姫路認定こども園事件 幼児のおかずはスプーン1杯 労働者にはただ働きを強いる 保育園の民営化が行きついた姿

週刊『前進』02頁(2834号02面03)(2017/04/06)


姫路認定こども園事件
 幼児のおかずはスプーン1杯
 労働者にはただ働きを強いる
 保育園の民営化が行きついた姿


 兵庫県姫路市の認定こども園「わんずまざー保育園」の実態が暴かれ、子ども・子育て支援新制度初の認定取り消しとなった。
 定員の2倍近くの子どもを預かり(定員46人+私的契約児22人+一時保育)、最大で80人の子どもに外注化した給食三十数人分を分けて与え、幼児のおかずがスプーン1杯しかなかったという。0歳児にはテーブルもなく床に食器を置いて、「猫まんま」状態で食べさせていたなど衝撃的で本当に許せない。「一時保育」の名で毎日預かりをし、「0歳児だけで10人を1人の保育士でみることが日常的にあった」という。
 何より許せないのは、保育士に対して、裏の雇用契約書が存在し、月給制なのに祝日分減額、欠勤や遅刻・早退で1万円給与減額、無断欠勤すれば7日間、30分以上の遅刻は2日間のただ働き。保護者を待たせたら10日間のただ働きと「お客様宅にて謝罪」などの奴隷労働を強制していたことだ。夜はベビーシッターをやらされ、保育士は「園長には何を言っても却下され」「過酷な勤務で心身はボロボロ」となり、辞めることさえ許されなかった。
 こんな状態は10年前からあり、現場から何度も告発・相談があったのに姫路市は無視していた。「うちも似ています。賃金減額、補助金横領当たり前」というように、夢工房や高等森友学園保育園など、ブラックな保育施設は全国にいっぱいある。まさに、子ども・子育て新制度=民営化がもたらした結果だ。
 わんずまざー保育園は、個人経営で無認可施設としての「適合」証明さえなかったのに、なぜ「認定こども園」になれたのか。問題の主犯は新制度を強行した国と、それを率先して推進した兵庫県と姫路市だ。
 兵庫県は認定こども園数が約400カ所で全国第2位、約1割を占める。子ども・子育て新制度の中に「地方裁量型こども園」ができると、兵庫県は独自に赤ちゃんの離乳食まで「外部搬入OK」とするなど、とんでもない規制緩和をした。姫路市はこれに「積極的に着目して」(市当局)、「待機児解消の受け皿」と称して促進してきたのだ。
 地方裁量型こども園が姫路市に集中(県内7園中6園)しているのは、市側から地方裁量型を目指すよう誘導しているからだ。有識者会議では「認可外をこども園にするのは問題」という危惧(きぐ)の声があったそうだが、行政主導で押し切ったのは、森友学園での大阪府私学課と同じだ。安倍政権の「緊急保育対策」や小池都知事による「保育定員7万人増」の狙いは、全国・全都に無数のわんずまざー保育園をつくろうということだ。
 これに対し、日本共産党は「認可・監査を厳しくしろ」と言うのみで、新制度=民営化そのものを問題にもしない。
 今後、園児や保育労働者はどうなるのか? 市は定員枠の子どもたちは行く先を確保したというが、ただでさえ満杯の他園に空きがあるわけはない。私的契約児は切り捨てられる。直接契約制度が何をもたらすのか、本性むき出しだ。保育労働者は労基法違反の犠牲者だ。
 ここに闘う労働組合があれば、こんな保育や労働環境を許さないだろう。
 自治労本部は、「幼保一体化」などと新制度を推進してきた。自治労連も法律で決まったら「よりよい制度を」などとありえないスローガンにすり替えた。人員を雇わず、定員以上の子どもを「お母さんが困っているから」とどんどん入所させ、子どもたちの安全も保育労働者の権利も脅かしているのは公立でも民間でも同じだ。
 しかし、絶対反対で闘う労働組合があれば変えることができる。
 命より金もうけの新自由主義医療に対して「本来の医療を取り戻そう」と自主運営で闘っている八尾北医療センター労働組合のように、「生きるために本来の保育を取り戻そう」と、保育労働者・保護者たちがともに団結し、労働組合の自主運営で闘えばいいのだ。民営化=自治労つぶしと真っ向から闘い、民間労働者も職場に闘う労働組合をつくって団結しよう。
(川田結菜)

このエントリーをはてなブックマークに追加