国鉄分割・民営化の破産示すJR北海道 ローカル線全面廃止への攻撃に動労総連合建設で立ち向かおう

週刊『前進』04頁(2825号02面04)(2017/03/06)


国鉄分割・民営化の破産示すJR北海道
 ローカル線全面廃止への攻撃に動労総連合建設で立ち向かおう

(写真 国鉄分割・民営化前の1986年5月、自民党が商業新聞各紙に出した広告。「民営分割 ご安心ください」「会社間をまたがっても乗りかえもなく、不便になりません。運賃も高くなりません」「長距離列車もなくなりません」「ローカル線もなくなりません」と書かれているが、全部うそだった)


 国鉄分割・民営化から30年。1987年は国鉄分割・民営化の始まりの年であったと同時に、日本における新自由主義攻撃の始まりの年でもあった。だが、執拗(しつよう)な労組解体攻撃にもかかわらず、ついに国鉄労働運動を根絶できなかった。そればかりか、今や分割・民営化とJR体制全体が破産に直面している。その最も鋭い表れがJR北海道問題だ。分割・民営化の手先となったJR総連カクマルを打倒し、北海道に動労総連合を建設する決戦の時が来た。

経営破綻の危機におびえ動揺を深める安倍政権

 1986年の自民党の意見広告(左下)が笑いものとなり、怒りの対象にもなっている。北海道新聞の論調は今や「分割・民営化は失敗した」だ。そして、「JR北海道の再生」が北海道庁をはじめとした大方の声になっている。
 こうした認識が一般化する中で、安倍政権は揺らいでいる。2月8日の衆院予算委員会で、麻生太郎副総理兼財務相は、JR北海道の経営危機は分割・民営化が招いたと口走った。2月17日には、麻生発言を打ち消すために安倍首相が「(国鉄分割・民営化は)所期の目的を果たしつつある」「(JR北海道などの経営危機は)人口の減少が原因だ」と答弁した。北海道の人口減は都道府県の中で最大だ。だがそれは、国鉄分割・民営化の過程の数年間で北海道の鉄道の3分の1が切られたからだ。これでは人口が減って当然だ。
 支配階級は国鉄分割・民営化の破産を認めることは絶対にできない。国策の失敗を認めることになるし、自治体をはじめとして今後拡大しようとしている民営化・外注化・非正規職化・労組解体の攻撃に重大な影響があるからだ。韓国・民主労総のゼネストがつくり出したような「民営化は悪だ」という世論の波及も恐怖の的だ。
 JR北海道は昨年11月18日、JR北海道の単独の力では「維持困難」とする10路線13区間を示した。このままでは2020年度中に経営破綻するから鉄路の半分を切り捨てようというのだ。しかも、廃止すれば経営が成り立つという展望が示されているわけではない。さらなる人口減とローカル線切り捨ての悪循環は不可避だ。
 JRの発表に対し、北海道庁は今年2月7日、「鉄道ネットワークワーキングチーム(WT)」の報告書を出した。同報告書は「維持困難」10路線13区間は「線区ごとに公共交通網の中で果たす役割が異なる」として、存続に優先順序を付けた。宗谷・石北に根室を加えた3線以外の廃止に同意したに等しい。
 JRはこれに勢いを得て沿線自治体との協議を加速させようとしている。JR北海道は3・4ダイヤ改定で、札幌―稚内間の特急3往復のうち2往復を、札幌―網走間の特急4往復のうち2往復を旭川乗り換えにする。また、利用の少ない10駅を廃止する。

