安全崩壊の危機叫ぶJR東 「経営構想Ⅴ・重点取組み」で外注化の一層の拡大狙う

週刊『前進』06頁(2706号02面03)(2015/11/16)


安全崩壊の危機叫ぶJR東
 「経営構想Ⅴ・重点取組み」で外注化の一層の拡大狙う

(写真 4月12日の秋葉原駅付近での支柱倒壊事故。山手線電車には抑止がかけられ、かろうじて衝突を免れた)


 JR東日本は10月28日、「グループ経営構想Ⅴ『今後の重点取組み事項』の更新等について」と題する文書を公表した。12年10月に「グループ経営構想Ⅴ」を打ち出したJR東日本は、以降、毎年10月末に、その後1年間の重点取り組み事項を示す文書を策定してきた。その中でも今回出された文書は、安全崩壊への危機感を資本の側から絶叫しているという点で異例のものだ。

支柱倒壊事故で破産つき出され

 JR東日本は今年4~9月、年度上半期としては過去最高の利益を上げた。だが、その足元で鉄道事業が崩壊しかねない重大な危機を突きつけられている。
 JRはその危機を、さらに安全を解体する外注化・非正規職化の拡大によって突破しようとしている。第2の分割・民営化攻撃との決戦はいよいよ煮詰まった。動労総連合を全国に、とりわけ東京に建設することが、この攻防に勝利する鍵だ。
 今年4月12日、秋葉原駅付近で起きた支柱の倒壊事故は、第2の尼崎事故になりかねない重大事故だった。JRは、自らが進めた外注化の結果を、大事故として突きつけられたのだ。
 「グループ経営構想Ⅴ『今後の重点取組み事項』の更新等について」と題する文書は、「2015年4月に山手線神田~秋葉原間で電化柱が倒れ線路を支障する重大インシデントを発生させたことを真摯(しんし)に受け止め、再発防止策を徹底し、安全上の弱点を克服すべく取り組みます」と言う。そして、山手線支柱倒壊事故に加えて、4月29日の東北新幹線・郡山駅構内での架線切断事故、8月4日の京浜東北・根岸線の横浜―桜木町間での架線切断事故、8月9日の東北新幹線の窓ガラス破損事故を「2015年4月以降に続発した主な事象」に挙げ、「安全・安定輸送のレベルアップ」だの「安全文化を根付かせる」だのと唱えている。
 また、14年2月23日に京浜東北線・川崎駅構内で起きた回送電車と作業用車両との衝突事故にも言及して、「事故を教訓とした事故防止策(ソフト・ハード面)の徹底」を図ると言う。
 しかし、これらの重大事故を「インシデント」だの「事象」だのと言いなしていること自体がペテンだ。事故を事故と認めないところから、抜本的な安全対策など出てくるはずがない。
 同文書はまた、列車の運休や遅延などの輸送混乱が続発していることへの危機感をあらわにしている。文書は「上野東京ラインの関係線区(東海道・宇都宮・高崎・常磐線)での速やかな折返し運転による輸送障害時の影響拡大防止」を図ると言う。上野東京ラインの開通が輸送混乱を一層増大させた事実を、JRも認めざるをえないのだ。
 だが、JRは上野東京ラインの運行をあくまで前提にした上で「速やかな折り返し運転」を言うだけだ。他方で駅の全面外注化を強行し、運転にかかわる駅の機能を奪っているのだから、これは輸送混乱に拍車をかけるものでしかない。
 同文書はさらに、技術継承が進んでいない中で、労働者の大量退職期を迎えていることへのあせりを表に出している。

全業務外注化の意図をあらわに

 文書は「急速な世代交代の進展など、社内外の両面で『変化点』に直面しており、教育・訓練や業務内容を見直し、課題を主体的に解決しなければなりません」と言う。
 だが、世代間の技術継承が断たれた根本的な原因も、外注化・非正規職化にある。外注会社の非正規労働者がまともな教育・訓練も受けないままに作業を受け持たされ、事故が起きたらその責任だけは押し付けられる現実は、外注化によってもたらされたのだ。
 同文書は、「パートナー会社との協働によるグループ全体での技術力向上」「鉄道工事マネジメント強化の推進体制整備、人事交流の拡大・深度化、リスク情報の共有化」「急激な世代交代を見据えた、OJT(職場内訓練)や企業間交流などによる技術・技能継承の確実な推進」を「安全対策」として強調する。これは、外注化をさらに拡大するという意味だ。
 「グループ全体での技術力向上」とか「人事交流の拡大・深度化」という言葉に明らかなように、JR資本が狙っているのはJR本体の労働者に外注会社への出向を強い、やがては転籍させることだ。事実、12年10月に強行された検修・構内部門の外注化により強制出向を強いられた労働者のほとんどに、今年10月、出向延長が発令された。それにとどまらず、JRは車掌や運転士を含む全業務を外注化しようとしているのだ。
 しかも、「グループ全体」が強調されればされるほど、JRが外注先の労働者を直接に指揮命令するなどの偽装請負が、なし崩し的に拡大されていくことも明らかだ。
 結局JRは、自らの責任は棚に上げて「安全」を叫び立てることで、事故の全責任を現場労働者に押し付けているのだ。
 さらに、JRが安全対策の切り札であるかのように「ITの活用」を押し出していることも見過ごせない。労働者の熟練を解体してのIT依存は安全を根本的に破壊する。
 それを示したのが、京浜東北・根岸線の横浜―桜木町間での架線切断事故だ。原則停車禁止になっているエアセクション区間に停車したことで架線が溶断したこの事故は、「運転士はATC(自動列車制御装置)に従っていればいい」として、エアセクションのある場所も、エアセクションで停まってしまった場合にとるべき措置も、運転士に教えていなかったJRの施策が引き起こしたのだ。
 さらに、JRが計画するATACSやCBCTと呼ばれる新たな列車制御システムの導入は、「1閉塞区間1列車」の原則を解体する危険極まりないものだ。
 JR東日本はすでに破産が明らかになった「海外高速鉄道プロジェクトへの参画」を相変わらず掲げている。また、2020年東京オリンピックに向けた品川・田町地区開発や、新宿、渋谷、横浜駅などの大規模駅開発も打ち出している。
 その一方で進むのが、津波被災線区を始めとしたローカル線の切り捨てだ。他方で膨大なカネをつぎ込んで常磐線の全線開通を強行しつつある。

動労総連合の旗を今こそ東京に

 だが、経営構想Ⅴは根本的に破産した。だからこそJRは、外注化・非正規職化の攻撃にさらに激しくのめりこんでくる。動労千葉・動労水戸―動労総連合はこれと対決し、来春3月のダイヤ改定と16春闘を見据えた決戦に突入した。これに続く動労総連合を東京を始めさらに全国に建設し拡大しよう。パククネ打倒のゼネストに立った韓国・民主労総と固く連帯し、日本におけるゼネスト決起の突破口をJR体制打倒の闘いの中から切り開こう。

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