インド ホンダ工場でスト 暴行に怒り2千人座り込む

週刊『前進』02頁(2742号02面02)(2016/04/21)


インド
 ホンダ工場でスト
 暴行に怒り2千人座り込む

(写真 「暴力をふるった管理職を処分しろ!」工場内に座り込んだ2000人の労働者たち【2月16日】)

警察とヤクザが襲いかかる

 2月16日、インドのデリー郊外、ラジャスタン州にある本田技研工業100%出資の子会社ホンダ・モーターサイクル・アンド・スクーター・インディア(HMSI)のタプカラ工場で、日勤の労働者2千人が工場内に座り込むストライキを敢行した。発端は、塗装部門で働く契約労働者が残業を拒否したところ、上司の上級エンジニアから暴行を受けたことにある。この労働者は数日間連続して残業を命じられ体調がすぐれなかった。これを目撃した同僚の労働者たちは怒り、生産をストップさせ、全員が抗議の座り込みを始めた。
 管理職のこうした蛮行は日常茶飯事で、労働者の我慢は限界に達していたのだ。労働者たちは、非暴力的な座り込みで団体交渉を求め、要求を実現しようとしていた。
 しかし、会社と親密につながっている州警察とヤクザが突然乱入し、激烈な暴力的弾圧を行った。労働者は催涙ガスを浴び、こん棒で乱打されて追い回され、60〜70人が重傷を負った。5人のリーダーを含む44人は、暴動、略奪、殺人までもの容疑をデッチあげられ拘留されたが、3月に釈放されている。

労働組合結成に不当な妨害

 タプカラ工場の労働者たちは、正規・非正規をこえた労働組合の結成を決意し、昨年8月に代表の227人の署名で登録の申請をした。だが会社はあらゆる手段を用いて妨害を試み、組合委員長を含む活動家の正規職5人を解雇し、4人を停職処分にした。さらに2月までの6カ月で、組合結成に積極的であった数百人の契約労働者を次々と契約解除した。
 会社は生産力を維持するために、労働者に対してさらなる労働強化を強行したのである。16日の抗議行動の背景には、組合結成への妨害、不当解雇、労働強化などに対する労働者の積み重なった憤りがあった。彼らは、暴力をふるった管理職の処分、解雇・停職処分された9人の正規労働者の処分撤回・職場復帰、400人を超える非正規労働者の再雇用を要求に掲げた。
 HMSIの労働者は正規職が466人しかおらず、残りの3千人以上は非正規の契約労働者だ。会社側は「正社員への登用はある」としているが、そのためには会社の意に背かずに8年間は働かなければならない。契約社員として雇用されて3年後に昇格テストを受ける資格が得られ、テストと面接の両方に合格したごく少数の者が「カジュアルスタッフ」と呼ばれる契約社員になり、さらに2年間働いて十分な成果が認められた者だけが「訓練生」として3年間の雇用が保障される。が、そのあとにまた6カ月間の試用期間を経てようやく正社員として登用されるシステムだ。今日までに「カジュアルスタッフ」に昇格した者は100人にも満たず、このシステムで正社員になった労働者は一人もいない。契約労働者の賃金は正規労働者の50〜60%に抑えられている。

モディ政権の労働法制改悪

 2014年5月に発足したモディ政権は、労働法制の改革を政策の一つに掲げ、企業が雇用調整を容易にする解雇規制や人材派遣の緩和などの労働法「改正案」を議会に提出した。外資系企業が積極的に誘致され、日系企業も多く進出するラジャスタン州ではすでに州政府議会で法案が可決され、さらに横暴な経営を可能とした。
 また、「モディノミクス」と呼ばれる経済改革で規制緩和やインフラ整備を進めて外資を導入しやすくし、14年9月に来日した際にモディ首相は、「インドは低コストで質の高い労働力がある」と企業誘致を呼びかけた。「メーク・イン・インディア(インドでものづくりを)」というモディのスローガンで、「デリー・ムンバイ産業大動脈」が築かれた。

弾圧に屈せず抗議集会・デモ

 この工業地帯には、同様に過酷な労働状況で働く労働者が数多くいる。タプカラ工場での暴力的な攻撃は、労働者の要求に対しては徹底して弾圧するという、資本・政府・警察一体の「見せしめ行為」だった。
 しかし、スト弾圧の3日後の2月19日、HMSIの労働者と、支援に駆けつけたマルチ・スズキやダイキンなど数多くの工場から加わった労働者3千人が、グルガオンのタウ・デビラル・スタジアムで抗議集会を開き、インドのホンダ本部まで8㌔をデモ行進した。
 今、世界中で労働者階級が決起している。卑劣で横暴な攻撃に屈することなく、労働者の権利を奪い返す闘いは燎原(りょうげん)の火のごとく広がっている。
(高村涼子)
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