地方線全廃狙うJR北 新幹線開業で赤字が拡大 安全崩壊のJR体制倒そう

週刊『前進』04頁(2743号02面01)(2016/04/25)


地方線全廃狙うJR北
 新幹線開業で赤字が拡大
 安全崩壊のJR体制倒そう


 熊本大地震は、国鉄分割・民営化に始まる新自由主義の攻撃が自治体と地方を破壊した結果、被害をさらに拡大させた階級的災害だ。震災で九州新幹線の回送列車が脱線し、新幹線は全線復旧のめどがまったく立たない状態だ。九州新幹線が全線開業したのは東日本大震災の翌日の2011年3月12日だが、JR九州はその後も3・11を教訓にせず、新幹線の安全対策を怠ってきた。
 JR各社が強行する外注化・非正規職化の攻撃は安全と雇用の徹底した破壊をもたらしている。これと対決し、CTS(千葉鉄道サービス)の就業規則改悪を阻止した動労千葉の闘いは、外注化粉砕・非正規職撤廃の展望をこじ開けた。
 これに続き、東京を始め全国で動労総連合建設をさらに進めよう。1047名解雇撤回・JR復帰の新署名と動労千葉物販を全職場・全地域で推進し、国鉄闘争全国運動の6・5国鉄集会を軸に4~7月を闘いぬいて、7月選挙決戦に上り詰めよう。動労総連合・九州の呼びかけに応え、熊本大地震被災地の救援に取り組もう。

青函トンネル内で新幹線が緊急停止

 JR九州と並んで、JR北海道の惨状はJR体制の崩壊を示している。
 3月26日のJRダイヤ改定で北海道新幹線が開業した。これは、JR北海道の安全崩壊と経営破綻をさらに深刻なものにし、ローカル線の切り捨てに拍車をかける。それだけでなく、JR北海道の経営中枢に幹部を送り込んでいるJR東日本の危機に直結する。
 北海道新幹線開業直後の4月1日、新函館北斗発東京行きの「はやぶさ22号」が青函トンネル内で緊急停止していたことが明らかになった。青函トンネル内は貨物列車も通るため、新幹線用レールと在来線用レール、両者の共用レールが3本敷かれる「三線軌条」と呼ばれる特殊な構造になっている。その新幹線用レールと在来線用レールの間に金属片が落ちて在来線用レールに触れたため、新幹線の運行を制御するATC(自動列車制御装置)は付近を貨物列車が走行していると判断して停止信号を送り、新幹線は急停止した。
 JR北海道社長の島田修は、この事故について「乗客の安全に関わる問題ではない。同種の事象は今後も起こり得る」と言い放った。対策がないことを自認しつつ、開き直ったのだ。貨物列車と新幹線が線路を共用する区間では、何が起きるかは予測がつかない。「三線軌条」区間はポイントなどの機器も複雑で、より綿密な保守・点検が必要だ。しかし、夜間には貨物列車が通るため、北海道新幹線の保守に充てられる時間は、他の新幹線より短い。今回の事故は、青函トンネルに新幹線を通すこと自体の無謀性を突き出したのだ。

