大学での軍事研究許すな 学問を戦争の道具にさせない 京大先頭に全国で反戦ストへ 全学連委員長 斎藤郁真

週刊『前進』04頁(2813号03面01)(2017/01/23)


大学での軍事研究許すな
 学問を戦争の道具にさせない
 京大先頭に全国で反戦ストへ
 全学連委員長 斎藤郁真

(写真 解雇撤回を闘う韓国・民主労総の東洋セメント支部の争議現場を訪問し、檄布を渡す斎藤委員長【写真右】【昨年11月14日 ソウル】)

 韓国で民主労総を先頭に巨万の民衆が立ち上がり、アメリカではトランプ打倒の大デモが激しく闘われています。日米韓政府は、この世界革命のうねりを戦争で圧殺しようと狙い、朝鮮戦争への衝動を強めています。安倍政権はその一環として、巨額の軍事予算を投じて大学での軍事研究を推し進めています。これを粉砕する全国学生の決起が、今こそ求められています。

軍事研究か貧困かを強制

 第2次世界大戦での日本敗戦から70年余り。大学での軍事研究が再び公然と始まっています。
 4年を超える第2次安倍政権のもとで、軍事予算は毎年過去最大額を更新。今年度はついに、5兆1251億円となりました。その中で急拡大しているのが、軍事研究費用です。安倍政権の2014年7月1日の「集団的自衛権行使容認」閣議決定と一体で、15年6月、防衛省が「安全保障技術研究推進制度」を創設しました。〝1件につき3千万円の研究費を出すから大学・研究機関は軍事研究を行え〟というもので、予算は15年度に3億円、16年度に6億円、17年度はなんと110億円にまではね上がりました。17年度からは、1件あたり5年で数億〜数十億円もの大規模プロジェクトも新設されます。米軍と大学・研究機関の共同研究も増加しています。
 背景には大学への経済的圧迫があります。04年4月の国立大学法人化以降、国立大学財政の基盤となる「運営費交付金」は毎年1%ずつ削減され、この12年間で1445億円減額しています(17年度額は1兆970億円)。04年時点で国立大学は全99校あり、再編・統合で現在は86校まで減少しているので、毎年ひとつの大学が消える規模で大学予算は削り落とされてきています。
 同時に、「選択と集中」のための競争的資金が導入されることによって、直接の成果に結びつきづらいとされる基礎研究は危機的状況となり、研究室には矛盾が集中しています。
 国立大学への競争原理導入は、私立大学間競争も激化させます。米軍の資金提供で研究を行うある教授は、新聞のインタビューに答えて「今はどんな助成チャンスでもすがりたい」(10年9月8日付朝日新聞)と語りましたが、この言葉が現状を端的に示しています。これは、東北大学をはじめ全国で問題となっている人員削減や非正規教職員の増加と表裏一体です。「軍事研究か貧困か」の二者択一が大学に強制されています。
 これが国策として意識的に進められています。13年12月に閣議決定された「国家安全保障戦略」には「産官学の力を結集させて、安全保障分野においても有効に活用するよう努めていく」と明記され、14年4月には武器輸出三原則の防衛装備移転三原則への変更により武器輸出が解禁されました。「戦争国家=日本」が急速につくられています。大学での軍事研究解禁は、崖っぷちにある日本の資本家階級の凶暴な延命策の柱です。

大学の商業化と国家統制

 軍学連携の核心は統治体制の転換です。新自由主義のイデオロギー攻勢と、そのもとでの大学の商業化・民営化=「教育の私物化」が本質です。大学のあり方が問われています。
 安全保障技術研究推進制度創設と同じ15年6月、文科省は「人文社会科学系と教員養成系学部の廃止・転換を求める通知」を発表しました。これについては、「『運営費交付金を握る文科省には逆らえない』と、事実上の命令だと受け止めた大学は多い」(15年8月24日付読売新聞)と言われます。特に文系学部の国家統制が狙われています。日本大学が昨年4月に警察官僚を教授とする「危機管理学部」を新設したように、戦時中の法政大学に存在した「大陸学部」(=植民地経営の人材育成のため)のような学部の復活がもくろまれています。
 「文系は金もうけにならない。存続したければ国家体制に協力しろ」ということです。上記通知と同じ6月、文科省が「入学式・卒業式での国旗掲揚と国歌斉唱」を国立大に「要請」し、16年から新たに15大学が「国旗・国歌」を実施するようになりました。

団結と共同性取り戻そう

 軍学連携が成り立つ根拠は、労働者・学生の団結破壊―共同性崩壊にあります。政府・防衛省は大学での軍事研究を「デュアル・ユース」(軍民両用)と称し、多くの大学・研究者がこの論理に屈服しています。
 千葉工業大学は「兵器・軍事技術研究を行わない」という大学声明を維持するとしながらも、前記の安全保障技術研究推進制度の適用を受け、「災害対応技術だから問題ない」としています。北海道大学では「船の摩擦抵抗を減らす仕組み」、豊橋科学技術大学では「有毒ガスを吸着・無害化するフィルター」が軍事研究の中身です。
 あらゆる戦争は「防衛」の名で行われますが、帝国主義戦争の本質は資源・市場・勢力圏の争奪戦であり、支配階級の利益のためのものです。階級的視点のない「個別技術の評価」では、軍学連携を止めることはできません。
 大学が資本の論理に制圧され、戦争のために教育・学問が動員されていることが問題の本質です。
 この攻撃に立ち向かい、再び学問が戦争の道具とならないために、必要なのは大学での共同性の復権です。「国家のため、生きていくために殺し合いも仕方ない」という現実に立ち向かう力が、大学の中に必要です。学生・研究者個々人の倫理だけで立ち向かえる問題ではありません。「戦争か貧困か」——資本主義のふざけた現実! 原発問題でも基地問題でも繰り返し問われてきた課題がここにあります。
 自らの労働・学習・研究結果と責任に向き合う具体的行動から展望は生まれます。一昨年秋の京都大学反戦ストライキは、その精神の体現でした。全学連は京大ストを歴史の一エピソードにとどめるのではなく、「先駆者」として歴史に刻む挑戦をします。
 京大第2波スト―全国大学反戦ゼネストへ、すべての学生はともに進もう!
 全学連は10年を超える法大闘争を、公安警察の弾圧と「左派」「リベラル」の裏切り・屈服に挟まれながら闘い抜いてきました。「大学の商業化」が進められ、学生の団結が破壊され、政治的行動が禁圧される中、現実から逃げなかった私たちこそが歴史の挑戦権を持っています。「私たちだけが残った」ことで、すべての課題に取り組むことが全学連に求められています。
 「戦争か革命か」の選択は、私たちの決断にかかっています。韓国労働者民衆の闘いをたたきつぶそうとする朝鮮戦争を絶対に許さず、軍産学連携に反撃する学生運動の爆発をかちとろう!
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