「トイレ問題」で人生奪うな 運転士への処分と締め付けは安全を破壊するだけだ!

週刊『前進』04頁(2795号02面01)(2016/11/07)


「トイレ問題」で人生奪うな
 運転士への処分と締め付けは安全を破壊するだけだ!

(写真 動労千葉は10月21日、処分と出向強制を弾劾し銚子運輸区への抗議行動に立った)

生理的限界を超え行路延長

 JR東日本は動労千葉組合員の運転士に対し10月3日に減給処分を発令し、17日にはCTS(千葉鉄道サービス)成田事業所の清掃部門への出向を通告した。処分と出向発令の理由は、当該運転士が総武本線佐倉駅で停車中に運転席から用を足してしまったことが、「服務規律に違反し」「会社の信用を失墜させた」というものだ。
 運転士には定時運行が厳しく要求されている。当該運転士の行為は、「自分のトイレで列車を遅らせるわけにはいかない」と我慢に我慢を重ねた末、その限界に達してやむを得ずなされたものだ。自分の意思ではどうにもならない生理現象を理由に、労働者の人生を奪うことなど許せない。
 運転士が運転台を離れる時には、列車の転動を防止する措置をとらなければならないし、周辺の列車に抑止手配を行う必要がある。そうすれば列車の遅れは際限なく拡大する。JRは「指令に連絡すれば列車を遅らせてトイレに行ってもいい」と言うが、実際上、それはほとんど不可能だ。
 高齢化とともに誰もがトイレは近くなる。腹を壊すこともある。過活動膀胱(ぼうこう)、膀胱炎、頻尿などの病気もある。だがJRは、そうしたことを一切考慮せず、ダイヤ改定のたびに行路を延長してきた。3時間もハンドルを握りっぱなしの行路さえある。労働強化は生理的限界を超えている。動労千葉はかねてから佐倉駅ホームへの乗務員用トイレの設置を要求してきたが、JRはそれも無視し続けた。
 当該の運転士に対してJRは当初、「事情聴取が終わったら数日で乗務に戻す」と言っていた。ところが問題がマスコミに報道された途端、減給処分と強制出向を強行した。まさにこの処分は、動労千葉の組織破壊を目的に行われたのだ。

再び尼崎事故繰り返すのか

 トイレの問題は鉄道だけでなくバス、タクシー、トラックなど交運労働者にとっては切実な問題だ。乗務員は誰もが、勤務の前日から水を飲まないとか、運転席がぬれていたなどの悲痛な体験を持っている。
 だから、今回の処分に対する動労千葉の反撃には、かつてない注目が集まった。ツイッターには「JRは超絶ブラック企業」「運転士は労働者の鏡だ」などの反響があふれている。そこには、大手広告会社・電通の女性労働者の過労自殺が示したような、労働者を人間として扱わない資本への根本的な怒りがある。
 この間、JRは乗務員への締め付けを強め、背面監視を行い、乗客やマスコミによる撮影行為も利用して、ささいなことで解雇・処分・乗務外し・出向強制などを乱発してきた。その頂点に今回の攻撃がある。
 乗務員への処分や締め付けで安全が確保されるわけがない。むしろそれは安全をさらに損なう。05年4月の尼崎事故も、運転士が日常的に「遅れを出したら乗務を外す」と脅されていたから起きた。悪名高い「日勤教育」、さらし者扱い、懲罰的処分が、107人の命を一瞬で奪う大事故をもたらしたのだ。

外注化が原因の事故が続発

 1047名の首を切って生まれたJRは、金もうけのために安全を破壊し続けている。外注化・非正規職化を原因とする事故は激増している。国土交通省が情報開示した鉄道事故統計でも、JR東日本のデータは悪化の一途をたどっている。30分以上の列車遅延か運休が発生した輸送障害事故のうち、JR内部に原因があるものは、14年度の364件から15年度の397件に増えた。そのうち車両故障は14年度が177件で15年度が203件。列車走行100万㌔当たりの事故件数は、大手私鉄15社平均の0・2に対しJR東日本は1・8で、私鉄の9倍だ。14〜15年度に新宿駅だけで16件の事故が起き、ホームでの転落や列車との接触で7人が負傷した。ホーム要員の削減がその大きな原因だ。
 事故の多発と遅延・運休の頻発に対する乗客の怒りも限界に達している。その怒りは、直接には駅員や乗務員への抗議・暴行として現れる。JRによる乗務員への締め付けは、こうした行為をあおるものだ。しかも、乗客に取り囲まれ、抗議されてひたすら頭を下げるのは現場労働者、特に非正規労働者だ。駅長や管理者は室内に閉じこもって顔も出さない。
 今年9月には近鉄奈良線で、列車の遅れを乗客から問い詰められた車掌が、衝動的に駅の高架から飛び降りて自殺を図った。これも、労働者が追い詰められた結果、起きた事件だ。
 鉄道労組を先頭とする韓国・民主労総のゼネストは1カ月を超えた。「民営化による鉄道の安全破壊を許すな」は鉄道労働者だけでなく労働者民衆の共通のスローガンだ。11・6労働者集会の成功をばねに国際共同行動の後半戦を闘おう。
 動労千葉組合員への処分と出向強制の撤回へ、動労千葉とともに闘おう。この攻防から日本のゼネストを切り開こう。
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