経労委報告を斬る 「働き方改革」「生産性向上」で過労死を強制し総非正規職化

週刊『前進』04頁(2913号02面01)(2018/02/05)


経労委報告を斬る
 「働き方改革」「生産性向上」で過労死を強制し総非正規職化


 経団連は2018年版「経営労働政策特別委員会報告」を発表した。その基本は「働き方改革」で労働者を総非正規職化し、「生産性向上」を叫んで強搾取を貫くことにある。

賃上げの実感などどこにあるのか!

 経労委報告は副題に「働きがいと生産性向上、イノベーションを生み出す働き方改革」を掲げ、「働き方改革」が労働者にも恩恵をもたらすかのように唱えている。序文では、「多くの企業が複数年にわたってベースアップ実施に踏み切り、賞与・一時金においても高水準での支給を維持するなど、賃金引上げのモメンタムは4年間着実に続いている」と書いている。
 だが、この4年、賃金が上がり続けたと実感できる労働者がどこにいるのか。経労委報告は、17春闘での月例賃金引上げ率は大手企業で2・34%、中小企業で1・81%となり、14年以来、賃金は「大幅に底上げされてきた」と豪語する。だが、経団連が公表した統計でも、ベースアップ分はわずか0・32%で、あとは定期昇給分だ。定期昇給を実施しても、企業の懐はまったく痛まない。
 しかも、その対象になったのは、大企業に属する正社員だけだ。全労働者の37・7%を占め、2081万人に達した非正規労働者の存在は無視されている。経労委報告は、「企業の継続的な賃金引上げ努力の結果……パートタイム労働者の時給は着実に伸びている」と言うが、報告自身に掲載されたグラフでも、17年のパートの時給はたった1円上がっただけだ。
 経労委報告自身が認めているように、名目賃金から物価上昇分を差し引いた実質賃金は、12年以来、16年を除き毎年低下し、個人消費は停滞したままだ。ところが経労委報告は、その原因を社会保障費の増大に求め、社会保障制度の解体をあおっている。
 大資本の利潤は5年連続で過去最高を更新し、その利益は企業買収などのマネーゲームにつぎ込まれた。他方で労働者には非正規職化と低賃金が強いられた。この明白な事実を否定しごまかしていることが、今年の経労委報告の特徴だ。

「残業代ゼロ法」の早期成立叫びたて

 経労委報告は、「働き方改革関連一括法案」の「早期成立を強く求めたい」と叫んでいる。特に、残業代ゼロ制度の導入を強調し、「現行の労働基準法は……成果に応じて評価・処遇することがふさわしい働き方には適応しにくく、実態を踏まえた制度の整備が必要」と言う。「過労死・過労自殺ゼロを実現する」と言った直後に、過労死促進の労働基準法改悪をやれとまくし立てているのだ。
 さらに、「働き方改革」の目的は「生産性向上」にあると、異様なまでに押し出している。その「生産性向上」も、これまでのようなコスト削減にとどまらず「アウトプットの増大」つまり産出高の増加に結びつかなければならないと言う。今でも極限的な強労働にあえぐ労働者を、死ぬまで働かせるということだ。
 経労委報告は、「非正規労働者」「非正社員」という言葉は「極めてネガティブな印象を与え」「多様な働き方の拡大を妨げる」から、その「呼称の使用は避けるべきである」と言う。これは安倍の「非正規という言葉をなくす」という言い分と同じだ。正社員をなくし、労働者を総非正規職化して、これまでの賃金水準を一挙に破壊することが安倍や資本の狙いなのだ。
 にもかかわらず経労委報告は、非正規職の正社員への転換が進んでいるとうそぶく。そして、労働契約法の無期雇用転換の規定に対応し、6割の企業が無期転換の方針を示したという数字を挙げる。ならば残りの4割はどうなのか。法を無視して雇い止め解雇を強行するということではないか。有期雇用労働者の大量解雇阻止は、18春闘の重大なテーマだ。

連合の崩壊情勢が資本の危機に転化

 安倍は年頭、財界に3%の賃上げを求めた。経労委報告はこれを「象徴的な数字」「社会的な要請・期待感を代弁したもの」とした上で、「賃金は……適切な総額人件費管理の下、自社の支払い能力を踏まえ、労使間の徹底した議論を経て企業が決定する」とし、賃金の決定権は企業にあるとあらためて強調している。
 首相官邸が賃金を決める「官製春闘」は、連合のような御用労組も解体する労組絶滅攻撃だ。だが、そこには根本的な矛盾がある。
 今起きている連合の大分裂と崩壊は、労働運動の消滅ではなく、階級的労働運動の台頭を意味する。だから資本は、連合の崩壊に手をこまねいているわけにはいかないのだ。今年の経労委報告は、例年になく「労使間の徹底した論議」「労働組合との協議」という言葉を多用している。資本は自らが強行した新自由主義による社会の大崩壊におびえている。かつて経団連は「労使は社会の安定帯」と唱えたが、「安定帯」は崩れたのだ。これは国鉄闘争が切り開いた情勢だ。
 生きることのできる賃金をよこせ。大幅一律賃上げを実力でもぎり取る本来の春闘の復権へ。2・11国鉄集会に集まり、団結を固めて18春闘に立とう。
このエントリーをはてなブックマークに追加