焦点 統幕長・河野が改憲賛成の暴言 朝鮮戦争・9条破壊狙う安倍

週刊『前進』02頁(2850号02面05)(2017/06/09)


焦点
 統幕長・河野が改憲賛成の暴言
 朝鮮戦争・9条破壊狙う安倍


 防衛省制服組のトップにあたる統合幕僚長・河野克俊は5月23日、外国特派員協会で行われた記者会見の場で、安倍が憲法9条に自衛隊を明記する改憲案を新たに提起したことについて、「憲法は非常に高度な政治問題なので統幕長の立場で申し上げるのは適当ではないが、一自衛官としては自衛隊の根拠規定が憲法に明記されれば非常にありがたい」と発言した。
 直後の記者会見でこの件を問われた官房長官・菅義偉は、「(河野統幕長の発言は)あくまでも個人の見解」などと弁解し、自衛隊員の政治的行為を制限した法令には違反しないと主張した。過去には、自衛隊員が憲法9条を擁護する立場から反戦を訴えただけで懲戒処分を受けた例が多々あるにもかかわらず、公然と改憲をあおった河野は何の責任も問われないというのだ。しかも河野は単なる個人でも「一自衛官」でもなく、陸海空の自衛隊を統括する現職の統幕長である。その河野が「憲法は高度な政治問題」であると百も承知していながら、安倍改憲案への賛意・謝意をあえて表明したのである。
 この河野に対し、防衛省は28日、任期の再延長という異例の措置(統幕長の任期が二度延長されるのは初めて)を発令した。一連の動きは安倍・官邸と自衛隊中枢が一体となったクーデター的暴挙であり、断じて許すことはできない。
●安倍改憲案の正体
 こうした動きが出てくる背景には、今や米帝トランプ政権が朝鮮侵略戦争に向かって一気に前のめりになっているにもかかわらず、安倍や自衛隊幹部らが狙う9条改憲が思うように進まないことへの激しい焦りといら立ちがある。とりわけ「国鉄分割・民営化で労働運動をつぶして改憲をやる」と主張した1980年代の中曽根政権から30年もの攻防を経て、なおも国鉄闘争と階級的労働運動が安倍の前に立ちはだかり、戦争・改憲への道を断固として阻んでいる。9条を含む現行憲法が施行70年を経て一言一句たりとも手をつけられていないのは、この階級的力関係の反映である。
 だからこそ安倍は「9条1項、2項を残して自衛隊を書き込む」という極めてペテン的なやり方に出たのだ。これを一部のメディアなどは、自民党改憲草案からの後退であるかのように報じているが、そうではない。
 1項、2項を残した上で自衛隊を明記するということは、「陸海空軍その他の戦力は保持しない」「国の交戦権は認めない」とした9条2項を完全に空文化することを意味する。すでに世界有数の軍事力を持ち、米軍と一体化して日常的に共同訓練を行い、独自の敵基地攻撃能力の保有まで検討されている自衛隊が、9条2項で言う「陸海空の戦力」に相当しないということになるからだ。そればかりか、このような自衛隊の保持が憲法上の義務となり、従来の「GDP(国内総生産)1%以内」などの枠に縛られない巨額の軍事予算を投入することも憲法上の要請になる。逆に自衛隊の軍備や任務拡大に反対することが「憲法違反」になるのだ。
 そして自衛隊が9条2項の言う「戦力」でない以上、実際に戦争行為を行ったとしても、それは1項が禁じる「国権の発動たる戦争」でも「武力による威嚇または武力の行使」でもないことになる。まさに憲法9条が「戦争放棄」の条項から、戦争発動の条項へと180度その性格を変えることになるのだ。
 河野の発言は、こうした安倍改憲案の悪らつな正体を熟知した上で、朝鮮侵略戦争への参戦を狙う安倍と完全に一体化して出されたものだ。労働組合を先頭に朝鮮戦争絶対阻止の階級的大反撃をたたきつけ、改憲を狙う安倍を打倒しよう。

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