民営化に屈した労組では地方の破壊と闘えない

 JR北海道の安全崩壊は、経営陣を一新しても解決していない。北海道新聞に報道されただけでも、今年1月は1日に1件の割合で車両・設備のトラブルやミスが発生した。昨年12月は19件、今年2月も14件(26日まで、JR貨物を除く)だ。報道されないものも相当数ある。
 国鉄分割・民営化は鉄道の安全とインフラとしての社会的使命を破壊して強行された。その目的は労働運動の解体にあった。安全や利便性の確保にこだわって分割・民営化に反対した多くの労働者が追放された。JR体制の枠内では、安全の回復は絶対にありえない。
 しかし、このことを主張する労働組合がJR北海道には一つもない。JR総連もJR連合も国労も、分割・民営化が失敗したとは絶対に言わない。その枠組みの維持のために国は金を出せと言うだけだ。国鉄分割・民営化反対の旗を降ろした労働組合はJR資本と闘うことができないのだ。
 特に、国鉄分割・民営化に率先協力したカクマルは、中央派もJR総連派もJR北海道のローカル線切り捨て問題にまったく言及できない。JR総連は2月3日の第39回定期中央委員会で、「JR北海道など国鉄改革のスキームが崩壊する事態」に対し「国鉄改革の原点である改革のスキームを守らせる」として、分割・民営化の枠組みにあくまでしがみついている。
 12月14日、JR総連とJR北海道労組は石井啓一国交相への要請を行ったが、その中身は「崩れた国鉄改革のスキームは、スキーム策定の経緯から、国の責任で是正することを求める」ということだけだった。鉄道網の維持ではなく、JR資本とカクマルの結託体制の維持を求めたのだ。
 歴史的に見ても、88年に強行された松前線の廃止に対して82~87年にかけて展開された廃止反対運動を、当時の旧動労が内部から裏切って以来、JR北海道労組はローカル線の切り捨てに反対したことがない。
 沿線住民の切り捨てに反対しない労働組合が、鉄道で働く労働者の切り捨てに反対できるはずもない。JR総連カクマルを打倒して動労総連合を建設することに、沿線住民の権利と鉄道で働く労働者の権利を守る道がある。国鉄1047名解雇撤回闘争が輝く時だ。北海道で動労総連合をつくることが絶対に必要だ。
 国鉄分割・民営化は国鉄労働運動を解体するために強行された。だが、動労千葉は15年6月の採用差別事件最高裁判決で、分割・民営化による解雇を国家的不当労働行為と確定させた。国鉄分割・民営化に決着をつける時が来ているのだ。

生きるためには社会の根底からの変革が必要だ

 北海道庁の「WT報告書」は、JR北海道が「維持困難」な10路線に宗谷線・石北線を含めたことについて、昨年12月の安倍・プーチン首脳会談で合意された「『北方4島』での共同経済活動」の進展に水を差すと述べている。きわめて現実性の低い日ロ共同経済活動を持ち出すことで、国策として鉄道を維持せよと政府に求めたのだ。
 WT報告は、「株式会社ではあるが、特殊法人であるJR北海道の経営は、国の強い関与のもとに行われており、国はこうした位置づけを踏まえた中心的な役割を担うことが求められる」「線区の見直しや地域の協力・支援だけでは経営再生の実現は難しく国による抜本的な支援が不可欠である」と、分割・民営化の枠組みにも言及した。
 さらに、JR貨物の線路使用料の見直し、青函トンネルの使用料(年間2~3億円)の軽減や改修費用(同5~7億円)への支援、老朽化した施設や車両の改修・更新(今後20年間で435億円)への政策的対応、輸送力の強化や駅舎のバリアフリー化などの増収策への支援、19年度以降の資金繰りへの配慮などを政府に求めている。
 公共交通機関は黒字経営にはならないというのが世界の常識だ。また、公共交通機関は営利の対象ではなく、水道や電気・ガスのようなインフラであり、住民の生存権を保障するものである。北海道の鉄道を半分以下にしたら、地域経済も住民の生活も崩壊する。
 それは、住民が生きていていくためには社会のあり方を根本的に変えなければならないという自覚を大量に生み出す。今こそ国鉄分割・民営化絶対反対、1047名解雇撤回の旗を高く掲げて立ち上がる時だ。
(前島信夫)

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