中間貯蔵施設の稼働許すな 焼却・再利用で被曝が拡大

週刊『前進』04頁(2913号03面02)(2018/02/05)


中間貯蔵施設の稼働許すな
 焼却・再利用で被曝が拡大

(写真 飯舘村蕨平にある、稼働中の「仮設焼却・資材化施設」。放射性物質を大量に含んだ煙を吐き出し、大気と土地の汚染を一層深刻化させている【昨年9月】)


 福島県大熊町と双葉町にまたがって立地している中間貯蔵施設が、未完成にもかかわらず稼働を開始した。除染ゴミが大量に運び込まれ始めている。施設は除染ゴミの「焼却と再生利用」で労働者を被曝させ、放射能被害を全国に一層拡大するものだ。さらに、施設の近くを走っているJR常磐線の全線開通は労働者・乗客をより多く被曝させる。絶対に許せない。

除染ゴミが東京ドームの18倍分

 2011年の3・11福島第一原発事故により想像を絶する大量の放射能がばらまかれ、環境が広範囲に汚染された。これまでに福島県内での除染で出た放射能汚染ゴミ(土壌や草、枝葉など)は東京ドーム18倍分の2200万立方㍍にもなる。政府・環境省は、これを中間貯蔵施設に「集中貯蔵」するというのだ。建設が進む施設は、福島第一原発を取り囲む16平方㌔メートル、成田空港の約1・5倍の広大な敷地だ。持ち込まれる放射能汚染土壌の量は、東京の中野区全域に約1・4㍍の高さで敷き詰められるほどの膨大さだ。
 放射線防護の鉄則は放射線源からの避難である。だが国は、浜通りなど一部の高濃度汚染地帯を除き、住民を避難させなかった。
 それを合理化するために、住民や除染労働者に被曝を強制しながら放射能汚染物質を取り除くという除染方針をとった。その結果、文字通り管理のしようもないほどの山のような大量の除染土壌などが発生したのである。しかも、どれだけ除染しようが、風や雨で運ばれた放射性物質で再び放射線量が高くなってしまう。除染ゴミは今後、ますます増えていくのだ。

避難をさせないための「除染」だ

 この「除染」方針の全面破綻を乗り切ろうとの思惑で政府・環境省が始めたのが「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略」だ。ここでは「最終処分必要量を低減することが鍵」と称して、焼却などの減容(体積を減らす)技術の活用、濃度の低い土壌の公共事業への再生利用を打ち出している。だが、「焼却」「再生利用」とは、その工程にたずさわる労働者と住民を被曝させることだ。安倍政権は労働者民衆に一層の被曝を強いることで「除染」の破綻を突破しようと動き出している。到底許すことはできない。
 この放射能汚染ゴミの「減容・再生利用」技術開発を環境省は最重要視し、先行的に福島県内で実証試験を重ねている。飯舘村の蕨平(わらびだいら)にある仮設焼却・資材化施設では次のような試験を行っている。可燃性除染ゴミを燃やし体積を減らす―焼却灰と除去土壌を混ぜて加熱し、放射性セシウムを気化させ分離―セシウム濃度が低減された生成物を「再生利用する」というものだ。
 一方で環境省は、クリアランスレベル(放射性物質として扱う必要がないと判断するための基準)をこれまでの1㌔グラムあたり100ベクレルから、一挙に80倍の8千ベクレルに緩めた。これを「再生資材」の利用可能な放射能濃度基準にし、放射能に汚染された除染ゴミを道路や鉄道、防潮堤などの盛土に大々的に使うことを画策している。

福島の怒りと結び3・11に集まろう

 貯蔵施設の稼働も労働者住民を被曝させる。
 福島県内の市町村の仮置き場には、除染で出た放射能汚染された土や草・落ち葉・汚泥などを詰めた無数のフレコンバッグが置かれている。それらをトラックに載せ、中間貯蔵施設まで輸送する。労働者の除染・輸送労働が被曝労働となる。2200万立方㍍の放射能汚染物を10立方㍍積載のトラックで輸送の場合、220万台のトラックが必要となる計算だ。これまでまだ十数万立方㍍輸送されたにすぎないが、昨年8月には磐越自動車道の差塩(さいそ)パーキングエリアで停車したトラックの積載土嚢(どのう)袋から放射能を帯びた水が漏れているのが発見された。今後、輸送回数は急増していく。
 中間貯蔵施設に搬入されたフレコンバッグは、受け入れ・分別施設でトラックから荷下ろしし、袋を破って可燃・不燃の分別を行う。放射能の粉塵(ふんじん)が大量に舞うなかでのこの作業は、桁違いの内部被曝のリスクを伴う。しかし、環境省は、タイベック(密閉型全身化学防護服)の着用を認めていない。
 中間貯蔵施設には、可燃物を燃やす焼却施設2基の建設が予定されている。これが稼働すれば飯舘村の施設と同様に、放射性微粒子が排ガスと一体でバグフィルターをすり抜けて日常的に外部に放出され、周辺にまき散らされていく。そもそも、放射能汚染物質を燃やすことは放射線防護では厳禁とされているのだ。
 敷地内埋設作業や、放射能に汚染されたリサイクル資材の各種盛土など公共事業の利用作業でも労働者や住民が被曝させられる。「再生利用」を通して被曝が全国に拡大していくことになる。福島・全国を核のゴミ捨て場にするな! JR常磐線の全線開通を絶対に阻止しよう。
 中間貯蔵施設計画面積の約40%の地権者が未契約であり、「土地は売らない、貸さない」と闘っている。団結し闘おう。福島の怒りと一層強く結びつき、3・11反原発福島行動に全国から総力で結集しよう。
(河東耕二)

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