JR外注化容認の10・10判決 働き方改革と18年大量解雇の最悪の手先になった東京地裁

週刊『前進』04頁(2895号02面02)(2017/11/20)


JR外注化容認の10・10判決
 働き方改革と18年大量解雇の最悪の手先になった東京地裁


 動労総連合強制出向無効確認訴訟で東京地裁民事第11部(佐々木宗啓裁判長)は10月10日、JRの外注化も、動労総連合組合員に対する外注先への強制出向もすべて容認する超反動判決を出した。裁判所は、安倍が進める「働き方改革」の最悪の手先になったのだ。
 JRの外注化は、労働者の総非正規職化に向けて全資本が行っている攻撃のモデルケースになっている。JRの外注化が違法・無効とされれば、資本主義の根幹が揺らぐ。だから東京地裁は、どんなにでたらめでも、JR東日本の言い分を丸写しにした反動判決を出すほかになかったのだ。
 JRはこの判決をてこに、第3の分割・民営化攻撃に本格的に踏み出そうとしている。だが、動労総連合は11・5労働者集会を先頭で担い、これと対決する闘いの配置についた。国鉄分割・民営化以来の全攻撃を覆す決戦は始まった。

「出向に個別の同意は必要ない」と強弁

 出向とは、本体企業に籍だけは残して、他企業の指揮命令下で労働するということだ。これは、本来は労働者の合意がなければ行えない。民法でさえ「使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲り渡すことはできない」と定めている。しかも動労総連合は、JR総連・東労組や国労と異なり、JRと出向協定を結んでいない。
 しかし東京地裁判決は、出向には労働者の個別の同意は必要ないとして、次のように言い放った。「被告(JR)の就業規則には、会社は、業務上の必要がある場合、社員に出向を命ずることができ、社員は、正当な理由がなければこれを拒むことができない旨の規定がある上、出向先での勤務条件に関しては、出向規程において……詳細に定められていることが認められ、被告は、原告らに対し、上記就業規則及び出向規程に基づき、出向を命ずることができる」
 就業規則に労働者は無条件で従えというのだ。マルクスは『資本論』で、「工場法典の中では資本は自分の労働者に対する自分の専制を……私的法律として自分勝手に定式化している」と喝破した。東京地裁は「資本の専制」を容認し、「工場法以前に戻せ」と叫ぶ経団連の最も悪質な手先として登場したのだ。
 車両の検査修繕業務の大半は外注化され、JRに残った業務はほとんどない。長年、検修職場で働いてきた労働者が、その仕事を続けるためには、出向し続けるほかにない。だからこの出向は、実質的な転籍だ。
 実際、出向期間は原則3年とされているのに、ほとんどの原告が出向の延長を命じられている。定年まで出向に出し続けることが、JRの初めからの計画だった。それは、この裁判の証人尋問で、JR東日本本社の幹部も認めたことだ。
 にもかかわらず判決は、それは「看過し難い不利益」ではなく「不利益の程度は通常の異動に伴い甘受すべき程度を超えない」と言う。最優先されるべきは資本の利益だというのだ。

偽装請負を奨励し安全破壊も居直る

 外注化は必ず偽装請負を伴う。原告は事実をつぶさに挙げて、それを立証した。しかし判決は、「出向命令に法令違反があることをもって直ちに権利濫用(らんよう)であるとの評価を成立させるものではない」と居直った。偽装請負という違法行為を、裁判所自身が奨励したのだ。ここに判決の破綻点がある。
 外注化は指揮命令系統の破壊と事故の多発をもたらした。だが判決は、労働者の命にかかわる重大問題を「(事故は)各作業従事者の個人的過誤によるもの」で「本件業務委託ないし本件出向命令と関係ない」の一言で済ませている。
 動労千葉がCTS(千葉鉄道サービス)でストライキを行った際、JRはその日の業務はCTSに発注せず、JR側で行うという形でスト破りをした。外注化の根本的な目的は労働組合つぶしにある。
 しかし判決は、「かかる行為が動労千葉の争議権を侵害するものであるか否かはともかく……請負人が受託業務を履行できない場合に、発注者において、自らあるいは他者に委託するなどして、自らの業務に支障がないように対応することが許されないわけではない」と言う。労働組合法さえ否定し、資本に「スト破りの権利」を与えたのだ。

第3の分割・民営化は必ず粉砕できる

 さらに判決は、出向を解除された原告や、提訴後に定年退職を迎えてエルダー社員になった原告については、原告適格さえ認めず訴えを却下した。出向を解除された労働者は、JRに戻っても仕事はなく、最大の不利益をこうむっているにもかかわらずだ。
 これは外注化が生み出した矛盾だ。その外注化について判決は、「グループ会社全体としての業務の適正配分の一環としてされたものと理解することができ、被告の経営者としての合理的な経営判断に基づくもの」と全面的に賛美した。
 これは、第3の分割・民営化攻撃に向けての反動的号令だ。だが、JRがたくらむ第3の分割・民営化攻撃が強行されたら、現場の業務は回らなくなる。労働者の我慢も限界を超える。10月ダイヤ改定に際しては、東労組の現場組合員からも怒りが噴出し、JRは予定していた合理化の提案もできなくなった。
 JR本体と外注先の労働者が団結して反撃すれば勝てる。資本が狙う18年3月大量雇い止めと、その攻撃の先端にあるJRの第3の分割・民営化攻撃を打ち砕く決戦に立とう。
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