5兆円超も年金損失 株価上昇狙うリスク運用で

週刊『前進』02頁(2762号02面03)(2016/07/07)


5兆円超も年金損失
 株価上昇狙うリスク運用で


 年金をめぐって重大な問題が起きている。国民年金と厚生年金の積立金が、この1年間に5兆円も消え失せた。直接の引き金は、これらの年金を管理し運用している独立行政法人が、安倍の肝入りで一昨年の秋から債権を減らして株への運用を倍増させたことにある。
 大恐慌下ですでに世界の主要国の経済成長率はゼロやマイナスにもなっている。こうした中で、昨年6月には上海株が暴落し、世界中の株価もそれに続いた。失った5兆円は、2700万人が1年間に払った国民年金(基礎年金)の保険料に、また640万人分に給付される国民年金(満額)に相当する。
 しかし、5兆円が消え失せたのは3月までのこと。先月下旬、イギリスの国民投票でEU(欧州連合)からの離脱票が多数を占めたとたん、世界中で株が暴落し日本株も激しく乱高下している。損失5兆円どころではなくなっている。
 安倍は、先立つ2月の予算委員会で「運用で利益が出ないなら給付を減らす」と言い放った。しかし、損失を出したのは、保険料を払う労働者や自営業者、受給している高齢者、さらに今後年金に加入することになる未成年者の責任ではない。運用損を理由に年金を削減するなど論外だ。
 安倍は株価をつり上げ大資本をもうけさせるために、従来の倍の50%もの年金資金を株式市場につぎ込んだ。昨夏に巨額の損失を出すと、リスクの高い海外の株にも突っ込んだ。大恐慌下でこんなことをすれば大損失を出すことは明らかだ。だが安倍は、本来は退職後の労働者に給付されるべき資産で、大資本を救済しようとしたのだ。このデタラメなやり方とその大破産は、資本主義の終わりを示している。
 民進党や共産党は5兆円損失問題で安倍との対決ポーズをとり、「より安全な運用を」などと言うが、以前のように国債への運用を増やせばいいのか。それは無理だ。なぜなら2月に日銀がマイナス金利を導入したことで、国債もマイナスの利回りになっている。積立金の運用で年金を確保することは八方ふさがりなのだ。
 こうした中で、安倍政権は「株は上がり下がりするもの。短期的な結果で騒ぐな。長期的に見ろ」と開き直り、ますますリスクの高い株への運用にのめり込んでいる。そして「財源をどうするのか」「消費税を充てるしかない」と恫喝している。これに対して共産党も民進党も闘えない。
 労働者は協働して自分自身が必要とする以上のものをつくり出せる。社会を自分たちで運営できる。資本主義を終わらせ労働者の社会を実現しよう。そのために新しい労働者の政党をつくろう。
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