奈良市従の闘いの報告 正規・非正規の団結の力で下水道民間委託を阻んだ

週刊『前進』04頁(2761号02面05)(2016/07/04)


奈良市従の闘いの報告
 正規・非正規の団結の力で下水道民間委託を阻んだ


 今年4月、6月、7月の3回も、下水道民間委託を阻止した奈良市従の闘いを報告します。
 これまで屹立(きつりつ)しながら「絶対反対で闘おう」と訴えてきましたが、ついに民間委託を阻止し続ける労働組合の団結をつくりました!
 3年前から教育支部(学校・園業務員)が拠点となり市従全体の闘いを体現して「民間委託のための任用替えは絶対反対」と先頭で闘ってきました。同時期に下水道は上下水道統合と職員の出向攻撃がかけられ、「統合は民営化だ!」と闘う中、強行されました。2015年秋、本当に下水道現業完全民間委託の攻撃がかけられました。組合にとって「職場丸ごと完全民間委託・正規の職種変更・非正規の解雇」は初めての攻撃でした。解雇にどう向き合うかが問われました。責任を取るとはともに闘いぬくことだと議論しました。
 下水現場の仲間は不安で体調を崩す時もありました。しかし団交で怒りを爆発させた瞬間、根底的決起が始まりました。それは「水は人間の生活と命の問題! 自分たちが誇りをもって働いてきた仕事を金もうけの道具にするな!」という怒りでした。
 下水職場の非正規職の仲間が初めて団交に来て「怒っていいんだ」と解き放たれていきました。3人が組合加入してくれました。この時から闘いは一変しました。非正規職の仲間のストレートな決起が正規職の仲間を勇気づけ、民間委託絶対反対の正規・非正規の団結になっていきました。
 彼らと団結するため、私たちは自分たちの飛躍をかけてあらゆる挑戦をしました。2700筆の署名、集会、団交。そしてついに、4月の委託を阻止する決定的勝利をかちとりました。
 闘う中で大きな困難とぶつかりました。体制内幹部が「闘うポーズ」をとりながら、現場の闘いに立ちはだかってきたのです。それに対して、現場の仲間たちは裏切りを見抜いてのりこえていきました。
 中でも、自治労本部の下水に関する見解が伝えられた組合会議ではいったん絶望が組織されました。「法律が重要。出向したのだから市長を相手取っては闘えない。嘱託職員は『任用』なので解雇撤回を争えない。ストもするべきでない」というものです。この時、非正規職の仲間が「自分たちは解雇を覚悟している! 組合はどういうケンカをしてくれるのか」と体制内幹部に渾身(こんしん)の訴えをしました。私たちは「彼の声に応えなかったらもう労組じゃない」と、あらためて闘う決意をしました。
 5人の下水の仲間たちがこの苦闘の中で譲れない核心にたどりつきました。それが「現場5人の思いはひとつ。民間委託も解雇も絶対反対」という柱です。
 そしてみんなで「ストライキで闘う意味」を何度も議論しました。その時重要だったのは、獲得目標は「スト方針が組合決定になるかどうか」ではなく、「自分たち自身が組合全体のスト議論をつくりだすことによって団結をつくっていく」ことだと決めたことです。それは、自分たちが、組合本部に代わって労働組合に責任を取る立場に立つ決断でした。
 解雇が目前に迫った5月の執行委員会でもストライキを提起しましたが組合方針にはなりませんでした。いよいよ、土木下水支部・教育支部・女性部の部長三者が呼びかけ人となり、「ストで闘うことを求める団結署名」を始めました。120筆、全組合員の3分の1以上の署名が集まり、まったく新しい団結を生み出しました。
 ちょうどその時、警察権力が市長と一体となって清掃職場に介入してきました。直ちに団結署名の三者が呼びかけ人となり、「これは下水の闘いをなきものにする奈良市従つぶしだ」と緊急声明を出し、闘いはつぶされるどころか、さらに団結が深まりました。
 5月末、今度は市長みずから「嘱託の人たちに委託先業者への就職を斡旋(あっせん)する」と条件交渉を持ちかけてきましたが、応じるどころか嘱託の仲間たちは委託業者への面接を拒否する闘いに決起しました! この闘いが3回目の民間委託を阻止しました!
 あらためてつかんだことは「労使合意・本人合意」せずに絶対反対で闘えば勝てるということです。同時に、普段、当局と体制内労組幹部がいかに「労使合意」をもってあきらめを組織しているかということです。委託・非正規職化を推し進める新自由主義に対して、労働者が団結して闘うことによって、でたらめな攻撃の中身が明らかになるし、社会を変えられるということです。
 それは、国鉄分割・民営化以来、動労千葉・動労水戸―動労総連合が労使合意を拒否して絶対反対で闘ってきたことで、戦争情勢の今なお、労働運動を解体できていない状況をつくりだしているということです。国鉄決戦の大きさであり、安倍の労働法制解体攻撃が階級的激突点です。
 大阪市では、来年度、下水道100%出資会社への転籍攻撃の攻防に入っています。労働組合の絶対反対の闘いをつくりだしましょう!
 最後に、労働組合が勝利するには政党が必要です。党は、現場の怒りの先頭に立ち、絶えず攻防の階級的本質をつかみ、方針を提起していく存在です。参議院選挙、鈴木たつお候補を推し立てて労働運動をつくり変え、新しい労働者の政党をつくる闘いに挑戦しましょう! ともに闘いましょう!
(奈良 上田貴子)
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