焦点 年金積立金運用で8兆円の損失 安倍は経済・財政破滅させる

週刊『前進』06頁(2711号05面02)(2015/12/21)


焦点
 年金積立金運用で8兆円の損失
 安倍は経済・財政破滅させる


 公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が11月30日、7〜9月期の運用成績を発表した。損失額は7兆8899億円で四半期としては過去最大となった。1千万人を超える人の基礎年金(国民年金)1年分(満額支給)が消え失せたことになる。
●既得権益の岩盤壊すと安倍が指示
 その内訳は、国内株の損失額が4兆3154億円、海外株の損失も3兆6552億円で、合わせると8兆円に迫る。GPIFは14年10月末の運用改革で、資産に占める国内外の株式比率をそれぞれ25%に倍増させる方針を決め、株式投資を増やしてきた。比率を1%上げれば1兆円超の資金が株式市場に流れ込むと、年金積立金を湯水のようにつぎ込んで株価をつり上げてきたところに、6月末以降の上海株の暴落と今夏の世界同時株暴落に直撃されたのである。
 その直接の責任は首相の安倍晋三にある。安倍は、14年1月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、日本の首相として初めて基調講演を行った。その中で安倍は、自らが「ドリルの刃」となって既得権益の岩盤を破壊し、「アベノミクス」の「第3の矢」である規制緩和を早期に実施する方針を表明した。そして、総額130兆円超にのぼる公的年金積立金の資産運用の自由化について、国内外株、国内外債などの運用比率を見直して、「GPIFは成長につながる投資を行う」と明言し、厚労相に前倒しで運用比率を見直すよう指示していた。
 安倍は、リスクが高まっているとの批判に対して、今年2月の国会答弁では、「しっかりと年金の運用においては上がっている」と強気の構えを見せつつも、株式運用自体のリスクについては明言を避けた。「年金を約束通り支払うため運用益を出す必要がある」との答弁は危険なペテン以外のなにものでもなかった。
●海外の低格付け債への運用も開始
 今回の8兆円もの損失について、官房長官の菅義偉は、「短期的な収益の振れ幅は大きくなっているが、長期的な観点ではリスクは少なくなっている」「長期的に安全で効率的に運用していくことが大事だ」と居直った。
 しかし、やっていることはまったく逆である。かつてない巨大な損失が発生したのに、GPIFはさらに10月から「ジャンク債」と呼ばれる海外の低格付け債での運用を開始した。これは、格付け会社の評価が「ダブルB」以下のハイリスク・ハイリターンの国債や社債のことで、財政破綻に瀕(ひん)したギリシャ国債やブラジル国債がそれに該当する。この「投機的水準」「投資不適格」と評価される海外債を新たに購入するために、GPIFはゴールドマン・サックスなどの運用委託先を従来の2倍超も選んでいる。
 米連邦準備制度理事会(FRB)は12月16日、連邦公開市場委員会(FOMC)で、金融危機後の7年にわたる実質的なゼロ金利政策を解除し、17日から9年半ぶりに利上げを実施することを決めた。新興国に流れていた投資資金の引き揚げはさらに進む。海外の低格付け債での運用損失リスクは株でのそれの比ではない。
 また政府答弁書でも、リーマン・ショックの年の損失を現在のGPIF運用比率に当てはめた場合、損失額は当時の3倍近い約26兆円になるとしている。安倍政権による年金積立金のリスク運用は、黒田日銀の国債大量買い取りとともに、日帝経済と財政の破滅への道そのものである。
●法改正で損失隠し狙う安倍打倒を
 さらに許しがたいことに、GPIFは、これまで委託でしかできなかった株への直接投資を解禁しようとしている。厚生労働省は12月8日の社会保障審議会年金部会でGPIFの組織と運用を改革する議論を始めた。16年1月にも報告書をまとめ、通常国会に法案の提出を目指すとしている。海外では、米カリフォルニア州職員退職年金基金や韓国の国民年金公団などが直接、株に投資している。委託でなく自前で運用するようになれば損失を隠すこともできる。7月に発覚した東芝の粉飾決算問題で明らかだ。その付けはすべて労働者階級人民に回される。
 年金強奪攻撃に対し、韓国を始め全世界で労働組合がゼネストで立ち向かっている。国際連帯を貫く階級的労働運動を推進し、安倍を打倒しよう。

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