韓国映画「弁護人」 国家保安法に立ち向かい拷問を暴く圧巻の法廷劇

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週刊『前進』04頁(2807号04面03)(2016/12/19)


韓国映画「弁護人」
 国家保安法に立ち向かい拷問を暴く圧巻の法廷劇

(写真 2013年公開、ヤンウソク監督。ソウルで100万人が決起した11月12日から日本で順次公開中。127分)


 2013年に韓国で観客動員1100万人を突破する大ヒットを記録した「弁護人」が日本で上映されている。
 1981年、チョンドファン軍事政権下の韓国で、税務や不動産登記の弁護士として金もうけに明け暮れていたソンウソク弁護士が、国家保安法事件の被告の弁護を行うことで転身していく闘いの姿を描いている。ソンウソク弁護士は、後に韓国大統領になったノムヒョンその人だ。
 この映画の優れたところは単純明快さにある。民主労総のハンサンギュン委員長の発言のようなわかりやすい、ストレートな権力に対する労働者民衆の怒りを表現しているからだ。
 釜山の大学1年生、ジニが国家保安法違反の反国家団体の首謀者にされた。実際にあった1981年の「釜林(プリム)事件」が題材になっている。事件は完全な捏造(ねつぞう)であり、拷問による公権力の横暴を暴露していく法廷劇がハイライトだ。国家保安法の被告を弁護することは、自身が国家保安法の適用を受けかねない。その当時の法廷で徹底的に闘ったのだ。この主人公を名優ソンガンホが体当たりで演じている。
 81年段階で拷問の実態は暴露されていたが、87年の労働者大闘争でチョンドファンが打倒されるまで拷問は続いていたのである。全編が拷問のシーンだった「南営洞1985」も衝撃的だが、拷問は日帝の植民地支配下で特高が行ったものだ。それが戦後も独裁政権下で引き継がれてきたことを、われわれは自覚しなければならない。
 釜林事件では、学生・労働者など19人が拘束され実刑に。再審では09年に国家保安法違反容疑を除く戒厳法違反などの容疑についてのみ無罪、国家保安法を含む全容疑に対する無罪宣告は、映画公開後の2014年だった。
 ジニ役は、テレビドラマ「未生(ミセン)」で非正規職労働者を演じたイムシワン(写真下)。その端正な顔と体が拷問によって痛めつけられる様がすさまじい。拷問を受けた在日韓国人政治犯が「拷問に耐えられる人間はいない」と述べていたことを想起した。死んだ方がましだと思ってしまうのである。
 家族が被告らに「泣くな。お前は間違っていない」と声をかけ、全員退廷になる場面で泣いてしまった。
 主人公は、この事件を契機に闘う弁護士として活躍する。1987年の朴鍾哲(パクジョンチョル)君拷問殺害の捏造・隠蔽(いんぺい)糾弾集会を組織して逮捕されたソンウソク弁護士の初公判。釜山の弁護士の8割、99人が弁護団に加わって裁判闘争を開始する場面がエンディングだ。87年労働者大闘争から現在のパククネ打倒のゼネストへ、闘いの未来が指し示されている。
(合同・一般労働組合全国協議会事務局長 小泉義秀)

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