工事用臨時列車指名ストの意義 反合・運転保安闘争の再確立へ乗務員の命守り闘う動労千葉

週刊『前進』04頁(2785号02面02)(2016/10/03)


工事用臨時列車指名ストの意義
 反合・運転保安闘争の再確立へ乗務員の命守り闘う動労千葉

乗務中倒れる事態再び繰り返させるな!

 JRの乗務員は今、長大行路などによる労働強化、監視・締め付けの強化、運転士個人に事故の責任を転嫁するなどの現実に直面している。その中で動労千葉は、9月13から工事用臨時列車を運転する「千葉運輸区工臨488行路」を対象にした指名ストライキに立ち上がった。この闘いの発端は、昨年3月、動労千葉の組合員が脳梗塞(のうこうそく)で乗務中に倒れたことにある。
 泊勤務に出勤した当該の組合員は、出勤時から体調が悪かった。乗務を強制される中でろれつが回らなくなり、もうろうとして駅で列車の停止位置を過ぎてしまうことを繰り返した。運転士と運輸指令は無線でやり取りをするから、指令には運転士の様子がおかしいことは分かっていた。にもかかわらずJRは乗務を続けさせた。翌朝まで放置された組合員は、自分では運転台に上がれないまでになってしまった。現在も乗務に戻れない状態だ。
 動労千葉の組合員だけでも、病気で乗務不能になった労働者がすでに何人もいる。「もう二度とこんなことを繰り返させてはならない」という固い決意が、この闘いの出発点だった。
 命にかかわるこうした深刻な事態が蔓延(まんえん)している職場の現実と、工事用臨時列車をストライキに入れるという具体的な戦術が結びついた時、職場の怒りをとらえる普遍的な闘いが生まれた。
 倒れた動労千葉組合員も工事用臨時列車の業務を担当していたし、この業務を担当する他の組合員も次々と倒れていたからだ。

「命よりカネ」のJRに職場の怒りが集中

 工事用臨時列車を動かすディーゼル機関車には、冷房も設置されていない。鉄板で囲まれた真夏の運転席の温度は50度近くまで上がる。その中で仕事をさせられれば、本当に命を失ってもおかしくないのだ。
 しかし、JRは動労千葉の冷房設置の要求に対して、「冷房を付けると1千万円かかる」といって拒否した。冷房を設置するまで、行路を2つに分割して1人分の負担を少しでも軽減する方法も突きつけたが、「分割すればその分、作業効率が落ちる」と言って、これも拒否した。コストを理由に、殺人的な労働条件を強制し続けるというのだ。まさに「命よりカネ」だ。動労千葉は怒りに燃えて闘いに立った。
 工事用臨時列車だけでなく、旅客を乗せる電車の乗務行路でも、乗務員への殺人的な労働強化が行われている。特に、乙行路(泊勤務で1泊した後の2日目の部分)は、この数年のダイヤ改定で急激に長大化が進んだ。泊勤務では、実際に仮眠できる時間が4時間を切ることもある。その中で、翌朝早朝から運転を開始し、退勤が正午を過ぎる勤務が激増しているのだ。
 運転士は平均10時間近い拘束時間を強制され、出退勤の時間も早朝4時前から深夜1時過ぎまでとバラバラだ。泊勤務以外でも、早朝勤務や退勤時間が遅い勤務の場合、職場に泊まらざるを得ない。不規則でかつ緊張の持続が求められる労働にもかかわらず、JRはダイ改合理化で運転士に地上勤務者以上の長時間拘束を強いてきた。
 この間、「運転士が居眠りをしていた」など、運転士をたたく報道が大々的になされている。しかし、人間の限界を超えた労働強化を行っているのはJRだ。ところがJRは、乗客やマスコミをも利用して「乗務員がたるんでいる」と宣伝している。そして、「体調チェックは徹底している。睡眠時間も確保している」と居直って、多発する事故の責任を乗務員個人に押し付けようとしているのだ。
 常に監視状態に置かれ、細かなことまであげつらわれてインターネットやマスコミで騒がれる。乗務員は本当に限界ギリギリの状態に追い込まれている。05年の尼崎事故は、乗務員を精神的に追い詰めた結果だった。動労千葉の指名ストは、全乗務員の命と労働条件、鉄道の安全をかけた闘いなのだ。

検修外注化を粉砕する闘いと一体の決起

 この闘いは同時に、検修・構内業務外注化との闘いでもある。検修・構内業務はもともと、高齢になった本線運転士のための職場としても位置づけられていた。しかし、外注化によって本線乗務から下りて構内運転に替わることはできなくなった。運転士は無理をしても本線乗務を続けざるを得ず、そこに徹底した労働強化が重なって、乗務員が次々と倒れる事態が引き起こされたのだ。
 さらに、外注化により、故障のおそれのある列車をきちんと点検しないまま走らせたり、修理がいつまでも行われない事態が頻発している。点検作業などがCTS(千葉鉄道サービス)に外注化されたため、列車の点検はJRがCTSに発注しなければ行われなくなった。現場をよく知りもしないCTSの管理者が、発注を受けたり現場への指示を行ったりしていることが、まともに点検や修理がなされない事態の原因だ。
 指揮命令系統が複雑化する中で連絡ミスが起こり、労働者が車両の下で検査している最中に、列車が発車しようとしてブレーキが緩む重大事態まで引き起こされている。
 一度事故が起これば、会社はすべての責任を乗務員個人に押し付けようとする。動労千葉はこの許しがたい現実に対して立ち上がったのだ。
 その闘いは確実にJRを追い詰めている。13日の第1波ストでは、3人の動労千葉組合員をスト対象の「488行路」に指定してきた。仮にストが回避されていたら、同一の列車に3人が乗務することになったのだ。まさに前代未聞の対応だ。これは、指名ストを起点に乗務員の怒りと闘いが爆発することに、JRがどれほど恐怖しているかを示している。
 団体交渉でもJR千葉支社は、「行路のバランスが悪い」「乙行路がすごく長い行路がまだまだある」と認め、「次期ダイヤ改定に向けて検討する」と言わざるを得なくなっている。闘いはこれからだ。
 動労千葉はこの指名ストから、次期ダイヤ改定に向け、行路緩和、高齢者対策の実施、ディーゼル機関車業務の労働条件確立をかちとる闘いに入る。外注化粉砕闘争、CTS就業規則改悪との闘いも、これからが本当の勝負をかけた闘いだ。
 ストライキを闘う動労千葉とともに、闘う労働運動の復権に向けて全力で闘おう。日韓国際共同行動を呼びかけた韓国・民主労総ソウル地域本部の訴えに応え、今年こそ11月集会への巨万の結集を実現しよう。

このエントリーをはてなブックマークに追加