熊本大震災に全国の救援を集中しよう 動労総連合・九州の被災地支援アピール

週刊『前進』04頁(2743号03面01)(2016/04/25)


熊本大震災に全国の救援を集中しよう
 動労総連合・九州の被災地支援アピール

(写真 熊本県南阿蘇村の公園で自衛隊が物資を運び出した後に離陸する米軍の新型輸送機オスプレイ。朝鮮戦争発動のための日米共同軍事演習だ【4月18日】)


 4月14日、熊本県益城町(ましきまち)や熊本市を震度7、16日には、マグニチュード7・3(震度6強)の本震が熊本県を襲い、これと連動した地震が阿蘇地方や大分でも起こり、土砂崩れや家屋倒壊などの被害は福岡、佐賀県まで広がっています。
 熊本城の石垣の崩落や阿蘇神社の倒壊、阿蘇大橋の崩落、阿蘇山の噴火、宇土市役所の全壊に示されるように、いたるところで家屋が倒壊し、道路が寸断され、大地には亀裂が走っています。熊本に通じるJR、九州自動車道、熊本空港や市電など、主要交通網は使用不能状態になり、被害の大きかった益城町や熊本市、阿蘇地方を中心に、死者は43名を超え、水道、ガス、電気も広範囲に止まったままです。避難所に逃れた住民は、10万人を超え、さらなる地震の拡大におののきながら避難所の車の中で眠れぬ夜をすごしています。
 私たち動労総連合・九州は、亡くなった方々への冥福を心から祈るとともに、「熊本大震災現地救援本部」を設置し、17日に組合員を現地派遣し、仮救援事務所を置いて被災者救援活動を開始しました。

 全国の仲間、労働組合、労働者・市民の皆さん。
 救援カンパ、支援物資を早急に送ってください。熊本現地では、避難所等で水、食料等の配給が行われていますが、決定的に不足しています。水とポリタンク、レトルトご飯やカップ麺などの非常食、携帯コンロ、単1電池と懐中電灯、トイレットペーパー、毛布、タオルなどが必要です。
 すでに住民独自の炊き出し支援やボランティアの動きが始まっています。動労総連合・九州もいち早く救援活動を開始しており、この活動へのご協力をお願いします。

(1)新自由主義の「資本家救済=地方切り捨て」がもたらした人災

 今回の「熊本大地震」は、改めて地震災害の恐ろしさを示しました。私たちは、今回の大震災を「自然災害」とのみ捉えることはできません。国鉄分割・民営化に始まる30年余の新自由主義政策、その積もりに積もった矛盾、特に、歴代政権の「資本家優遇・救済=地方切り捨て政策」によって、より巨大化した「人災だ」と考えます。
 18日現在、43名の死者、10万人を超える避難者、九州新幹線脱線、九州自動車道、熊本市民病院や宇土市役所の崩壊が報道されていますが、特に、熊本市民病院の天井崩壊、崩壊寸前の宇土市役所の事態は重大です。
 安倍政権をはじめとした歴代政権は、市場原理に基づく競争社会である新自由主義の政策を推進し、そのもとで1%の資本家ばかりを優遇・救済する政策を実行する一方、99%の労働者民衆の健康と生活に関わる地方や福祉の切り捨て政策を続けてきました。その結果、地方は、徹底した搾取・収奪の対象とされ、過疎化・高齢化、貧困と荒廃の震源地になってきました。
 多くの訪日観光客でにぎわう九州で三番目の政令指定都市になった熊本市も含めて熊本県とて無縁ではありません。市中心部を一歩出れば、過疎化・高齢化、人口流出が止まらず、施設や家屋の老朽化、農業の荒廃を目の当たりにせざるを得ません。TPPへの踏み切りは、これに追い討ちをかけています。
 そのことからどの自治体も病院、学校、役場など労働者民衆の社会生活に直結した施設の人員削減を行わざるを得ず、施設整備・改修に予算がつけられないまま手付かずの現状が放置されてきました。そこを痛撃するかのように震災が襲い、老朽化していた宇土市役所や熊本市民病院の倒壊という最悪の事態を招いたのです。
 これこそ、地方と福祉を切り捨て、外注化・非正規職化推進、営利優先、軍事予算増強を続ける新自由主義のもたらした歪(ひず)みであり、破綻です。病院に担ぎ込まれた被災者のタライ回しや、政令指定都市の「二重行政」の弊害と区職員削減によって、全国からの救援物資が県庁や運動公園に山のように積まれているにもかかわらず、各避難所には届かないままという状態がつくり出されているのです。

