現場教職員の団結した力で原発いじめに立ち向かおう

週刊『前進』04頁(2807号03面03)(2016/12/19)


現場教職員の団結した力で原発いじめに立ち向かおう


 横浜市に「自主避難」した13歳の少年への「いじめ」が明らかになりました。少年の手記には、福島から横浜へ「自主避難」した小2の転校直後から暴行を受け、「ばいきんあつかいされ」「ばいしょう金あるだろ」と迫られたことなどが記されています。実際、総額150万円を自宅から持ち出していました。さらに「なんかいも死のうとおもった。でも、しんさいでいっぱい死んだからつらいけどぼくはいきるときめた」と記し、「なんかいもせんせいに言(お)うとするとむしされてた」と、学校と教師への強い不信もあらわにしています。
 同様の事件が全国で起きています。この問題にいかに向き合うべきかが問われています。

福島引き裂く安倍と東電を絶対許さない

 安倍が「アンダーコントロール」と言い、帰還を強制し、実際に生活苦にあえぐ大人が避難者に「毎月、何こんなに賠償金もらってるんだよ!」と叫び、分断がつくられる中で、子どもの世界で「いじめ」がまん延しているのです。全国に拡大する避難者への「いじめ」の一切の責任は安倍にあります。
 原発被害を受けたすべての人びとは、生存のために避難の権利を持っています。しかし安倍がやっていることは、福島切り捨てと原発推進です。「復興」キャンペーンの先頭に教育と子どもを立たせています。ふたば未来学園の新設、福島高校スーパーサイエンス部生徒の福島第一原発構内の見学、子どもたちを使った国道6号線清掃などです。子どもたちや家族のぎりぎりの選択をあざ笑うように教育や子どもを「復興」キャンペーンに利用し、被曝と被曝労働を強制し、子ども同士・家族同士を引き裂いています。教育労働者の存在をかけて安倍を倒しましょう。

子どもの命と生活守るのは労働者の団結

 横浜の事件発覚直後、今度は新潟市で小学校の担任が福島からの避難児童を「○○菌」と呼んだことも報道されました。驚くべき現実ですが、それほど教職員が分断・孤立させられているのです。教職員集団の団結で子どもたちの「いじめ構造」を解体するのではなく、クラスのさしあたりの「安定」のため、担任が「いじめ構造」を受容した結果です。幾層もの評価制度、非正規職化と極限的多忙化が背景にあることは間違いありません。
 今回の事件をもテコに、文科省は「学校カウンセラー」など外部人材・専門家の導入を進めようとしています。しかしこれでは問題は解決しません。一方で教育労働を細分化し、労働者の団結も主体性も破壊し、他方で「いじめ」被害者を「隔離」し、被害者個人の問題にすり替えています。「いじめ構造」を温存させるだけです。
 「いじめ構造」全体にメスを入れなければなりません。それができるのは団結した教職員集団の力だけです。その力でクラス全体・学校全体と保護者・地域に働きかけ、「いじめ構造」の根幹にある、社会も教育も破壊してきた新自由主義と安倍政権そのものを問題にすることです。
 例えば横浜市教委は、育鵬社版の歴史・公民教科書を採択しています。原発事故被害の記述もほとんどなく、避難者の存在に触れてもいません。この行政の現実を棚に上げ、「教育の放棄」(市教委設置の第三者委員会)と学校を一方的に批判することなど絶対に許せません。
 政治と教育とは結びついています。こうした職場の現実を一つひとつ変革していくことです。これには大変なエネルギーが必要だからこそ、職場の団結をつくり出す力になります。職場の団結=労働運動が力を持つことと、子どもと向き合うことは表裏一体です。

福島の現実と向き合い職場から3・11へ

 手記には「(教員に)むしされてた」と厳しい告発があります。子どもに相談された時、福島の現実、放射能による健康被害、チェルノブイリ原発事故の実態などを授業で取り上げていたら、状況は変わっていたはずです。「福島の避難者の子が来たら、学校として福島のことを知るいい機会にすべき」という社会的声を、教育労働者は受け止めるべきです。
 神奈川県内のある学校では、生徒を対象に福島からの避難者の講演を企画し、福島の現実を生徒に伝える努力をしています。青年教員には「そんなことができるんですか?」という声もありますが、教育労働運動は学習指導要領体制と対決し、闘いの中でこうした力関係をつくってきました。子どもたちに本当に伝えたいことを授業で取り上げる、そういう団結をつくることが階級的労働運動の力です。現場にいるのは私たち教育労働者です。私たちが団結すれば、子ども・保護者と力を合わせて、どんなことでもできます。
 安倍政権が教育を統治手段として強める一方、教室はますます社会の縮図となっています。社会変革の展望を持って職場で闘うことです。それができるのが労働組合です。アメリカでも韓国でも現場の地道な闘いが、今や革命的うねりを生み出しています。職場で「被曝と帰還強制反対署名」に取り組み、教育労働者こそ3・11福島に結集しよう。
(神奈川 教育労働者・佐伯悠)
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