JR常磐線 作業用台車に電車が衝突 過大な業務強いるJRに責任

週刊『前進』04頁(2757号02面02)(2016/06/20)


JR常磐線
 作業用台車に電車が衝突
 過大な業務強いるJRに責任


 JR東日本でまたも重大な事故が起きた。6月6日午前1時すぎ、常磐緩行線の松戸―北松戸駅間で、電車が「トロリー」と呼ばれる手押し式の作業用台車と衝突した。今やJRで列車がまともに動いている日はほとんどない。JRと関連会社の労働者は動労総連合に結集し、反合・運転保安闘争に立とう。外注化・非正規職化を強行し、安全を破壊するJR体制を打倒しよう。

線路閉鎖せず作業に着手

 この事故で、時速80㌔で走ってきた我孫子発松戸行きの上り最終電車は、長さ1・1㍍、幅1・2㍍の作業用台車を車輪に巻き込んで停止した。電車の運行は中止され、27人の乗客は松戸駅まで徒歩で移動した。
 事故当時に予定されていた作業は、線路内での除草剤の散布だった。作業はJRが発注し、下請けのユニオン建設が請け負い、同社にJRから出向している線路閉鎖責任者と、孫請け会社出身の軌道工事管理者のもとに、孫請けの2会社に所属する4人の労働者が作業に当たることになっていた。まさに典型的な丸投げ外注化―重層的下請け体制だ。
 現場は常磐快速線の上り・下り、常磐緩行線の上り・下りのほか、松戸車両センターに向かう引上線などが並走する区間で、作業はすべての線路の線路閉鎖が完了した後に行われる予定だった。線路閉鎖とは、電車がその区間に侵入できないようにするための措置だ。
 しかし、現場で作業計画は変更され、全線路の閉鎖が完了する前に、すでに線路閉鎖がなされている区間から作業に着手することになった。その際、線路閉鎖責任者は、事故が起きた線路はすでに閉鎖されていると「思い込んだ」という。
 そのため、作業用台車が閉鎖されていない線路に載せられ、そこに最終電車が衝突した。列車の進入に気づいた労働者が急いで退避したため負傷者は出なかったが、起きた事態は深刻だ。
 当初の計画が現場で変更されたのは、終電直後から初電までの短時間に、膨大な作業を少ない人員でこなさなければならず、作業開始を急いだためと思われる。こうした過酷な状態を現場労働者に強いているJRにこそ、事故の責任がある。

責任逃れの「再発防止策」

 JR東日本では99年2月、品川区の山手貨物線で労働者5人が臨時の回送列車にはねられ死亡する重大事故が起きている。その翌年、JR東日本は「当社(JR)が特定元請け業者と見なされるおそれが出てくる」ので、JR社員は「安全管理に関する指示」を下請け会社にはするなという社内文書を出した。事故の責任を逃れるためだ。
 14年2月には川崎駅構内で作業用車と電車が衝突し、電車が脱線した。これも、線路閉鎖を終えていない線路で作業を開始したことが原因だった。川崎駅事故後、JRは「工事にJR社員を立ち合わせる」とした。だが、線路閉鎖を伴う工事や作業は首都圏だけで1日に何百件もある。そのすべてにJR社員を立ち合わせることなど不可能だ。今回の事故でも、現場にはJRからの出向者はいても、JRの社員は1人もいなかった。
 回送列車や遅延列車、夜間の貨物列車など、複雑なダイヤを管理する責任はJRにある。だから線路閉鎖を伴う工事計画も、JRの承認を得なければならない。しかし線路閉鎖責任者は下請け会社の社員でもいいことになっている。JRの責任放棄と、それを認めた規制緩和が事故の元凶だ。
 今回の事故の翌日、JR東日本は本社、支社や関連会社の関係者80人を招集して「緊急設備部長等会議」を開いた。社長の冨田哲郎はそこで、「確認と基本作業の徹底」を叫んだ。昨年4月の山手線の電化柱倒壊事故後も、冨田は「再発防止。基本ルールを守る」と繰り返した。にもかかわらず今年3月には高崎線・籠原(かごはら)駅で漏電・炎上という恐るべき事故が起きた。外注化・非正規職化、保安費削減を次々と強行しながら、なにが「再発防止」だ!
 他方でJRは、運転士が停車中にスマホの電源を切ろうとしたことなどを「不祥事」として意図的にマスコミに報道させ、現場労働者を締め付けて「安全対策」が進んでいるかのように装っている。まさにこれは第2の尼崎事故への道だ。

〝闘いなくして安全なし〟

 JR西日本では5月27日、岡山駅構内で工事用足場に貨物列車が接触し、パンタグラフが破損した。6月9日には兵庫県明石市の山陽線魚住変電所で、電源を切らずに機器修理作業をし、付近の1万6千世帯を停電させた。JR北海道では青函トンネル内で新幹線が停止信号を受け緊急停止する事故が続いている。
 韓国では5月28日、ソウル地下鉄でホームドアを修理していた下請け会社の19歳の非正規労働者が、列車にひかれて死亡した。6月1日には地下鉄の工事現場で土砂が崩れ、4人が亡くなった。「闘いなくして安全なし」は全世界の労働者の共通のスローガンだ。
 1047名を解雇して発足したJR東日本本社の足元で、ついに動労東京の旗が立った。JRと関連会社の労働者は動労総連合に結集し、反合・運転保安闘争に立とう。参院選決戦に勝利し、首都に階級的労働運動の拠点を打ち立てよう。

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