●九州新幹線の脱線こそ震災でむきだしになった新自由主義の破綻

 14日の九州新幹線の回送列車脱線は、その典型です。起こったことは、6車両・24車軸のうち22車軸が脱線する大事故でした。最悪の事態は免れたものの、「もし乗客が乗っていれば」と思うと身震いするような事故でした。
 驚くべきことに脱線した新幹線と線路には、「脱線防止ガード」も「脱線防止ストッパー」も設置されていませんでした。「早期地震検知システム」は着けていたものの何の役にも立っていません。中越地震で起こった「上越新幹線脱線事故」の教訓はまったく活(い)かされていないのです。国鉄分割・民営化で生まれたJR九州のカネ儲(もう)け優先・安全無視の姿勢の結果です。
 JR九州は、18日、一旦(いったん)、熊本駅以北の列車運行を再開しました。しかし、すぐにストップせざるを得ませんでした。異常箇所が130カ所も見つかったからです。JR九州は、しっかりとした安全点検もやらず、運行を強行しようとしたのです。本当に許せません。
 JR九州は、今秋、株上場、完全民営化しますが、このような安全無視の姿勢が続く限り、大事故はまぬがれません。今回の震災は、そのことを改めて突き出しました。
 私たちは、今、鉄道労組としての存在と闘いが問われていると痛感しています。動労千葉をはじめ動労総連合の仲間たちは、「鉄道の安全を守る」ためにストライキをやって「反合・運転保安確立」の闘いを続けてきました。鉄道労組として唯一です。
 私たちは、今後も熊本大震災でむき出しになった新自由主義の破綻、JRの安全無視と対決し、鉄道の安全を守り続ける決意を新たにしています。同時に、安倍政権の1%の資本家を優遇・救済し、99%の労働者民衆を犠牲にする政治、地方切り捨ての政策を許さず、これと対決して労働者の利益を守るために多くの労働者、労働組合と手をたずさえて闘い続ける決意です。

(2)改めて原発再稼働の危険性が突き出された。川内原発を直ちに止めろ!

 今回の熊本地震が阿蘇―大分と九州中部全域を襲う地震へと連動したように、日本は、いつ巨大地震が起こってもおかしくない「地殻大変動期」に入っています。政府は、今回の熊本大地震を「南海トラフ地震とは関連性がない」と発表していますが、被災現場では、「南海トラフ地震を想定した対応を」との指示がなされています。
 だが九電や鹿児島県などの九州の自治体は、「九州の西側は東日本大震災並みの地震は起こらない」かのような宣伝をしてきました。この認識が、熊本県側の震災の備えを欠き、震災被害の拡大を招いてしまっている一因でもあります。
 そうした誤った宣伝は、川内原発の再稼働の強行と九州財界トップの九州電力を守るためでした。川内原発は、震源地から一定の距離にあります。だが震源地と関係ないどころか、それを含んだ「中央構造線」の最南端に位置しています。
 今回の大地震は、「川内原発とその周辺を襲う巨大地震の可能性」を否定する根拠を大崩壊させました。あわてた原子力規制委員会は、「原発には影響ナシ」と発表しました。だが、地元や全国で動揺と怒りは広がるばかりです。原子力規制委員会は、原発規制の機関ではなく、反原発の怒りを規制する機関でしかないことを、またも暴露したのです。こんなとんでもない委員会は解散すべきです。
 同時に、川内原発の稼働を直ちに中止することを強く求めます。今回の地震でも道路はいたるところで寸断されました。このような地震災害のもとで原発事故が起これば、過酷災害、巨大災害はまぬがれません。鹿児島県が立案した新幹線や高速道路を使った「避難計画」などためにするものでしかありません。
 私たちは九電と鹿児島県に川内原発の即時稼働中止を求めるとともに、川内原発で働く労働者が手を結びあい、動労水戸のように被曝労働拒否で闘うことを訴えます。

(3)オスプレイの投入断固反対!震災を口実にした安保関連戦争法の発動を許すな!

 もう一つ許せないのは、安倍政権が危険極まりない米軍のオスプレイの投入を受け入れ、安保関連戦争法に基づく日米安保の発動として震災に対応しようとしていることです。
 自衛隊は、震災の一報をうけて九州の自衛隊を出動態勢に突入させるとともに、真っ先に築城(ついき)基地(福岡県)から戦闘機F2を熊本上空に急派させました。暗視装置を付けていない戦闘機を、夜間に、なぜ熊本市上空に飛来させたのか? 有事即応のスクランブルです。自衛隊は今、新たな朝鮮戦争の勃発に備えた戦争発動態勢に突入し、その観点から震災対応しているのです。
 さらに許せないのは、米軍・オスプレイ4機の投入です。中谷防衛相は、「早く物資を送るためには、垂直離陸能力を持ったオスプレイの能力が必要だ」とし、これにGOサインを出し、海上自衛隊に、オスプレイが発着可能な大型護衛艦「ひゅうが」を八代港に派兵することを指示しました。オスプレイは、軍民共用の熊本空港を拠点に、自衛隊と「震災対策」と称する共同の戦争演習を行うのです。震災を口実とした安保関連法に基づく日米安保の発動を断じて許してはなりません。
 
 被災されたすべての皆さん。全国の労働者、労働組合の皆さん。
 私たち動労総連合・九州は、JR労働運動の再生とともに被災地の救援活動を全力で行う決意です。熊本大震災は、単なる自然災害ではなく、国と行政がもたらした人災であるという観点を鮮明にし、私たちのささやかな活動が被災された人の励ましになることを信じて奮闘したいと思います。また国と行政による被災者の切り捨てを許さず、戦争と川内原発再稼働にも断固反対して闘います。全国から救援カンパと支援物資の集中をお願いします。
  2016年4月18日
国鉄九州動力車労働組合

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■救援本部
 〒812-0015 福岡市博多区山王1-1-15
 ローズマンション山王601号室
 動労総連合・九州
 電話 092-483-0860
 携帯電話 090-8177-5962

■救援カンパの送り先
 ゆうちょ銀行
 口座番号 01720-1-128148
 国鉄全国運動・九州(コクテツゼンコクウンドウ キュウシュウ)

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