職場の葛藤は組合の課題 同僚はともに現状を変える仲間 動労福島/郡山駅キオスク 倉岡雅美

週刊『前進』04頁(2859号04面02)(2017/07/10)


職場の葛藤は組合の課題
 同僚はともに現状を変える仲間
 動労福島/郡山駅キオスク 倉岡雅美

ホームに駅員が不在、売店が対応

 学生の頃、車椅子の小学生とつきあっていました。彼女は両親の自家用車以外の乗り物に乗ったことがないと言います。私は怖がる彼女を説得して、地下鉄に乗って買い物に行こうと提案しました。家族以外の手助けで電車にも乗れると実感してほしかったのです。緊張と不安の中、駅に到着し、改札に行くと窓口には誰もいません。やっとつながったインターホンで言われた言葉は「段差が小さいから渡し板は必要ない」でした。さらなる不安の中、乗車。すると、車椅子の前輪がホームと車両の間にはさまってしまい、彼女は前かがみになってしまいました。初乗車は恐怖体験になってしまったのです。
 あれから10年。私は民営化と闘う労働組合に所属しています。
 ホームと改札の無人化にともなう事故はあとを絶ちません。「駅員さんはどこにいますか?」——私が働くキオスクでもお客さんによく聞かれます。昨年のゴールデンウィークに新幹線44駅で電光掲示板が表示されないトラブルが発生し、終電までホームに駅員が並んで対応していました。同僚から出た言葉は「これで安心して仕事ができるね」でした。駅員も乗客もいない夜のホームでからまれたり、痴漢にあったり怖い目にあうこともあるからです。私は身を守るために、愛想や笑顔を封印して接客することもあります。
 ホームにある売店なので、駅員の削減や合理化と無縁ではありません。乗り換えや時刻案内は業務外の仕事です。しかし高額の切符を買って、迷っている乗客を無視はできません。一方で乗り換え案内などまで責任を負えないとも思います。こういう葛藤がモヤモヤの中で終わるのではなく、組合に属していることでみんなの課題に変わります。会社は都合がいいときだけ「JRグループの一員として」と言います。時給730円―待遇や条件はJRとは雲泥の差です。ふざけるなと言いたい。

接客態度を抜き打ち評価される

 6〜7月は店舗診断の時期です。外部に委託した会社が客を装い、抜き打ちで接客態度を評価します。私は「無表情、片手でレシートを渡した」と評されたことがあります。店舗として点数が出されるので、自分が低い点数を出せば申し訳ない気持ちになるし、対象から外れればホッとした気持ちにもなります。
 今月から毎月、「笑顔作り動画」を見ることも始まりました。これに対し、「賃金が上がれば自然と口角も上がるよ」「この時給でデパート並みの接客を要求するのかよ」と同僚と話しました。東日本の全店舗で実施しているのでその予算は莫大(ばくだい)です。1月に初めて団体交渉を行い、「経営状況を鑑みて時給を設定している」と言う会社に、「外部に委託する予算はあるのか!?」とたたきつけました。
 「計画比を達成していない」「売り上げが低い」――会社から頻繁に言われるこの言葉は「時給が安くてもしょうがない」「閉店になってもしょうがない」という意識を労働者にうえつけます。そもそも駅の売店は鉄道員が労災事故で死亡、障害者になった場合にその当該と家族を正規雇用する事業として始まっています。運営は鉄道弘済会が行い、国鉄分割・民営化とともに会社化しました。

労働時間の短縮は賃金カットだ

 第2の分割・民営化、「選択と集中」はキオスクでも始まっています。3月には仙台支店管内の4店舗が閉店になりました。まわりにお店がなく、憩いの場所だったお店です。一方で、「売り上げ」が見込める店には新装オープンも進んでいます。それは合理化と一体です。自動釣り銭機の導入により、労働時間短縮が強行されています。短縮は時給制の労働者には賃金カットです。労働時間を短縮するか、休憩時間を短縮するかという選択肢を提案された店もあります。どちらの選択になっても会社は損をしません。私たちにはこの二つの選択肢しかないのでしょうか!? 労働者がしょうがないと従っている限りにおいて成り立つ、こんな会社のやり方をぶち破るときがきています。
 月160時間超働いても手取り10万円台。それでもやり続けられるのは喜怒哀楽をともにする同僚がいるからです。と同時に、ともにこの現状を変えていかなければなりません。
 「長く苦楽をともにする同僚との絆を強めたい」——郡山工場の新入社員の言葉だそうです。動労福島を立ち上げたのは、こういう青年の思いと結びつくためです。動労総連合は清掃も売店の店員も鉄道の安全輸送を担う同じ労働者としてともに闘う労働組合です。青年が先頭に立ってJRの外注化、分社化、非正規職化に対して、動労総連合の力を発揮し闘っていきたいと思います。
このエントリーをはてなブックマークに追加