動労総連合を建設・拡大しJR体制打倒へ JR北が80列車削減計画 ローカル線廃止との闘いを

週刊『前進』06頁(2704号02面01)(2015/11/02)


動労総連合を建設・拡大しJR体制打倒へ
 JR北が80列車削減計画
 ローカル線廃止との闘いを




 国鉄分割・民営化体制=JR体制はもはや完全に破産した。その象徴がJR北海道だ。JR北海道は、安全が大崩壊しているだけでなく、ほとんどの線区を維持できない状態に陥っている。9月30日、同社はローカル線の普通列車80本を来年3月のダイヤ改定時に廃止すると発表した。同社はまた、9駅を廃止し、別の9駅を無人化する方針を打ち出している。ローカル線の全面的な切り捨てが、JR北海道を先頭に激しい勢いで始まったのだ。

「選択と集中」を唱えて線区も駅も次々と廃止

 戦争法を強行した安倍政権は、朝鮮半島を始めとする東アジアでの戦争情勢を一層激化させるとともに、破綻したアベノミクスにしがみつき、民営化と外注化・総非正規職化の攻撃にのめりこんでいる。安倍は「1億総活躍国民会議」のメンバーに日本創成会議座長の増田寛也元総務相を起用した。日本創成会議は「896自治体が消滅する」として、生き延びられない都市は早期に切り捨てるべきだとする提言を出した団体だ。安倍はTPP(環太平洋経済連携協定)の「大筋合意」とあいまって、「選択と集中」の名のもとに徹底した地方破壊に乗り出そうとしている。それを最先頭で実行しているのがJR北海道だ。
 相次ぐ重大事故によって突き出された安全の大崩壊と、線路の検査データの組織的改ざんの発覚を受け、「(JR北海道の)再生に向けて、安全対策等の実行に関して監視し、助言を行う」という名目で「JR北海道再生推進会議」が設置された。同会議は6月26日、ローカル線の放棄をあからさまに唱える提言をJR北海道に提出した。その提言は、国鉄分割・民営化に際して赤字ローカル線廃止の基準とされた「輸送密度2千人未満」を今のJR北海道に当てはめれば、全線区の6割以上がそれに該当するとし、「鉄道特性を発揮できない線区の廃止」など「聖域のない検討を行うことが必要」と述べている。
 これを受けてJR北海道は8月上旬、留萌(るもい)線の留萌―増毛(ましけ)間を16年秋に廃止すると沿線自治体に通告した。
 さらにJR北海道は、駅の廃止、無人化を順次打ち出した。現在までにJRが公表している廃止対象は、函館線の鷲ノ巣(わしのす)駅、室蘭線の小幌(こぼろ)駅、根室線の花咲(はなさき)駅、石北線の金華(かねはな)、上白滝(かみしらたき)、旧白滝(きゅうしらたき)、下白滝(しもしらたき)駅、石勝線の十三里(とみさと)、東追分(ひがしおいわけ)駅の計9駅だ。
 無人化されるのは函館線の上幌向(かみほろむい)と奈井江(ないえ)駅、室蘭線の鷲別(わしべつ)駅、根室線の赤平(あかびら)と芦別(あしべつ)駅、石北線の留辺蘂(るべしべ)駅、美幌(びほろ)駅、石勝線支線(通称夕張線)の清水沢(しみずさわ)駅、宗谷線の美深(びふか)駅の9駅だ。上幌向駅と清水沢駅は10月1日に無人化され、鷲別駅は11月1日に無人化される予定で、残りの6駅は来年3月のダイ改時に無人化される。
 これに加えて9月30日、JR北海道は来年3月のダイ改に際して、平均利用人数が20人以下の列車を全廃すると発表した。列車本数で約80本、ローカル線普通列車の約15%をなくす大幅削減だ。
 JR北海道のローカル線普通列車には、主に「キハ40形」と言われるディーゼル車が使われている。これは製造から33〜39年が経過した老朽車両になっている。他方でJR北海道には新型車両を大量に購入する資力はない。劣化の激しい10両を廃車にし、残る車両だけで列車を運行しようとすれば、80本の減便は避けられないとJR北海道は言う。
 だが、老朽車両を取り替えることもできないJR北海道の現実こそ、国鉄分割・民営化の破産を示して余りある。公共交通としてのローカル線は資本の論理では維持できない。国鉄分割・民営化は当初から暴力的な地方切り捨て政策だったが、その本質はいよいよむき出しの形で現れている。
 災害で不通となった日高線の復旧を拒むJR北海道が次に狙っているのは、石勝線支線(夕張線)と札沼(さっしょう)線の浦臼(うらうす)―新十津川(しんとつかわ)駅間の廃止だと言われている。

北海道新幹線の開業で年間52億円もの赤字増

 さらに衝撃的な事態が明らかになった。JR北海道は来年3月に開業される北海道新幹線の16年度の収支を、約52億円の赤字と見込んでいることを明らかにした。16年度から18年度までの3年間の赤字額は、150億円に達するという。
 国鉄分割・民営化以降に新規開通した整備新幹線で、それを運行するJRが赤字になった例は今までにない。なぜなら、JRに赤字を背負わせない仕組みが、政治的につくられているからだ。整備新幹線を建設するのは鉄道運輸機構で、建設費は国と沿線自治体とJRが負担するが、JRの負担は新幹線運行による収益の範囲内とされている。北海道新幹線も同じ枠組みで建設された。
 しかし、すでに老朽化が進んでいる青函トンネルの維持費が重しとなって、JR北海道の新幹線運行収益は赤字に陥る。これも、国鉄分割・民営化の枠組みが崩壊していることの現れだ。
 こうした中で、JR北海道は、すでに極限まで進んでいる外注化・非正規職化をさらに推し進める以外にない。だが、それは一層の安全破壊をもたらす。
 また、北海道新幹線の開業に伴い、並行する江差線の五稜郭―木古内(きこない)間は第三セクターの「道南いさりび鉄道」に移管されるが、その運賃は従来の約3割増になる。JRに残される函館線の函館―木古内間の駅と道南いさりび鉄道内の駅の間の運賃は、約50%増にもなる。
 国鉄分割・民営化が総破綻している矛盾の一切を、安倍政権とJR資本は労働者と地域住民に押し付けているのだ。

JR西日本も三江線の廃止を公然と打ち出す

 ローカル線廃止に突き進んでいるのはJR北海道だけではない。10月上旬、JR西日本は広島県三次(みよし)市と島根県江津(ごうつ)市を結ぶ三江(さんこう)線の廃止を検討していると広島・島根両県などの沿線自治体に通告した。17年9月にも同線を廃止するというのがJR西日本の狙いだ。
 災害で不通となった路線の復旧を拒んで廃線に持ち込むやり方にはいくつか例があるが、本州JRが公然と廃線を打ち出したことはかつてない。安倍とJR資本の地方破壊の攻撃は、これまでの比ではないものにエスカレートしている。
 だが、動労千葉のローカル線切り捨て反対の闘いや、動労水戸の被曝労働拒否・常磐線全線開通阻止の闘いは、階級的労働組合が軸に座れば新自由主義に対する地域の怒りを糾合し、反撃の道をこじ開けられることを示している。11・1労働者集会の成功をばねにさらに動労総連合の建設を推し進め、ストライキの火の手をあげてJR体制打倒へ突き進もう。

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