札幌周辺の線区も年間27億の大赤字

 JR北海道は、北海道新幹線の収益は16年度から18年度までの平均で1年あたり48億円もの赤字になると公表した。分割・民営化後に開業した整備新幹線が赤字に陥るのは、これが初めてだ。
 JR北海道が3月28日に発表した「16年度事業運営の最重点事項」は、同社の全面破綻を示している。そこでは、16年度の営業損益は465億円の赤字となるとされている。経営安定基金の運用益も日銀のマイナス金利政策の中で減少するため、大幅な営業損失を埋められない。19年度以降は資金繰りのめどさえ立たないと、この文書は認めている。JR北海道は文字通りの破産に直面しているのだ。
 しかしJR北海道は、その危機を逆手にとり、「事業範囲の見直し」をしなければ「企業としての事業の継続ができなくなる」と叫んでいる。ローカル線の全面廃止を認めろという労働者・住民への恫喝だ。だがそれは、国鉄分割・民営化そのものが全面破綻したということではないか。
 昨年6月、JR北海道再生推進会議は、ローカル線の大幅廃止を促す提言を出した。同会議は13年9月に発覚したJR北海道の線路保守データの会社ぐるみの改竄(かいざん)を受けて設置され、北海道知事の高橋はるみや北海道商工会議所連合会会頭らをメンバーとする。同会議の提言は、国鉄分割・民営化に際して赤字ローカル線の廃止基準とされた「輸送密度2千人未満」を今のJR北海道に当てはめると、鉄道距離で6割の線区がそれに該当すると言う(図参照)。輸送密度とは、鉄道距離1㌔当たりの1日の平均輸送人員のことだ。
 国鉄分割・民営化に際し、それまで北海道内に敷かれていた線区の3分の1が廃止された。その時は廃止を免れたローカル線の大半が、30年後に大赤字に陥っているという事実は、国鉄分割・民営化がもたらした地方の破壊・衰退のすさまじさを示している。
 JR北海道は昨年11月、北海道庁が設置した地域公共交通検討会議に、さらに衝撃的なデータを提出した。それによれば、JR北海道で営業損益が黒字の線区はひとつもなく、札幌周辺の線区でも年間約27億円の赤字だという。今や在来線のすべてが廃止対象に挙げられているのだ。

「上下分離」を唱え民営化の破産自認

 3月ダイ改で江差線の五稜郭―木古内(きこない)間は第三セクターの「道南いさりび鉄道」に移管され、運賃は大幅に引き上げられた。また、このダイ改で北海道内のローカル線の列車79本が廃止された。これにより、高齢者が病院に通えなくなるなどの深刻な影響が出ている。さらにJR北海道は、来年のダイ改で特急列車も削減すると公表した。
 4月に入ってJR北海道は、留萌(るもい)線の留萌―増毛(ましけ)間の16年12月廃止を、地元自治体の増毛町と留萌市にのませている。雪崩のおそれがあるとして運転中止中の同区間は、JR北海道がバス代行運転をしているが、留萌線の廃止とは鉄道だけでなくバスの代行運転からもJRは手を引くということだ。
 JR北海道はローカル線の全廃に本格的に踏み込もうとしている。これは労働者には大量解雇を、地元住民には根底的な生活破壊をもたらす。
 3月ダイ改ではまた、北海道内の8駅が廃止され、2駅が無人化された。4月末にはさらに4駅が無人化される予定だ。この過程で重大な事態が起きた。JR北海道は「秘境駅」と言われる室蘭本線・小幌(こぼろ)駅の廃止をもくろんだが、地元の豊浦町は観光資源になるとして廃止に抵抗した。結果として小幌駅の業務は豊浦町が請け負うことになり、駅廃止は免れた。だが、町に委託される業務の中には、警報機や遮断機の点検など列車の安全運行にかかわる業務が含まれている。これまでに例がない自治体への安全業務の委託が、なし崩し的に行われたのだ。これは、全JRで駅の外注化をさらに促進するものになる。
 JR北海道はまた、高波の被害を受けて不通となっている日高線の一部について、復旧工事の財源がないとして復旧を拒み続けている。そして、地元自治体との協議で「上下分離が復旧の条件」と言い始めた。上下分離とは、線路や車両などの設備は自治体が保有し、その保守・整備も自治体が税金で行い、JRは列車の運行だけにかかわるということだ。税金を投入しなければ鉄道が成り立たないのなら、分割・民営化そのものが間違っていたのだ。
 この中で動労総連合・北海道が結成されようとしていることは決定的だ。分割・民営化が大破産した今こそ、JR体制の中枢である東京に動労総連合を打ち立てよう。
6・5国鉄集会の成功をかちとり、反合・運転保安闘争路線を貫いてJR体制を打ち倒そう。

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経営安定基金 鉄道事業が赤字となることが避けられないJR北海道、JR四国、JR九州の3社は、国から交付された経営安定基金の運用益で赤字を穴埋めする枠組みのもとに発足した。JR北海道の場合、基金は8017億円。

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