JR北海道が全面廃線計画 線区の大半が「維持困難」 分割・民営化は大破産した

週刊『前進』04頁(2805号02面01)(2016/12/12)


JR北海道が全面廃線計画
 線区の大半が「維持困難」
 分割・民営化は大破産した


 JR北海道は11月18日、線区の半分以上が「当社単独では維持できない」と公表した。国鉄分割・民営化は全面的に破産した。パククネ打倒情勢とトランプ登場に追い詰められた安倍政権は、労働者人民の生活と地方を一層激しく破壊し、資本だけを生き延びさせようとしている。動労総連合をさらに拡大し、国鉄分割・民営化に決着をつける17年決戦に進撃しよう。

自治体に廃線をのませるために「上下分離」を絶叫

 JR北海道が11月18日に出した文書は、全線区のうち13線区1237・2㌔は「当社単独では維持することが困難」で、維持できるのは11線区1150・7㌔に限られると言う。しかも、この数値は函館線の函館―小樽間は北海道新幹線が札幌まで延伸されれば第三セクター化されるとしてJR北海道とは無関係なものとして扱った上、現在建設中の北海道新幹線の新函館北斗―札幌間を維持可能な線区に含めたものだ。在来線に限れば営業距離の65%以上が「維持困難」か第三セクター化の対象だ。
 JR北海道は、「維持困難な線区」のうち輸送密度が200人未満の線区は「廃止・バス転換」すると明言した。輸送密度200人以上2000人未満の線区については、上下分離方式の採用をはじめ列車の削減や駅の廃止、運賃引き上げなどを沿線自治体と「相談」した上で、鉄道として維持すべきかどうかを検討するという。
 これは、実際には廃線にするということだ。上下分離とは、線路などの設備を自治体に保有させ、設備の維持・修繕費は自治体の財政支出でまかなうことを意味するが、自治体財政にそんな余力は存在しない。
 「維持困難な線区」には、特急が走る宗谷線の名寄―稚内間や石北線の新旭川―網走間も含まれている。これらが廃止されれば、北海道は地域として存続できなくなる。
 鉄道は地域の生活にとって不可欠のインフラだ。冬季の北海道では特にそうだ。道路が不通になったり、飛行機の離発着が不可能になったりしても、鉄道の運行は確保されているというケースは数限りない。
 廃線で真っ先に打撃を受けるのは、鉄道を使って通学する高校生や病院に通う高齢者だ。JR北海道はバス転換を安易に唱えるが、厳冬期の北海道で、駅舎もないバス停でバスを待つことは、まさに人命にかかわる。

基本的なインフラも維持できなくなった資本主義

 北海道の鉄道網はすでに寸断された状態だ。8月の台風被害で石勝線・根室線のトマム―芽室(めむろ)間と根室線の東鹿越(ひがししかごえ)―落合間は不通になっている。日高線は高波の被害を受けた15年2月以来、鵡川(むかわ)―様似(さまに)間が止まったままだ。12月4日には留萌(るもい)線の留萌―増毛(ましけ)間が廃止された。石勝線の夕張―新夕張間は、地元の夕張市が廃線・バス転換に合意した。
 11年5月の石勝線トンネル内での特急列車の脱線・炎上事故で、JR北海道の安全崩壊は衝撃的に突き出された。13年9月の函館線の大沼駅構内での貨物列車脱線事故をきっかけに、レール異常の放置と検査データの改ざんが日常化していたことが発覚し、以降も走行中の列車から出火するなどの事故が相次いだ。メンテナンスコストの削減と外注化の結果だ。
 こうした危機の中で、JR北海道は「安全再生」を重ねて叫んだ。ところが今や「安全」は廃線の絶好の口実にされている。JR北海道は「老朽土木構造物の更新も含め『安全な鉄道輸送サービス』を持続的に維持するための費用が確保できない」から大半の線区は「維持困難」だと言う。そして、今後は毎年度180億円の経常損失が続くという収支見通しを公表し、「このままでは19年度中に経営破綻する」という脅しで廃線をのませようとしている。
 だがこれは、利潤追求を原理とする資本主義のもとでは、社会生活に必要な基本的インフラさえ維持できないことを意味する。必要なのは資本主義を打倒する革命だ。
 廃線に向けての攻撃は、JRとその関連労働者には解雇や一層の外注化、労働強化となって襲いかかる。1047名の首を切って生まれたJRは、再び大量解雇に手を染めようとしている。
 JR北海道は16年度、326人を新規採用したが、「昨年は約90人の若手職員が辞めた」と西野史尚副社長は述べている。効率化や要員不足による労働条件の悪化に加え、利用者や沿線住民をないがしろにするJR北海道の経営姿勢のため、鉄道労働者としての誇りが持てないからだ。
 こうした現実に対し、北海道で動労総連合の結成が準備されていることは決定的だ。労働組合が軸となり、国鉄分割・民営化に全人民的な反撃をたたきつける時が来た。
 北海道の鉄道の大半が廃止されれば、鉄道による貨物輸送もできなくなる。例えば、生産量日本一の北見産のタマネギは、貨物列車で全国に出荷されている。廃線は農業にも観光業にもJR貨物にも大打撃を与える。

動労総連合さらに拡大しJR体制倒すゼネストへ

 安倍政権は「選択と集中」「コンパクトシティ化」を唱えている。それは、地方を衰退するにまかせるというレベルではなく、生き残らせる地域と切り捨てる地域を選別し、国家が積極的に地域の破壊を強行するということだ。その攻撃の先頭にJRは立っている。
 JR西日本も三江線の廃止を打ち出した。JR東日本は来年3月のダイヤ改定で内房線の館山―千葉間の直通列車の廃止を狙っている。鹿島線などのワンマン化に向けた調査も行われている。他方でJR東日本は、福島の怒りを圧殺し被曝と帰還を強制するため、ほとんど乗客などいないことが明らかな常磐線の全面開通をたくらんでいる。
 常磐線再開阻止の12・10闘争を突破口に動労総連合をさらに拡大し、日本でのゼネストを切り開こう。国鉄分割・民営化に決着をつける17年決戦に進撃しよう。

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▼輸送密度 鉄道営業距離1㌔メートルあたりの1日の平均乗客数。

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