スキーバス事故 外注化・非正規化が元凶だ 労働者を犠牲に安売り競争

週刊『前進』04頁(2717号01面02)(2016/01/25)


スキーバス事故
 外注化・非正規化が元凶だ
 労働者を犠牲に安売り競争


 1月15日未明、長野県軽井沢町の国道18号線で大型バスが道路を飛び出し転落・横転し、運転手2人を始め15人が死亡、26人が負傷する大事故が起きた。「激安」を最大の売りにしたスキーツアーの貸切バスだった。
 「キースツアー」が企画し「イーエスピー」がバス運行、さらにその間に仲介業者が入る、典型的な外注・委託構造がもたらした過酷運転事故だ。格安バス事故が繰り返され、誰もが「明日は我が身」と感じている。
 イーエスピーの地元、多摩地区のバス、トラック運転手、全国の輸送労働者から「黙っていたら会社に殺される。声を上げよう」と怒りが湧き起こっている。
■規制緩和が始まり
 貸し切りバス事業は2000年に規制緩和され業者が急増した。当時は約2800社だったが、今では4500社にのぼる。当然にも各社が競争に走り、ネットも使った格安合戦が続き、安全は切り捨てられ、運転手に低賃金、過酷な長時間労働、無権利が集中している。09年に東名高速でJRバス炎上事故、12年に関越道で7人死亡の大事故が起き規制が「強化」されたが名ばかりで、賃金、労働条件はひどくなるばかりだった。バス会社は事故を口実に、労務管理を強化し締め付けたのだ。
 今回のツアーでは、国の定めた最低基準は27万円だが、企画会社が19万円に値切ってバス会社と委託契約を行った。両社の間では日常的なことで、違法の認識すらない。委託の重層構造の中では「値切り」「ピンはね」は当たり前なのだ。
 事故を起こしたイーエスピーはもともと中古車を扱う会社だった。それが警備会社をつくり、さらにバス運行の経験も管理のノウハウもなしに、14年にバス事業を始めた。さっそく運転手に健康診断を受けさせていないことが発覚し国土交通省の行政指導が入った。事故当日は、バス1台営業停止処分の手続き日だった。国交省は行政処分だけでなく特別監査に入ることになった。野放しにした国交省とブラックなバス会社の、罪のなすり付け合い、茶番劇だ。
■運転手に責任はない
 運転中に死亡したTさん(65)には、なんら責任はない。国交省と会社にこそ全責任がある。Tさんは昨年12月にイーエスピーに契約社員として入社した以前はマイクロバス専門で、大型バスは今回で4度目、高速道路以外は初心者だ。会社は営業運転させてはならない労働者に大型バスを運転させたのだ。
 大型運転手はバスに限らず、高齢、低賃金、長時間・重労働だ。離職率も高く、バス運転手は1年以内に29%、4年以内に48%が辞める。それほど過酷で、きつい労務管理なのだ。運転手不足の原因もここにある。運転職場は、新自由主義が労働者を食い殺して肥え太っている最前線だ。
■闘いなくして安全なし
 福島第一原発の爆発、韓国セウォル号の沈没、尼崎事故をはじめJRでの重大事故多発、食品、マンション、自動車など社会のすべての安全が崩されている。破壊しているのは政府と資本だ。そしてついには、侵略戦争にまでつき進んでいる。
 幾多の労働者の尊い命が会社の安全無視で奪われた。これに報いるには、労働者が団結した力で資本と闘い、資本に安全確保を強制する以外に道はない。労働者には「命までは売ってない」「命まで取られてたまるか」と声を上げる力があり、この闘いはまったくの正義だ。
 「闘いなくして安全なし」が世界共通の労働者の原則だ。この原則を守り、反合理化・運転保安確立を掲げ、国鉄分割・民営化とその後の「外注化・非正規職化」と闘ってきた動労千葉・動労総連合に続こう。2・14国鉄集会に総結集しよう。

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