焦点 「1%」への「99%」の革命を タックスヘイブンで税金逃れ

週刊『前進』02頁(2756号02面04)(2016/06/16)


焦点
 「1%」への「99%」の革命を
 タックスヘイブンで税金逃れ


●3750兆円もの資産隠し
 4〜5月に報道された「パナマ文書」から、世界中の国家指導者クラスの政治家や官僚、大企業がタックスヘイブン(租税回避地=所得・収入などに課税されない国や地域)を利用して税逃れと不正蓄財を行っていた実態が暴かれた。税収不足や財政難を口実に増税や公務員賃金削減、教育や福祉の切り捨てを強いながら、自らは莫大(ばくだい)な資産を隠して税逃れをしている政府中枢の人物や資本家への怒りが拡大している。
 しかも今回明らかになったのは氷山の一角だ。世界には50から60のタックスヘイブンがあり、毎日2万件の会社設立や口座開設が行われている。イギリスを拠点とするNGO「タックス・ジャスティス・ネットワーク」によると、世界のタックスヘイブンに隠されている資産の総額は最大で、米国、中国、日本の国内総生産(GDP)の合計に相当する35兆㌦(約3750兆円)にも達する。なんと世界全体のGDPの3分の1以上だ。
●税逃れで日本は世界第2位
 パナマ文書では日本の20社と230人の個人の名前があがったが、日本の大手銀行、商社、大企業はタックスヘイブンを使った税逃れの張本人だ。イギリス領のケイマン諸島に限っても日本からの証券投資は2015年末時点で前年比約2割増の74兆4千億円。これはアメリカに次いで世界第2位の規模である。つづくイギリスが23兆円、フランス20兆円、ドイツ17兆円で、これらの各国を合わせた額より多い。05年末時点からの10年間で2倍超となった。
 ケイマン諸島はキューバの南にある佐渡島の3分の1の面積の島で、その島に法人6万社、銀行は600行以上、1万にも上るファンドが登記されている。所得や利益、財産、キャピタルゲイン(金融資産などの値上がり益)、売り上げ、遺産、相続はすべて非課税である。首都ジョージタウンにあるウグランド・ハウスという名の5階建てのビルに1万8千社が登記しているが、ほとんどがペーパーカンパニーだ。こうした実体のない子会社を使った帳簿上のごまかしで、銀行や大企業は莫大な資産を隠しているのだ。
●消費税で輸出大企業が暴利
 そもそも日本の大銀行、大企業はさまざまな税制上の優遇を受けることで税金をまったく払っていないかほとんど払っていない(本紙2747号「焦点」参照)。とりわけ露骨なのは、輸出企業には「輸出戻し税」として高額の消費税が還付されていることだ。13年4月から14年3月の1年間でトヨタ自動車は1402億円、三井物産は815億円、住友商事は794億円、丸紅は765億円、日産自動車は757億円もの「輸出戻し税」を還付されている。
 中小事業者は消費税を価格転嫁できず次々と廃業、倒産に追い込まれ、労働者は消費税を動機とした外注化・非正規化、賃下げ・解雇、そして物を買うごとに消費税を強制徴収される。その一方で輸出大企業は消費税を上げれば上げるほど暴利をむさぼる仕組みだ。
●資本主義は倒すしかない!
 こうした税逃れは、富める者がますます富み、所得格差と貧困がますます広がっていることの直接の原因の一つだ。国際NGO「オックスファム」が今年1月に発表した報告書によると、世界で最も裕福な62人が保有する資産は世界の全人口のうち下から半分にあたる貧困な約36億人が保有する資産とほぼ同じだった。この下位半分の資産に相当する富裕層の人数は2010年には388人だったが、12年は159人、14年は80人と格差は広がっている。世界の富裕層1%の持つ富は、他の99%の持つ富の合計を15年に上回った。
 まさに現代社会は1%にも満たない資本家階級や支配層が、残り大多数の「99%」を搾取し犠牲にすることで成り立つ階級社会そのものだ。最末期帝国主義の腐敗の極である新自由主義がこの現実をつくり出している。「資本主義の枠内での改革」「私有財産の保障」(日本共産党)ではなく革命が必要だ。その条件はいよいよ成熟している。
 鈴木たつお弁護士は「労働運動を復権し革命を」と訴えている。全国の労働者の力を結集して参院選の必勝をかちとろう。

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