされないまま、Aさんはマスクをつけずに外出していた。
 Aさんに異常が見つかったのは翌12年の夏休み。県の甲状腺検査を受けた後、県から「福島県立医大で精密検査を」との通知が届いた。
 「ノドが少しはれていましたが、自分で気づかなかった。県立医大で2回目の精密検査を受けたときに医師から『深刻な状態だ』と告げられ、ガンであることがわかったんです。高校3年の夏休みに手術を受け、甲状腺の右半分と転移していた周囲のリンパ組織を切除しました」
 しかしそれで終わりではなかった。県外の美術系大学に進学したAさんに、健康診断で「血液がおかしい」との結果が出た。「夏休みに帰郷し、県立医大で検査を受けると『ガンが再発している』と言われたんです。治療に専念するため、通い始めたばかりの大学も退学せざるをえませんでした。10月の再手術では、残っていた左半分の甲状腺とリンパ組織を切除。甲状腺は全摘出することになったんです。肺への転移も判明し、術後しばらくはかすれた声しか出ず、キズの痛みをこらえながらリハビリを続けていました」
 今年4月には肺がん治療のためアイソトープ治療も受けた。放射性ヨウ素の入ったカプセルを飲み、転移したがん細胞を破壊する療法だ。
 「カプセルを飲む2週間ほど前から食事制限があり、飲み物は水だけ。カプセルを飲んだ後も3日間の隔離生活を強いられます。強い放射能のため周囲の人が被曝する可能性があるからです。お風呂に入るのも家族で最後。医師からは『トイレの水も2回流すように』と言われました」
 138人の子どもたちはこれほど深刻な症状に見舞われ、日々を生き闘いぬいているのだ。このすさまじい被曝の現実に何の責任も取らない東電や政府を絶対に許すことはできない。

今も山下俊一が甲状腺検査仕切っていた

 県立医大県民健康センターに新たな「秘密会」がつくられていたことも暴かれた。県民健康センター甲状腺専門家会議のもとに設置された「甲状腺検査専門委員会診断基準等検討部会」である。OurplanetTVが県に情報公開を求め開示された資料では、委員22人の名前は黒塗りで隠された。部会の座長は同センターの山下俊一副センター長。今年5月の検討委員会で甲状腺検査の責任者を辞任した県立医大の鈴木眞一教授も参加している。
 同部会には、医大が県の検討委員会に公表していない手術症例などを報告していることもわかった。検討委員会に甲状腺の臨床医が参加しなくなる一方で、同部会で実質的な審議を行っているということだ。
 山下俊一は3・11直後から県放射線健康リスク管理アドバイザーを務め、「年100㍉シーベルトまでは大丈夫」「放射線の影響は実はニコニコ笑ってる人には来ません」という大うそをつき、11年5月の県民健康管理調査検討委員会の発足時から座長を務めた。しかし12年10月、検討委員会の会合の前に毎回「秘密会」を行い、検討委員会のシナリオまで決めていたことが暴かれ、県民の大きな怒りで座長辞任に追い込まれた。
 この山下が相変わらず甲状腺検査を実質的に仕切り、原発事故の影響を否定する大陰謀を続けていたのだ。

診療所を支え子どもの命と健康守ろう!

 これほど甲状腺がんが多発しながら、原発事故の影響を否定し続けるのは、被曝の危険性を絶対に認めず押し隠し、帰還強制や避難者切り捨てを推し進めるためだ。帰還強制・避難者切り捨てを許さず、子どもの命と健康を守る大きな力が必要だ。ふくしま共同診療所の活動を支えよう。再稼働絶対阻止! 11・1集会に職場の仲間とともに参加し、安倍政権を倒そう。
(里中亜樹)
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