神鋼、日産、スバルの不正 人員削減と非正規職化が根本に 衰退深める日本製造業

週刊『前進』02頁(2890号02面04)(2017/11/02)


神鋼、日産、スバルの不正
 人員削減と非正規職化が根本に
 衰退深める日本製造業


 日本の製造業が根幹から崩れている。神戸製鋼所、日産自動車で次々と長年にわたる組織的な不正が明るみに出た。人員削減や非正規職化、労働強化、むき出しの利益追求の帰結だ。これこそ国際争闘戦で敗勢に陥り衰退を深める日帝製造業・資本の普遍的現実だ。

会社ぐるみで品質検査データ改ざん

 神戸製鋼所は品質検査に関する証明書のデータを改ざんし、取引先と契約した品質基準を満たさない部品を出荷していた。不正はアルミ・銅製部材で発覚し、本丸の鉄鋼事業でも明らかになった。会社丸ごとの不正が常態化していたのだ。
 神鋼が成長分野と位置付けているアルミ事業は国内2位でシェアは20%近くある。鉄鋼も含めて供給先は約500社に及び、自動車やJR(新幹線)、航空など安全に直結する分野で大量に使われ、東京電力福島第二原発にも設備用の配管として納入されていた。
 神鋼は当初、社内基準は工業標準化法に基づく日本工業規格(JIS)より厳しく「法令違反はない」と説明していたが、JISを満たさない製品がある疑いも濃厚になっており、すでに銅管の一部ではJIS認証が取り消された。
 昨年6月、神鋼のグループ会社がばね用ステンレス鋼線の強度を偽装して出荷していたことが発覚した。再出発を図ったが、その時から把握していた不正を公表せずに隠蔽(いんぺい)していたことも明らかになった。改ざん・隠蔽・責任逃れが体質化している。
 神鋼は独占が進む国内市場で粗鋼生産量3位だが、新日鉄住金とJFEに水をあけられ、世界的には10位以内にも入っていない。過剰生産が進み、大再編による規模の巨大化と世界シェア争いが進行している。その中で経営者が大増産の号令をかけ、矛盾はすべて現場に押し付けられた。そのもとで品質と安全より納期と利益を優先させ、不正が広がっていった。

非正規職を資格も取らせず使い回し

 日産自動車では、出荷前の完成検査を無資格の「補助検査員」が行っていた。ほぼすべての工場で書類の偽装用に有資格者の印鑑を複数用意し、帳簿で管理して貸し出していた。まさに組織ぐるみの不正だ。
 完成検査は出荷前の最終確認をメーカーが国に代わって行う制度で、日産では検査員の資格取得に最低3カ月かかる。ここに3カ月〜半年期限の期間従業員を雇い入れ、資格を取得する間もなく検査にあたらせていた。生産現場は徹底的に人員を削減し非正規職化されてきたが、安全の根幹にかかわる部門まで非正規職化して都合よく使っていたのだ。西川社長が「現場の不手際」などと責任を押し付けて開き直っているのは絶対に許せない。この問題で日産車のリコール(回収・無償修理)対象は120万台に上り、さらに国内6工場すべてで新車の出荷停止という事態になった。
 自動車業界は世界的に激しい競争が進んでいる。特に電気自動車(EV)や自動運転の開発で大転換期に入り、他業種も巻き込んだ大再編過程に入っている。こうした中で日産・ルノー連合は今年上半期の世界販売台数でトヨタや独フォルクスワーゲンを抜き、初めて首位になった。国内ではEV開発で先行し、9月には新型を発売していた。このトップ企業の不正は、日本の自動車産業を崩壊的危機にたたき込んでいく。
 そして日産だけでなく、スバルでも同じように無資格者による完成検査を30年以上続けてきたことが明らかになっている。昨年は、三菱自動車が燃費データを改ざんしていた問題も発覚した。その三菱自動車を買収したのが日産だ。自動車資本全体が不正にまみれ、腐敗しきっているのだ。

偽装と粉飾で延命する末期資本主義

 15年には東芝の不正会計・粉飾決算が発覚し、長年にわたる利益の水増しが明らかになった。その後、家電事業や医療機器部門を売却した上に、海外原発事業での巨額損失を受けて、支柱の半導体メモリー事業も売り飛ばして解体的危機に陥っている。
 電機、自動車、鉄鋼と日本の製造業を支える大企業で不正がはびこっている。大恐慌と激化する争闘戦で敗勢的危機に陥り、こういう形でしか利益の確保と延命ができなくなってしまったのだ。
 まさにこれが労働者を非正規職化してこき使い、安全を投げ捨て目先の利益に走る新自由主義の典型であり、崩れゆく資本主義の腐りきった姿である。国家を代表する大資本で噴出する不正と衰退的現実は日本経済の行き詰まりの深刻さを示し、安倍政権と資本家階級を絶望的・破滅的な戦争・改憲に駆り立てている。
 こんな体制は打倒しよう。「この国に革命を」――これこそ労働者の進むべき道だ。労働者が自らの力を取り戻し、闘う労働組合をよみがえらせ、労働現場から社会を変革するために11・5集会へ集まろう!
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