資本参入で農業を破壊する安倍農政 労農連帯とゼネストで闘おう

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週刊『前進』04頁(2747号03面02)(2016/05/16)


資本参入で農業を破壊する安倍農政
 労農連帯とゼネストで闘おう


 「農地はいらない。引きとってほしい」「息子に『農業はやれないから農地を手放せ』と言われた」。そういう声が聞かれる。私は、関東の自治体の農政部門に勤務しているが、仕事で訪問する農村のどこでも耕作放棄地を見かけるようになり、本当に心苦しい。

新自由主義が農民高齢化と地方消滅生む

 新自由主義がもたらした農業の衰退と破壊が農村を直撃し、地方消滅の危機を激化させている。さらに安倍政権は、農地の集約を進め、国家戦略特区で企業の農地保有まで解禁して資本の食いものにしようとしている。それは戦争とともに社会の破滅への道だ。労農連帯を固め、戦争・改憲、農業破壊の安倍打倒へ、ゼネストで闘おう。
 今の農民の高齢化、後継者不足と地方消滅の危機は、資本主義・新自由主義の結果だ。
 第2次大戦敗北後、アメリカ帝国主義=GHQ(連合国軍総司令部)占領下の日本帝国主義は、戦後革命の爆発、労働組合のストと結合した農民の決起に恐怖し、労農同盟を破壊するために農地改革を行った。不在地主の土地を小作人に分配することで農民の闘いを鎮静化しようとした。さらに食糧危機で飢餓が迫る中増産のために作物の品種改良、農業の機械化、化学肥料の利用および土地改良などを進めた。
 作物の増産と高度経済成長、農産物価格の維持政策などで、戦中世代から1~2代の世代交代はできた。しかし農業だけでは食っていけず、大都市の工場労働への激しい駆り出しで、子どもたちは農村から離れていった。農業の機械化は作業を楽にし、歳をとっても農作業が続けられるようになる一方、借金まみれとなり、後継ぎとなる子どもの多くは他の産業に就職した。結局、農村に残ったのは、これまで頑張ってきた農民と跡継ぎがいる農家だけだ。
 今や大多数の農家が高齢化や後継者不足に直面している。それは、農村の崩壊、地方消滅の危機と一体だ。

TPPてこに農協の変質・団結破壊狙う

 1948年、全国農業協同組合中央会(JA)が設立された。戦後革命と農地解放の闘いの産物だが、戦前の農村ボスが再び君臨する形で多くの農協がつくられ、長期にわたる自民党政権の集票機関と化してきた。農協経由の農産物が減少する中で、金融・不動産や農民以外の会員取り込みなど「協同組合」という法人税法の特別扱いのもとで生き延びてきた。
 しかし安倍政権は、そうした存在としてあった農協さえ新自由主義的に破壊して、農民の団結の最後的解体と農村における資本の活動の自由のための攻撃を始めた。TPP(環太平洋経済連携協定)に対する「抵抗勢力」「既得権益の岩盤」として農協の変質・解体攻撃を集中的に行った。
 昨年8月28日、JA全中の廃止・一般社団法人化や地域農協への公認会計士監査の義務付けを柱とする改悪農協法が成立。出資比率などに応じた発言権による株式会社型経営を可能とした。いずれは企業に支えられる少数の農民中心のアメリカ型農協となると描かれ、そこには「農民代表」といった姿はない。
 安倍政権は昨年6月、「日本再興戦略」を閣議決定し、労働法制改悪、官製市場の民間開放などとともに「農林水産業、医療・介護、観光産業の基幹産業化」をうたった。大恐慌下で製造業以外の産業に頼るしかないところまで日帝経済は衰退し、国家間争闘戦と資本間競争から脱落・敗退しているということだ。
 農業分野では「農地集約の推進」を掲げ、新たに耕作放棄地への課税の強化で集約を進めるとした。さらに国家戦略特区で、農地を所有できる農業生産法人に企業が50%以上出資することを認め禁じられていた企業の農地保有に道を開いた。

「農林水産業の基幹産業化」で農業の崩壊へ

 農家の減少と法人化が急速に進んでいる。農林水産省の統計によれば、昨年2月時点で家族経営数は5年前に比べ18・4%減の134万4千になる一方、法人経営数は25・3%増えて2万7千になった。
 政府は、TPP大筋合意を受け、「努力が報われる農林水産業の実現に向けて」なるものを発表し、関税撤廃までの期間に対策を進めるとした。「魅力がある農産物は、国内でも海外でも需要があるから売れる。そうではないものを作る農民は努力していない」と言っているようなものだ。
 農業経営には、条件付きだが企業も参入できるようになった。直後に大手流通企業が農産物の直接生産のために条件のよい農地と農業者を探していることが現場にも伝わってきた。企業が農地を取得して自前で農業をするのはリスクがあるが、農産物をそのまま生産・販売するのではなく、原材料の生産は農民に任せ、資本は加工・販売を独占することで利益を手にできる6次産業化と海外輸出を進めている。
 企業は、コンビニやアパートの経営と同じようなフランチャイズ化で優良な農地・農業者を確保し、産地間競争は地方の企業誘致競争、企業による農地争奪戦に変わる。
 農民は、農地で農作業をすることで農産物を生み出す。一切の生産手段を奪われ労働力を資本に売ることでしか生きられない労働者とは異なるが、常に国家と資本の攻撃にさらされてきた。TPPで農業は一層破壊させられ、農民は食糧を生産するのではなく、商品化した食物を作るだけの存在にされる。
 韓国・民主労総を軸に農民を始め民衆総決起闘争本部が固く団結し、パククネ打倒のゼネストに総決起しているように、新自由主義を打ち倒す労農連帯のゼネストが未来を開く。安倍に立ち向かう自治体労働者の闘いの路線が問われている。

闘う労組拠点と農民会議の建設進めよう

 全国農民会議は、12年2月、福島の地で結成された。新自由主義と対決する初の全国農民組織であり、国家による農地強奪・軍事空港建設に絶対反対で闘う三里塚闘争を軸に結集し、全国で組織化を進めている。三里塚反対同盟と動労千葉、労働組合を軸に「市東さんの農地を守る会」が結成され、労農連帯が拡大している。ストで闘う労組拠点建設を進め、それと一体で全国農民会議の建設をかちとろう。新しい労働者の政党をめざし7月選挙決戦に総決起しよう。
(関東 自治体労働者・川上信吾)

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